親が余命宣告を受けると、悲しみや動揺の中でも銀行口座の確認・葬儀社への事前相談・相続の準備など、時間のかかる手続きが次々と迫ってきます。早めに動き出すことが、後悔のない時間につながります。
ショックや不安の中でも、できることから一つずつ進めることで、残された時間をより大切に過ごせます。
この記事では、親が余命宣告を受けたときに家族ができることを、医療・生活・法的・心のケアの観点から時系列で整理して解説します。
目次
親の余命宣告を受けたときの最初の心構え

余命宣告を受けると、動揺や混乱の中で「どう振る舞えばよいのか分からない」と感じる人も多いでしょう。
最初に大切なのは、心の準備を整えることです。感情を抑え込むのではなく受け止め、次に進むための視点を持つことが支えになります。
ショックを受けるのは自然なこと
余命宣告は家族にとって非常に重い現実です。
動揺や悲しみ、時には怒りや罪悪感を感じるのも当然であり、自分を責める必要はありません。
完璧を求めすぎず、まずはその気持ちを受け入れることから始めましょう。
焦らず「今できること」を一つずつ
突然の宣告に動揺しても、時間は限られています。
すべてを一度にやろうとせず、優先すべきことを整理し、今日できることから少しずつ取り組む姿勢が大切です。
親の余命宣告後にやること【準備リスト】
余命宣告の後は、日々の生活や将来に向けた準備が急務となります。
焦る必要はありませんが、「今すぐやること」「数週間で進めること」「長期的に準備すること」を整理すると行動に移しやすくなります。

【緊急】1週間以内にやること
余命宣告を受けて最初の1週間は、医師との情報整理や本人の希望確認など、優先度の高いことから取り組む必要があります。
ここで方向性を決めておくと、その後の準備がスムーズになります。
| やること | 目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 医師から病状・治療方針を確認 | 当日〜数日以内 | メモを取る。不明点は遠慮なく質問 |
| 家族(兄弟姉妹)への連絡・情報共有 | 当日〜翌日 | 介護の分担も話し合う |
| 本人の希望(療養場所・延命治療)を確認 | 1週間以内 | 本人が話せるうちに丁寧に聞く |
| 生命保険の加入内容を確認 | 1週間以内 | 診断書が必要な給付がある場合も |
| 介護休業制度の確認(勤務中の方) | 1週間以内 | 最大93日(分割取得可)。介護休業給付金(賃金の約67%)あり。詳細は勤務先・厚生労働省サイトへ |
① 医師からの説明を整理し、治療方針を家族で確認
診断内容や余命の目安、今後の治療の選択肢について、医師にしっかり確認しましょう。
確認すべきポイントとして、病状の詳しい説明、治療選択肢のメリット・デメリット、今後のスケジュールや通院頻度、セカンドオピニオンの必要性などが挙げられます。
セカンドオピニオンを希望する場合は、主治医に紹介状(診療情報提供書)を依頼することができます。費用は健康保険適用外で自費となる場合が多く、医療機関によって異なります(1万〜5万円程度が一般的とされていますが、がん専門病院など施設によって大きく異なるため、必ず受診先に確認してください)。
診察室でメモを取る場合は、事前に医師の了承を得た上で行うとスムーズです。
曖昧な点は遠慮なく質問し、家族間で情報を共有することが重要です。
② 本人の希望を丁寧に聞く(療養場所・治療の程度)
在宅療養を望むのか、延命措置を希望するのかなど、本人の価値観や意思を確認することが最優先です。
どこで過ごしたいか、延命治療への考え方、痛みのコントロール、最期に会いたい人ややりたいことなどを話し合いましょう。
また、もしものときの過ごし方について本人・家族・医療チームが繰り返し話し合うことを「ACP(アドバンス・ケア・プランニング/人生会議)」と呼びます。法的拘束力はありませんが、本人の意思を周囲が理解・共有するための大切なプロセスです。一度話したことが最終決定ではなく、気持ちが変わったら改めて話し合えることも伝えてあげましょう。
