遺言書は本当に必要?7つのメリットとデメリットをケース別に解説

遺言書は本当に必要?7つのメリットとデメリットをケース別に解説

「遺言書って、自分にはまだ早いかな…」そう感じていませんか?

実は、遺言書を残すことの大きなメリットは、残された家族の負担を減らし、相続をめぐるトラブルを防ぎやすくすることです。相続争いは、決して資産家だけの話ではありません。自宅の土地や預貯金など、一般的な家庭の財産でも深刻な対立につながることがあります。

この記事では、遺言書を残すことで得られる7つのメリットを、具体的な場面・ケース別に解説します。あわせて、見落としがちな注意点や、近年の制度改正・実務運用の変更点も整理して、「自分に遺言書は必要か」を判断しやすいようにまとめました。

この記事でわかること

  • 遺言書の3種類と特徴(比較表つき)
  • 遺言書を残す7つのメリット(相続争い防止・手続きの負担軽減・法定相続人以外への財産移転など)
  • 見落としがちなデメリット・注意点
  • あなたに遺言書が特に必要なケース
  • 自筆証書遺言保管制度など、近年の重要な制度変更

目次

1. 遺言書とは?基礎知識と3種類の違い

遺言書とは、自分が亡くなった後の財産の分け方や意思を記した文書のことです。法律上の要件を満たした遺言書には効力があり、原則として、遺言の内容に沿って相続手続きが進められます。

遺言書で指定できる内容は、財産の分け方だけではありません。子どもの認知、未成年の子の後見人指定、遺言執行者の指定、さらには家族へのメッセージ(付言事項)まで幅広く記載できます。

遺言書の種類と比較

種類 費用 検認 安全性 おすすめ度
自筆証書遺言(法務局保管) 3,900円(保管申請手数料) 不要 保管により紛失・改ざんリスクを抑えやすいが、内容面の有効性が当然に保証されるわけではない 費用を抑えたい方
公正証書遺言 財産額などに応じて決定 不要 最も高い ◎ 確実性重視の方
秘密証書遺言 公証人手数料が必要 必要 内容の秘密は守りやすいが、あまり一般的ではない △ 利用は少なめ

法務局による遺言書保管制度とは

令和2年(2020年)7月から、法務局(遺言書保管所)で自筆証書遺言を保管してもらえる制度が始まりました。保管申請手数料は1件3,900円で、この制度を利用した自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所での検認が不要になります。

また、法務局で保管してもらうことで、紛失や改ざんのリスクを抑えやすくなる点も大きなメリットです。ただし、法務局が遺言内容の法的有効性そのものを保証する制度ではありません。方式面の確認は行われますが、後に有効性が争われる可能性が完全になくなるわけではない点には注意が必要です。

遺言書がないとどうなるのか

遺言書がない場合、相続人全員が話し合って遺産の分け方を決める「遺産分割協議」を行うことになります。相続人が1人でも反対すれば協議はまとまらず、最終的に家庭裁判所の調停・審判へ発展することもあります。

また、自筆証書遺言が見つかった場合でも、法務局で保管されていないものは、原則として家庭裁判所での検認が必要です。なお、検認は遺言書の形状や日付、署名などを確認して偽造・変造を防ぐための手続であり、遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

2. 遺言書を残す7つのメリット

まず結論から見ると、遺言書を残す主なメリットは以下の7つです。

  • 相続人同士の争いを防ぎやすくなる
  • 遺産分割協議の負担を減らしやすい
  • 法定相続人以外にも財産を渡せる
  • 自分の意思を反映した分配がしやすくなる
  • 相続手続きの時間・手間を減らしやすい
  • 判断能力があるうちに意思を残せる
  • 家族へのメッセージを残せる

メリット① 相続人同士の争いを未然に防ぎやすい

遺言書最大のメリットは、「誰に何を残すのか」を明確にしやすいことです。「うちは仲がいいから大丈夫」と思っていても、財産が絡むと感情的な対立が起きることは珍しくありません。

遺言書があれば、被相続人の意思が明文化されるため、相続人同士で一から分け方を決める負担を減らしやすくなります。特に、不動産がある家庭や、相続人同士の関係が良好でない家庭では効果が大きいです。

メリット② 遺産分割協議の負担を減らし、手続きを進めやすくなる

遺言書がない場合、相続人全員が参加する遺産分割協議が必要になり、相続人全員の合意を得なければなりません。相続人が多い、遠方に住んでいる、疎遠である、といった事情があると、それだけで大きな負担になります。

