親がネット証券を使っていたことに気づいたのは、死後しばらく経ってから——そんな遺族は少なくありません。
店舗型の証券会社と違い、ネット証券の相続手続きは郵送やWEB受付で進めるケースが多く、手続き方法や必要書類は証券会社によって異なります。
また、公的書類の原本提出が必要か、コピーでよいか、提出書類が返却されるかも各社で扱いが違います。
相続税申告の期限(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内)に間に合わないリスクを避けるためにも、口座の確認から始めましょう。
この記事では、ネット証券の相続手続きを7ステップで解説します。
口座の調べ方から、株式の移管、NISA口座の扱いまで、遺族がつまずきやすいポイントを丁寧にまとめました。
亡き親のネット証券口座、まず存在を確認しよう

ネット証券では、口座情報がすべてオンライン上にあります。
通帳や証書のような「紙の痕跡」が残りにくいため、遺族が口座の存在に気づかないまま手続きが終わってしまうケースがあります。
通知メール・郵便物から探す
亡くなった方のメールボックスに、証券会社からのお知らせが届いていないか確認します。
「取引報告書送付のご案内」「配当金のお知らせ」「特定口座年間取引報告書」といったメールが手がかりになります。
紙の郵便物では、取引報告書・配当金支払通知書・特定口座年間取引報告書などが届いていた場合、証券口座が存在する証拠になります。
預貯金口座の照会制度も補助的に確認する
預貯金口座については、マイナンバーが付番された口座であれば、相続時に金融機関の窓口を通じて口座の所在を確認できる制度があります。
ただし、対象は主に預貯金口座であり、すべての証券口座や金融資産を一括で確認できるわけではありません。
ネット証券口座を探す場合は、メール・郵便物・取引報告書・スマホアプリ・パスワード管理情報などもあわせて確認しましょう。
相続人が誰になるか、まだ整理できていない方はこちらもご確認ください。
ネット証券の相続手続き 7ステップ

STEP1 証券会社に死亡を連絡する
まず、被相続人が口座を持っていた証券会社に連絡を入れます。
ネット証券の場合、電話・WEB受付・チャットなど、会社によって受け付け方法が異なります。
死亡を連絡すると、その時点で口座が凍結されます。
口座凍結後は、遺族であっても株の売買・出金はできなくなります。
凍結は手続きの終了まで続きますが、これは全相続人の権利を守るための措置です。
証券会社によっては、連絡後に「相続手続きのご案内一式」を郵送してもらえます。
STEP2 残高証明書を申請する(必要な場合)
相続税の申告が必要なケースでは、死亡日時点の残高証明書や、上場株式の評価に必要な株価資料を準備するのが一般的です。
上場株式の相続税評価額は、原則として課税時期(相続の場合は被相続人の死亡日)の最終価格を基準にします。
ただし、死亡月・前月・前々月の各月の終値平均額と比較し、最も低い価額を選べる場合があります。相続税申告では、残高証明書に加えて、株価資料や上場株式の評価明細書が必要になることがあります。詳しくは国税庁「上場株式の評価」でご確認ください。
相続税がかからないケース(基礎控除の範囲内)では、残高証明書の取得は必須ではありません。
STEP3 必要書類を揃える
一般的に必要な書類は以下のとおりです。
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書(有効期限は証券会社により異なり、3ヶ月以内または6ヶ月以内など)
- 遺産分割協議書(遺産分割をした場合)
- 遺言書(ある場合)
- 各証券会社所定の相続手続依頼書
遺産分割協議書の書き方が不安な方は、こちらを参考にしてください。
戸籍謄本は、被相続人の「出生から死亡まで」の連続したものが必要です。
複数の市区町村にまたがる場合、収集に時間がかかることがあります。早めに準備を始めましょう。
STEP4 書類を証券会社に送付する
ネット証券の相続手続きは、郵送での書類提出が必要になるケースが多く、証券会社によってはWEB受付や書類アップロードに対応している場合もあります。
書類を送付したら、証券会社が内容を確認します。
不備があった場合は差し戻しになるため、追加で1〜2週間かかることがあります。
公的書類は、証券会社によって「写しで可」「原本提出が必要」「原本を提出しても返却不可」など扱いが異なります。
複数の金融機関で手続きする場合は、必要通数を事前に確認し、法定相続情報一覧図の写しの利用も検討しましょう。
ネット銀行の相続手続きも並行して進める方は、こちらも合わせてご確認ください。
ネット銀行の相続手続きはどうする?家族が知っておくべき全知識とチェックリスト
STEP5 相続人が証券口座を開設する
株式・投資信託は、預金のようにすぐ現金で払い戻されるとは限らず、相続人名義の証券口座へ移管する手続きが必要になるケースが一般的です。
そのため、相続人がまだ証券口座を持っていない場合は、移管先として口座を開設します。
証券会社によっては、相続人も同じ証券会社で口座開設を求められるケースがあります。事前に移管先口座の条件を確認しましょう。
口座開設には数日〜2週間程度かかる場合があります。書類の準備と並行して進めるとスムーズです。
STEP6 株式・投資信託を相続人口座へ移管する
書類の審査が完了すると、被相続人の口座から相続人の口座へ株式が移管されます。
書類に不備がなければ、送付から約2〜3週間で移管が完了します。
移管された株式の取得価額は、原則として被相続人が取得したときの取得価額を引き継ぎます。
ただし、NISA口座で保有されていた株式・投資信託については、相続発生日の時価が相続人の取得価額となります。
STEP7 移管後に売却または保有を選択する
移管が完了したら、相続した株式を売却して現金化するか、そのまま保有するかを決めます。
相続税の申告期限(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内)までに資金が必要な場合は、早めに動くことが大切です。
相続手続きの期限が近い方は、こちらで期限の全体像を確認してください。
ネット証券の相続でよくある落とし穴

