もし明日スマホやパソコンが開けなくなったら、あなたの大切な写真や銀行口座はどうなるでしょうか。
今や私たちの生活はデジタルサービスに深く依存しており、その情報は「見えない財産=デジタル遺品」として相続の対象にもなります。
本ガイドでは、やさしく・わかりやすいデジタル遺品の整理方法を段階的に解説します。
目次
デジタル遺品とは?なぜ整理が必要なのか

スマホやクラウドに眠るデータは、物理的な財産とは違い家族からは見えにくいもの。
ところが放置すると、大切な思い出や資産が失われたり、無駄な出費につながることがあります。
実際に、株式会社林商会が2025年6月に実施したアンケートでは、遺品整理を経験した191名のうち約39%が「デジタル遺品の整理で困った」と回答しています。
さらに、約4割の人が「デジタル遺品を整理できていないまま」と答えており、多くの家庭で見えない課題になっていることがわかります。
デジタル遺品の主なカテゴリ
- デバイス内データ:スマホの写真・連絡先、PCの文書、外付けHDD
- オンラインサービス:SNS、メール、クラウドストレージ
- 金融関連:ネット銀行、証券口座、暗号資産、電子マネー
- サブスクや娯楽:動画・音楽配信、電子書籍、ゲーム課金
- ショッピング:ECアカウント(Amazon、楽天等)、フリマアプリ
実際に起きているトラブル事例

- 継続課金の放置:動画配信やクラウドの料金が数年間引き落とされ続けた
- 思い出の喪失:クラウドに保存された20年分の家族写真が未払いでアカウント削除、永久消失
- セキュリティリスク:放置されたSNSが乗っ取られ、詐欺メッセージが拡散
- 資産相続の遅延:暗号資産ウォレットのパスワード不明で資産が凍結
これらはすべて、生前整理で未然に防げる問題です。
デジタル遺品の整理方法|5つの基本ステップ

一見むずかしそうに感じるデジタル遺品の整理ですが、順を追って進めれば誰でも無理なく取り組めます。
ここでは、重要な情報をもれなく管理し、家族に確実に残すための5つの基本ステップを紹介します。
ステップ1.現状把握|利用サービスを棚卸しする
まずは、自分がどんなデジタルサービスを利用しているのかをリストアップしましょう。スマホやPCの中には、意外と多くのアプリや登録情報が眠っています。
- スマホアプリ:銀行、キャッシュレス決済、SNS、ショッピングなど
- クレジット明細:自動課金・サブスク契約の確認
- ブラウザの保存パスワード:Chrome、Safariなどの「自動入力」を確認
ポイント:まずは「どんなサービスを使っているか」を可視化することが整理の第一歩です。
ステップ2.重要度分類|優先順位をつける
次に、リストアップしたサービスを重要度別に分類します。万が一のときに「家族が困るもの」から優先的に整理しましょう。
- 最優先:ネット銀行、証券口座、暗号資産などの金融サービス
- 中程度:クラウドストレージ、主要SNS、メールアカウント
- 低優先:通販サイト、ゲーム、趣味アプリなど
ポイント:削除予定や退会したいサービスには「不要」マークをつけておくと、後でスムーズです。
ステップ3.情報整理|アカウント情報を記録する
重要なアカウント情報は、一覧にまとめておくことで、家族がすぐに把握できます。紙でもデジタルでも構いませんが、漏えい防止には十分注意しましょう。
- サービス名・URL
- ID(メールアドレス)/パスワード
- 二段階認証(2FA)の有無と設定方法
- 利用料金・更新日
- 備考(ログイン方法や注意点など)
おすすめ:「1Password」「Bitwarden」「Googleパスワードマネージャー」などの管理アプリを使うと、安全かつ効率的に管理できます。
ステップ4.バックアップ|写真やデータを安全に残す
デジタルデータは消失リスクが高いため、必ず二重バックアップを行いましょう。クラウドと外部ストレージを併用すると安心です。
- クラウド保存:Googleドライブ、iCloud、OneDriveなど
- 外部保存:外付けHDD、SSD、USBメモリ
- 重要書類はスキャンしてPDF化
ポイント:バックアップの更新日をメモしておき、定期的に見直しましょう。
ステップ5.継承準備|家族と安全に共有する
最後のステップは、整理した情報を「家族が安全に引き継げる状態」にしておくことです。共有方法を決めておかないと、せっかくの整理も活かせません。
- 紙でまとめる場合:印刷して封筒に入れ、保管場所を家族に伝える
- デジタルで共有する場合:パスワード管理アプリの「緊急時アクセス」機能を設定
- Googleの場合:「アカウント無効化管理ツール」で連絡先を登録
ポイント:家族全員ではなく、信頼できる人1〜2名に限定して共有するのが安心です。
この5ステップを少しずつ進めるだけで、デジタル遺品の整理は確実に進みます。まずはスマホのアプリ一覧をチェックするところから始めてみましょう。
デジタル遺品の情報共有方法とセキュリティ対策