一方で、有効な遺言書があり、内容が明確で、遺留分や遺言の有効性をめぐる争いがなければ、遺産分割協議を省略できることが多く、手続きを進めやすくなります。

遺言書あり 遺言書なし
① 相続開始(死亡) ① 相続開始(死亡)
② 遺言書の確認 ② 相続人・財産の調査
③ 必要な手続きへ進む ③ 遺産分割協議(全員合意が必要)
④ 金融機関・不動産の名義変更手続き ④ 協議書の作成・署名・押印
手続きが進めやすい 合意形成に時間がかかることがある

メリット③ 法定相続人以外の人にも財産を渡せる

法定相続人になれるのは、配偶者・子・父母・兄弟姉妹などに限られます。内縁の配偶者、長男の妻、孫(子が存命の場合)、特定の友人や団体などは、どれだけお世話になっていても、遺言書がなければ原則として財産を受け取れません。

遺言書に記載することで、こうした法定相続人以外の人や団体に財産を渡すことができます。

遺留分に注意:配偶者や子など一定の相続人には「遺留分」という最低限の取り分が保障されています。遺言書でこれを大きく侵害する内容にすると、後から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。

メリット④ 自分の意思を反映した財産分配がしやすくなる

法定相続分は一般的な基準にすぎず、現実の家庭事情をそのまま反映してくれるわけではありません。たとえば、「長年介護してくれた長女に多めに残したい」「家業を継ぐ長男に事業用資産をまとめて渡したい」といった事情があるなら、遺言書で意思を示しておく意味は大きいです。

遺言書があれば、こうした事情を踏まえた分け方を指定しやすくなります。

メリット⑤ 相続手続きの時間・手間を減らしやすい

遺産分割協議には、相続人全員の戸籍収集、連絡調整、協議書の作成、押印、郵送など、多くの手間がかかります。遺言書があれば、こうした手続きの一部を省略できる場合があり、相続開始後の負担を軽くしやすくなります。

特に、公正証書遺言や法務局保管制度を利用した自筆証書遺言は検認が不要なため、比較的スムーズに相続手続きへ進みやすい点がメリットです。

メリット⑥ 判断能力があるうちに備えられる

遺言書は、本人に遺言能力があるうちに作成しなければなりません。「まだ先の話」と先送りにしていると、判断能力の低下によって作成が難しくなったり、後に有効性が争われたりするリスクがあります。

なお、遺言書は一度作ったら終わりではなく、事情の変化に応じて書き直すことができます。早めに作っておき、必要に応じて見直す形でも問題ありません。

メリット⑦ 付言事項で家族への想いを伝えられる

遺言書には、財産分配の指示とは別に、「付言事項」として家族へのメッセージを自由に書くことができます。法的拘束力はありませんが、「なぜこの分け方にしたのか」「家族へ何を伝えたいのか」を文章で残すことで、感情面の対立をやわらげる効果が期待できます。

【付言事項の例文】
「長女には多くの財産を残しましたが、それは長年にわたり私の生活を支えてくれたことへの感謝の気持ちからです。どうかお互いを責めず、仲良く暮らしていってください。」

3. デメリット・注意点も正直に解説

① 形式不備で無効になるリスク(自筆証書遺言)

自筆証書遺言には厳格な方式があります。本文、日付、署名などの要件を欠くと無効になる可能性があります。特に注意したいのは次の点です。

  • 本文は原則として自書が必要
  • 日付は「○年○月○日」まで具体的に記載する
  • 複数の遺言書がある場合、後の日付の遺言が常に全文優先するとは限らず、前の遺言と抵触する部分について後の遺言が優先すると考えられます
  • 訂正方法にもルールがある

なお、2019年の見直しにより、財産目録はパソコンで作成したものや通帳のコピーなどを添付する方法も認められています。

② 遺留分を無視すると後からトラブルになる

遺言書で特定の相続人に全財産を渡すよう指定しても、他の相続人から遺留分侵害額請求を受けると、一部の金銭的な調整が必要になることがあります。遺言書を作るときは、気持ちだけでなく、遺留分にも配慮した内容にすることが大切です。

③ 公正証書遺言には費用がかかる

公正証書遺言は、公証人が関与して作成するため、手数料が必要です。費用は、受遺者ごとの目的財産額などに応じて決まります。

また、制度改正により費用体系が見直されることもあるため、最新額は日本公証人連合会や各公証役場で確認するのが確実です。費用はかかりますが、方式面の安心感や相続開始後の手続きのしやすさを考えると、確実性を重視する人には有力な選択肢です。