療養場所の主な選択肢は以下の通りです。詳細は担当医・医療ソーシャルワーカーへご相談ください。
| 選択肢 | 特徴 | 費用の目安 | 向いている方 |
|---|---|---|---|
| 緩和ケア病棟(ホスピス) | 専門スタッフによる24時間ケア | 健康保険適用(施設により差額ベッド代が必要な場合あり) | 専門的なケアを受けたい方 |
| 在宅医療(在宅ホスピス) | 自宅で訪問診療・訪問看護を受ける | 健康保険または介護保険が適用(訪問診療・訪問看護で制度が異なる) | 自宅で最期を迎えたい方 |
| 一般病棟で継続治療 | 積極的な治療を継続 | 健康保険適用(高額療養費制度あり) | 治療の可能性を追いたい方 |
緩和ケアは、入院・外来・在宅のいずれの場でも受けることができます。
参考:国立がん研究センター がん対策情報センター『がんと療養シリーズ 緩和ケア』第3版第2刷(2021年6月)
本人の希望を尊重することが、残された時間をより良いものにする鍵です。
【重要】1ヶ月以内に進めること
宣告から少し落ち着いた段階では、経済面や療養環境の整備を進めていきましょう。この時期に基盤を整えておくことで、介護や生活の負担を減らすことが可能です。
③ 保険・医療費・経済面の確認と手続き
経済的な負担は大きな課題となります。利用できる可能性がある主な制度は以下の通りです。詳細・適用条件は各申請先へ確認推奨です。
| 制度名 | 内容 | 申請先 |
|---|---|---|
| 高額療養費制度 | 1ヶ月の医療費の自己負担に上限が設けられる(上限額は収入によって異なります) | 加入中の健康保険組合・協会けんぽ |
| 介護保険サービス | 要介護認定を受けると訪問介護・福祉用具レンタル等が利用できる | 市区町村の窓口・地域包括支援センター |
| 傷病手当金 | 健康保険加入者が病気で仕事を休んだ際に支給される(条件・期間は加入保険による) | 加入中の健康保険組合・協会けんぽ |
| 医療費控除 | 年間の医療費が10万円または総所得金額の5%を超えた場合、確定申告で一部が還付される可能性がある | 税務署(確定申告時) |
| 生命保険の特定疾病・高度障害給付 | 加入している保険の内容によって診断確定後に給付される場合がある | 加入中の保険会社 |
④ 生活環境を整える(在宅療養・施設利用の準備)
本人の希望に応じて療養環境を整えます。
在宅療養を選ぶ場合は、バリアフリー化や訪問医療の手配、福祉用具レンタルの検討が必要です。施設利用を検討する場合は、見学や入居手続きを早めに行いましょう。
⑤ 家族の役割分担を明確にする
介護、通院付き添い、金銭管理など、誰が何を担うのかを話し合いで決めておくことでトラブルを防げます。
主要な介護担当者、付き添い当番、金銭管理の責任者、緊急時の連絡体制を整理しておくと安心です。
【中長期】数ヶ月かけて準備すること
少し時間が経つと、相続やデジタル資産整理など長期的な課題に目を向ける余裕も出てきます。将来の安心につながる準備を、無理のないペースで進めましょう。
⑥ 相続・遺言・エンディングノートの準備
財産に関する争いを防ぐため、本人の意思を早めに明確にしておくことが大切です。
まず確認したいこと:銀行口座について
親名義の銀行口座は、金融機関に死亡が伝わると凍結されます(届出前は通常利用可能なケースもありますが、金融機関によって対応が異なります)。すぐに凍結されるわけではありませんが、生前のうちに口座情報を把握しておくこと、また日常的に使用していない口座を整理しておくことで、死後の手続きがスムーズになります(詳細は各金融機関へ確認推奨)。
相続手続きには期限があります
| 手続き | 期限の目安 | 相談先 |
|---|---|---|
| 相続放棄の検討 | 死亡を知った日から原則3ヶ月以内 | 家庭裁判所・弁護士 |
| 準確定申告 | 死亡日から4ヶ月以内 | 税務署・税理士 |
