遺品整理の費用は原則として「相続人」が払います。
ただし相続放棄や複数人の相続人がいる場合、支払い義務は状況によって変わります。
本記事では、遺品整理の費用の支払いについて、法律・実例・費用相場・トラブル回避までわかりやすく解説します。
目次
遺品整理の費用は誰が払う?【相続放棄した場合や費用負担のパターンも解説】

相続人の支払い義務【原則】
遺品整理の費用は、基本的には相続人が負担することになります。
民法上の「葬儀費用や整理費用は遺産債務」とされる扱いから、遺産の中から支払うことも可能ですが、遺産分割前であれば代表相続人が一時的に立て替えるケースが一般的です。
相続放棄した場合の注意点
相続放棄をしたからといって、すべての義務から解放されるわけではありません。
特に「相続放棄の前に手続きを始めてしまった」「形見分けを受け取った」などの行為があると、事実上相続したとみなされることがあります。慎重に対応する必要があります。
費用負担のパターン別解説
遺品整理の費用負担は、相続の状況によって以下のように異なります。
- パターン1:相続人が存在し、相続放棄していない場合 → 相続人が費用負担(複数人いる場合は協議で分担)
- パターン2:相続放棄したが、放棄前に遺品に手をつけた場合 → 事実上の相続とみなされ、費用負担義務あり
- パターン3:完全に相続放棄し、他に相続人がいる場合 → 他の相続人が負担
- パターン4:全員が相続放棄した場合 → 相続財産管理人による処理(最終的には故人の財産から支出)
相続財産管理人とは?
相続人が誰もいない(または全員が放棄した)場合、家庭裁判所に申し立てて「相続財産管理人」が選任されます。
この人が故人の財産を管理・清算し、必要があれば遺品整理の費用もそこから支出されます。
費用は故人の財産から支払われますが、申し立てには申立人が費用を一時負担する必要があるため注意が必要です。
遺品整理の費用相場はいくら?【間取り別・要因別】
費用感を把握しておくことで、どの程度の負担が予想されるのかを事前に確認できます。
間取り別の目安料金
部屋の広さや荷物の量によって金額は大きく変わります。
環境省によると、遺品整理サービスの料金は多くの事業者がウェブサイト等で「間取り別」に示しており、例えば1Kで4万円から、3LDKで20万円からという相場が確認されています。同じ間取りでも事業者によっては数倍の開きがあるケースもあります。
間取り | 費用目安 |
---|---|
1K〜1DK | 3万〜8万円前後 |
2LDK〜3DK | 15万〜30万円 |
一軒家(4LDK以上) | 30万〜60万円以上 |
※上記はあくまで目安であり、地域や作業内容により変動します。
費用を左右するポイント
また、見積金額の算定は大きく①作業員人件費、②廃棄物処理費用、③リユース品買取費(見積から減額)、④その他の経費に分けて行われます。
例えば、作業員人件費は家屋の広さ・家財量・作業時間によって異なり、1Kで2名、3LDKで6名程度が目安とされています。
廃棄物処理費用にはトラック台数・運搬人件費・市町村の処理単価などが含まれ、リユース品がある場合はその買取額を差し引いて算定されます。
その他にも、以下のような要素によって費用が増減します。
- 荷物の量や大型家具の有無
- エレベーターの有無、階段作業の有無
- 貴重品・危険物・ペット用品などの分類の有無
- 不用品回収や仏壇供養などのオプション追加
家族間の支払いトラブルを防ぐための3つの対策

【事例】兄が亡くなり、遺品整理業者に見積もりを依頼したところ、「今日決めたら安くなる」と迫られ、その場で契約。約32万円の契約金のうち2万4千円を支払ったが、後日になっても作業が始まらず、連絡すると「作業日はまだ決まっていない」と回答された。見積書には「作業日の2日前まで違約金10%」と記載があったが、説明はなかったという。[出典:国民生活センター『こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル』(2018)]
国民生活センターによると、「遺品整理サービス」に関する相談件数は2013年から2017年にかけて増加傾向にあり、近年も注意喚起が続いています。こうした事例からも、見積内容や契約条件の確認を怠らないことが大切です。
ここでは、「費用は誰が払うか」で揉めないために事前にできる対策を紹介します。
事前の話し合いで負担方法を決定
親族間で早い段階から「誰が何をするか」「支払いはどうするか」について共有しておくことが重要です。
生前から家族間で「遺品整理の費用」まで含めた話し合いができていれば理想的です。
契約書・見積書の名義確認
契約書や見積書に誰の名前で申し込んだかによって、支払い義務が発生するケースがあります。
トラブルを避けるためにも、契約時には家族全員が内容を把握しておくべきです。
遺産から支払う場合の手続き
遺産を使って費用を出すには、相続人全員の同意や遺産分割協議が必要です。
勝手に使ってしまうと、後で「勝手に使った」と言われることもあるため注意しましょう。
遺品整理の費用を抑える工夫

遺品整理の費用負担を軽くするためには、以下のような工夫が有効です。
複数社の見積もり比較で適正価格を把握
費用は業者によって大きく異なります。一括見積サイトを使うことで、価格の目安が分かりやすくなります。
一部作業の自己対応で費用削減
自分たちでできる範囲を整理しておけば、その分作業費が軽減されます。写真や貴重品、衣類など仕分けが簡単なものから始めるとよいでしょう。
自治体支援制度の活用
地域によっては、高齢者福祉の一環として「ごみ処理補助制度」や「片付け支援制度」が用意されていることがあります。自治体の公式サイトをチェックしてみましょう。
よくある質問|遺品整理の費用に関するQ&A
Q. 遺品整理の費用を親族のうち誰が負担するかは法律で決まっていますか?
A. 明確に「この人が払う」と決まっているわけではありませんが、原則として相続人が支払います。複数人いれば協議が必要です。
Q. 相続放棄したのに請求された場合はどうすればいいですか?
A. 相続放棄後に遺品に触れた、契約したなどの事実があると、費用負担の可能性があります。専門家(弁護士・司法書士)への相談をおすすめします。
Q. 遺品整理をしないとどうなりますか?
A. 放置すると行政代執行や近隣トラブルにつながる可能性もあるため、早めの対応が望ましいです。
まとめ:トラブルを防ぐには「誰が払うか」を早めに明確に
- 遺品整理の費用は原則として相続人が負担します。
- 相続放棄していても状況によっては請求が来ることがあります。
- トラブルを防ぐには、早い段階での話し合いと契約書類の管理が重要です。
- 見積もり比較や自治体支援などで費用を抑える工夫も可能です。
まずは、家族や親族と話し合い、今後の準備を始めてみましょう。

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