書類の扱いは証券会社で異なる
公的書類は、証券会社によって「写しで可」「原本提出が必要」「原本を提出しても返却不可」など扱いが異なります。
複数の金融機関で手続きをする場合は、必要通数を事前に確認し、法定相続情報一覧図の写しの利用も検討しましょう。
書類提出から審査まで時間がかかる
書類の確認・差し戻しがあると、往復で1〜2週間追加でかかります。
書類を揃えたら、内容をよく確認してから送付しましょう。
相続税申告の期限は10ヶ月
相続税の申告と納税は、原則として被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
通常は死亡日の翌日から10ヶ月以内と考えます。
証券口座の手続きが長引くと、申告に必要な評価額の確定も遅れます。
死亡後なるべく早めに動くことが、期限切れを防ぐ最善策です。
NISA口座の相続はどうなる?

新NISAが普及した今、「親のNISA口座はどうなるの?」と疑問に思う方も増えています。
非課税枠は相続人に引き継げない
NISA口座の「非課税」という扱いは、相続人には引き継がれません。
NISA口座内の株式や投資信託は、相続人のNISA口座へそのまま引き継ぐことはできません。
通常は特定口座または一般口座で受け入れることになります。
通常口座とNISA口座で取得価額の扱いが違う
通常の特定口座・一般口座で保有していた株式は、原則として被相続人の取得価額を引き継ぎます。
一方、NISA口座で保有していた株式・投資信託は、相続発生日の時価が取得価額になる点が大きな違いです。
亡くなった時点で含み益があっても、相続人が売却するまでは課税されません。
ただし、非課税の恩恵は受け継がれないため、売却した際の利益は通常の課税対象になります。
「非課税口座開設者死亡届出書」の提出が必要
NISA口座の名義人が亡くなった場合、相続人は死亡を知った日以後、遅滞なく「非課税口座開設者死亡届出書」を証券会社へ提出する必要があります。
主要ネット証券3社の相続手続き比較
| 証券会社 | 受付方法 | 主な流れ | 相続人口座 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| SBI証券 | 相続サポートデスクへ連絡・電話予約 | 書類請求→郵送→返送→手続き完了・被相続人口座の閉鎖 | 要確認 | 必要書類はケース別に異なる |
| 楽天証券 | 相続WEB受付あり | アップロードまたは郵送 | 要確認 | 提出書類は返却不可 |
| 松井証券 | 電話連絡 | 書類送付→返送→代表相続人の口座へ移管 | 松井証券口座が必要 | 代表相続人の総合口座へ移管 |
※各社の最新情報は公式サイトでご確認ください。手続きの詳細は変更になる場合があります。
実際の移管方法や必要書類は、相続人の人数・遺言書や遺産分割協議書の有無・保有商品の種類によって異なります。
よくある質問
亡くなった後、証券口座はいつ凍結されますか?
証券会社が死亡の事実を知った時点で凍結されます。
相続人から連絡を入れた場合はその時点で凍結。証券会社が独自に把握した場合も同様です。
凍結後は、株の売買・出金がいっさいできなくなります。
相続人が証券口座を持っていない場合はどうすればいいですか?
相続人名義の口座を新たに開設する必要があります。
口座開設には数日〜2週間程度かかることがあるため、早めに手続きを始めてください。
複数のネット証券で口座があった場合は、それぞれに手続きが必要ですか?
はい、それぞれの証券会社に対して個別に手続きが必要です。
書類の扱い(写し可か原本必須か)は各社で異なるため、事前に確認しておきましょう。
株式の相続税評価額はどう計算されますか?
上場株式の場合、死亡日の最終価格・死亡月の終値月平均・前月の終値月平均・前々月の終値月平均を比較し、最も低い価額で評価します。
また、移管後の取得価額は、特定口座・一般口座では原則として被相続人の取得価額を引き継ぎます。NISA口座で保有していた資産については、相続発生日の時価が取得価額になります。
まとめ
ネット証券の相続手続きは、書類提出が郵送中心になることが多く、証券会社ごとに手続き方法や書類の扱いが異なります。
早めに口座の存在を確認し、必要書類を揃えて動くことが、相続税申告の期限(翌日から10ヶ月以内)に間に合わせる最善策です。
NISA口座の非課税は引き継げません。通常の株式は被相続人の取得価額を引き継ぐのに対し、NISA口座の株式は相続発生日の時価が取得価額になる点を押さえておきましょう。
ネット証券以外にも、銀行口座・電子マネー・暗号資産など、手続きが必要なデジタル資産は多岐にわたります。一連の流れを確認しておきましょう。
【保存版】家族が亡くなったらする手続きまとめ|優先度つきチェックリスト
本記事は一般的な流れをまとめたものです。実際の必要書類や移管方法は、証券会社・保有商品・相続人の状況によって異なるため、手続き前に各証券会社の公式ページで最新情報をご確認ください。
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