整理した情報は、自分だけが分かっていても意味がありません。家族が必要なときに安全にアクセスできるようにすることが大切です。
ただし、共有の仕方を誤ると不正アクセスや情報流出のリスクもあるため、利便性とセキュリティのバランスを考慮して管理方法を選びましょう。
紙ベース管理
- A4でカテゴリごとに整理し、金庫や耐火ボックスで保管
- デジタルが苦手な家族でも確実にアクセス可能
デジタル管理(パスワード管理アプリ)
- 1Password:家族共有に強い
- Bitwarden:オープンソースで無料版も充実
- Dashlane:VPN機能付き
家族アカウントを作成し、緊急時アクセス機能を必ず設定しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1.デジタル遺品とは、どこまでが対象ですか?
デジタル遺品とは、スマホやパソコンに保存されたデータだけでなく、
クラウド・SNS・ネット銀行・暗号資産・サブスク契約など、IDとパスワードでアクセスするすべての情報を指します。
つまり、現代の生活で使っているほぼすべてのオンラインサービスが対象になります。
Q2.亡くなった後に家族がSNSや銀行口座にログインしてもいいの?
故人のアカウントに家族が無断でアクセスすることは、
不正アクセス禁止法に触れるおそれがあります。
必ず正式な相続手続きを経て、運営会社や金融機関の指示に従って対応しましょう。
Q3.スマホのロックが解除できない場合、どうすればいい?
パスコードや指紋認証が分からない場合、原則として本人以外が解除することはできません。
ただし、メーカーや専門業者に依頼することでデータ復旧が可能なケースもあります。
費用は数万円〜数十万円かかることもあるため、事前に相談・見積もりを取りましょう。
Q4.GoogleやAppleには「死後の設定」機能がありますか?
はい、主要なデジタルサービスでは「死後アカウント設定」が提供されています。
たとえばGoogleには「アカウント無効化管理ツール」、Appleには「デジタル遺産プログラム」があります。
これらを事前に設定しておけば、信頼できる家族にデータの引き継ぎが可能になります。
Q5.紙とアプリ、どちらで管理するのがおすすめ?
どちらにもメリットがあります。
紙での管理はデジタルが苦手な家族でも見やすく、保管場所を伝えやすい点が利点です。
アプリでの管理は更新やセキュリティ面で優れており、暗号化による安全性も高いです。
おすすめは「紙+アプリの併用」。定期的に更新日を記入しておきましょう。
Q6.デジタル遺品の整理はいつ始めればいい?
特別なタイミングを待つ必要はありません。
思い立ったときがベストです。まずはスマホのアプリ一覧から利用サービスを10個書き出すなど、小さな一歩から始めましょう。
習慣化すれば、自然と“安心できるデジタル終活”が進んでいきます。
まとめ|今日からできるアクション
- スマホのアプリ一覧から使用サービスを書き出す
- クレジットカード明細で継続課金を確認する
- 家族に「デジタル終活を始めた」と伝える
完璧を目指さず、小さく始めることが成功のコツです。
okusokuでは、終活や相続、デジタル遺品整理に関する情報を、正確でわかりやすくまとめています。読者の方が「迷わず次のステップに進める」「家族と安心して話し合える」ように、実用的で保存して役立つコンテンツづくりを心がけています。