| 相続税申告・納付 | 死亡日から10ヶ月以内 | 税務署・税理士 |
| 遺産分割協議 | 期限なし(ただし早めが望ましい) | 司法書士・弁護士 |
各手続きの詳細・条件は状況によって異なります。司法書士・弁護士・税理士へ相談することをおすすめします。
遺言書・エンディングノートの書き方はこちらの記事も参考にしてください。
⑦ デジタル遺品の整理
現代特有の準備として、デジタル資産の整理も必要です。SNSアカウント、ネット銀行・証券、サブスクリプションサービス、パスワード、PC・スマホのデータを計画的に整理しておきましょう。
特に、スマホのロック解除方法やパスワードを家族が把握していないと、死後の手続きで大きな支障が出るケースがあります。
⑧ 「一緒に過ごす時間」を何より大切にする
実務的なことに追われがちですが、親子として過ごす時間を最優先にしましょう。
思い出話や感謝の言葉を伝え、写真・動画を一緒に見たり、好きなことを共に楽しむ時間を作ってください。
余命宣告後、本人に伝えるかどうか
余命宣告を受けた際、「本人に伝えるかどうか」は家族が最も悩む問題のひとつです。どちらが正解というわけではなく、本人の性格や価値観、家族の関係性によって判断が変わります。
| 選択 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 伝える | 本人が自分の意思で残り時間を決められる。会いたい人への連絡、エンディングノートの作成、家族への言葉を残す機会ができる | 精神的なショックが大きい。受け入れるまでのサポートが必要 |
| 伝えない | 精神的ショックを与えずに済む。穏やかな日常を保てる | 本人が後から「隠されていた」と感じる可能性がある。意思決定に参加できない |
判断に迷う場合は、担当医や医療ソーシャルワーカーと相談しながら、家族で慎重に決めることをおすすめします。正解は一つではありません。
余命宣告後の心のケアとサポート

実務的な準備と同じくらい大切なのが、心のケアです。本人も家族も精神的負担を抱えやすいため、支え合える環境を整えることが欠かせません。
本人の心のケア(不安・孤独感への対応)
病気への不安や孤独感は大きな負担です。話を聞く時間を作る、適度なスキンシップ、一人にしない時間、緩和ケアやカウンセリングの活用が助けになります。
家族の心のケア(相談窓口・サポートグループ)
家族も精神的に疲弊しやすいため、一人で抱え込まないことが大切です。以下の窓口を活用しましょう。
| 相談窓口 | 内容・探し方 |
|---|---|
| 地域包括支援センター | 全国の市区町村に設置。介護・医療・生活に関する相談に対応。お住まいの市区町村のHPから検索できます |
| がん相談支援センター | 全国のがん診療連携拠点病院内に設置。患者・家族の相談を無料で受け付け。国立がん研究センターのサイトから検索できます |
| グリーフケア団体・患者会 | 同じ経験を持つ家族との交流や専門カウンセリングが受けられます。「グリーフケア + お住まいの地域名」で検索してみてください |
よくある質問(FAQ)
Q1. 余命宣告を受けたあと、まず何をすればよいですか?
まずは医師の説明を整理し、家族で共有することから始めましょう。
治療方針や本人の希望(療養場所・延命治療の有無など)を確認し、次に経済面や生活環境の準備を進めるのが基本です。この記事の「1週間以内にやること」のチェックリストを参考にしてください。
Q2. 本人が余命を知らない場合、家族はどう対応すればいいですか?
本人への告知は非常にデリケートな問題です。医師と相談し、本人の性格や希望を踏まえて慎重に判断しましょう。
伝える・伝えないどちらの選択にもメリットと注意点があります。上記の「余命宣告後、本人に伝えるかどうか」セクションも参考にしてください。迷う場合は担当医や医療ソーシャルワーカーへご相談ください。
Q3. 介護や医療費が心配なとき、どんな制度が使えますか?