4. 【ケース別】あなたに遺言書が特に必要な場面

以下のいずれかに当てはまる方は、特に早めの作成をおすすめします。

ケース① 子どもがいない夫婦

子どもがいない夫婦で一方が亡くなった場合、配偶者だけでなく、亡くなった方の親や兄弟姉妹が相続人になることがあります。配偶者にできるだけ多く残したい、または配偶者に自宅を確実に承継させたい場合は、遺言書の必要性が高くなります。

ケース② 再婚で前婚の子がいる

前婚の子も法定相続人です。現在の配偶者や家族と面識がない場合でも、相続の場面では関係者になります。相続人同士の連絡調整が難しくなりやすいため、遺言書で分け方を明確にしておく意味が大きいです。

ケース③ 相続人同士の関係が良くない

普段から関係が良くない兄弟姉妹や親族がいる場合、遺産分割協議は長引きやすくなります。遺言書があれば、少なくとも被相続人の意思が明確になり、対立を抑えやすくなります。

ケース④ 事業承継・特定の不動産を引き継がせたい

会社の株式や事業用資産、不動産などを特定の後継者に承継させたい場合、法定相続分どおりでは不都合が生じることがあります。事業や資産を誰に承継させたいかを明記しておくことが重要です。

ケース⑤ 介護や生活支援をしてくれた家族に多く残したい

長年介護をしてくれた子や、生活面で大きく支えてくれた家族に多めに残したいと思っても、法定相続分だけではその思いを反映しにくいことがあります。遺言書があれば、そうした貢献を踏まえて、特定の相続人に多めに相続させる内容を指定しやすくなります。

ケース⑥ 相続人がいない・団体などに寄付したい

法定相続人がいない場合、遺言書がなければ、最終的に財産が国庫に帰属する可能性があります。お世話になった人や団体へ財産を渡したいなら、遺言書で明確にしておく必要があります。

5. メリットを最大化する遺言書の種類の選び方

自筆証書遺言(法務局保管) 公正証書遺言
費用 3,900円 財産額などに応じて決定
確実性 比較的使いやすいが、内容面の争いが完全になくなるわけではない 無効リスクが低く、実務上も利用しやすい
検認 不要 不要
内容の秘密 保管内容は一定程度守られる 公証人・証人が関与する
向いている方 費用を抑えたい・比較的シンプルな内容 確実性重視・財産構成が複雑・争いの予防を重視したい

相続トラブル防止を最優先に考えるなら、公正証書遺言が有力な選択肢です。費用はかかりますが、方式面での安心感が高く、相続開始後の手続きも進めやすくなります。

一方、費用を抑えたい場合は、法務局保管制度を活用した自筆証書遺言も検討しやすい方法です。

近年の制度変更で自筆証書遺言は使いやすくなった

2019年の見直しにより、自筆証書遺言の財産目録はパソコンで作成したものや資料の添付が可能になりました。

さらに、2020年7月からは法務局での保管制度が始まり、法務局保管の自筆証書遺言については、相続開始後に検認が不要となっています。近年は省令改正やオンライン手続の試行拡大など、制度運用の見直しも続いています。

6. よくある質問(FAQ)

Q. 遺言書がなくても相続はできますか?

はい、遺言書がなくても相続は可能です。その場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、全員の合意のもとで財産を分けます。ただし、合意がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停・審判に進むことがあります。

Q. 遺言書は何歳から作成できますか?

民法上、満15歳以上であれば作成できます。重要なのは、判断能力がしっかりしているうちに作成することです。

Q. 遺言書はあとから書き直せますか?

はい、書き直すことができます。事情の変化に応じて、定期的に見直すと安心です。

Q. 遺言書の作成に費用はいくらかかりますか?

法務局保管制度を利用した自筆証書遺言の保管申請手数料は3,900円です。公正証書遺言は、財産額などに応じて手数料が決まります。専門家に依頼する場合は、別途報酬がかかることがあります。

Q. 遺言書があっても相続人に無視されることはありますか?

法的に有効な遺言書には効力がありますが、遺留分の問題や遺言の有効性をめぐる争いが起きることはあります。遺言執行者を指定しておくと、手続きを進めやすくなる場合があります。

7. まとめ

遺言書を残す7つのメリット

  • 相続人同士の争いを防ぎやすくなる
  • 遺産分割協議の負担を減らしやすい
  • 法定相続人以外にも財産を渡せる
  • 自分の意思を反映した分配がしやすくなる
  • 相続手続きの時間・手間を減らしやすい
  • 判断能力があるうちに備えられる
  • 付言事項で家族への想いを伝えられる

「まだ財産が少ない」「まだ若い」と感じていても、遺言書は早めに作っておくことで、将来の安心につながります。内容はあとから見直すこともできるため、まずは現時点の意思を残しておくことに意味があります。