高額療養費制度、介護保険、傷病手当金、医療費控除などの公的制度が利用できます。
どこに相談すればよいか迷った場合は、以下の窓口を最初の相談先にしてみてください。
- 病院の医療ソーシャルワーカー(MSW):入院・通院中の病院に配置されていることが多く、制度の案内から手続き支援まで対応してもらえます。まず担当医か看護師に「相談窓口を教えてほしい」と伝えてみましょう
- 社会福祉協議会:各市区町村に設置。生活全般の困りごとや福祉サービスの相談を無料で受け付けています
- 地域包括支援センター:介護保険に関する相談の入口として活用できます
申請時期や条件によって支給額が異なるため、早めに相談することをおすすめします。詳細は「1ヶ月以内に進めること」の表もご参照ください。
Q4. 心がつらいとき、どこに相談すればいいですか?
家族の心のケアも大切です。
地域包括支援センター、がん相談支援センター、グリーフケア団体などでカウンセリングを受けられます。一人で抱え込まず、話を聞いてもらうことが回復への第一歩です。
Q5. 余命宣告後、銀行口座の管理はどうすればいいですか?
親名義の銀行口座は、金融機関に死亡が伝わると凍結されます。届出前は通常利用可能なケースもありますが、金融機関によって対応が異なります。すぐに凍結されるわけではないものの、備えておくことが大切です。
生前のうちに、口座情報・暗証番号の把握や、使っていない口座の整理を進めておくことをおすすめします。相続人の間でのトラブルを防ぐためにも、引き出した場合は用途の記録を残しておきましょう(詳細は各金融機関・司法書士へご確認ください)。
Q6. 葬儀社への事前相談は、いつから始めればよいですか?
余命宣告を受けた段階から、早めに事前相談を始めることをおすすめします。多くの葬儀社が無料で事前相談を受け付けており、費用の見積もりや希望する形式の確認ができます。
「まだ早い」と思わず、余裕のある時期に複数社を比較しておくと、いざというときに慌てずに済みます。
Q7. 遺言書がない場合はどうすればいいですか?
遺言書がない場合は、相続人全員で話し合い「遺産分割協議」を行い、合意内容を「遺産分割協議書」として書面に残します。
ただし、財産の内容によっては手続きが複雑になる場合があります。司法書士・弁護士への相談が円滑な解決につながることが多いとされています。
Q8. 介護で仕事を休む場合、どんな制度が使えますか?
「介護休業制度」を利用することができます。対象家族1人につき、通算93日まで休業できる制度です(分割取得可)。休業中は雇用保険から介護休業給付金(賃金の約67%相当)が支給される場合があります。また「介護休暇」として年5日(対象が2人以上の場合は年10日)の短期休暇も取得できます。
詳細な条件・給付内容は勤務先の就業規則および厚生労働省の公式情報でご確認ください。
Q9. 親のスマホやデジタルデータはどう整理すればいいですか?
スマホのロック解除方法・パスワードを家族が把握しておくことが最初のステップです。サブスクリプションサービスは死後も課金が続く場合があるため、一覧化して解約の準備をしておきましょう。
デジタル遺品整理の詳しい方法はこちらをご参照ください。
Q10. セカンドオピニオンは受けた方がよいですか?
「別の医師の意見も聞いてみたい」と思うことは自然なことです。セカンドオピニオンを受けることで治療の選択肢が広がる場合もあります。
希望する場合は、主治医に「セカンドオピニオンを受けたい」と伝え、紹介状(診療情報提供書)と検査データを用意してもらいましょう。主治医との関係を損なうことを心配する必要はありません。
まとめ|「できることリスト」を決めて一歩ずつ
親の余命宣告を受けると、大きな不安と悲しみに直面します。
しかし医療方針の確認、本人の希望の尊重、経済面・相続の準備、生活環境の整備、心のケアを整理し、無理のない範囲で取り組むことで後悔の少ない時間を過ごせます。
すべてを完璧にこなす必要はありません。
行動の第一歩として、今日できることを一つ決めることから始めましょう。
そして何より、親との時間を大切にすることを忘れないでください。
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