NetflixやAmazon Prime、スマホアプリの定額課金……。気づけば契約が増えている「サブスクリプション(サブスク)」ですが、もしも契約者が亡くなってしまったら、その支払いはどうなるのでしょうか?
デジタル終活が注目される昨今、見えないデジタル遺品としての「サブスク契約」は、遺族にとって大きな負担となるケースが増えています。
この記事では、サブスク契約の問題点とその対策を、法的な観点と実践的な手順を交えて詳しく解説します。
目次
サブスクは”見えない遺品”|契約の放置がもたらす深刻な影響
契約したまま放置されやすい「デジタルの支出」の代表がサブスクです。なぜサブスク契約がデジタル遺品として深刻な問題になるのか、具体的なリスクを見ていきましょう。
遺族が気づかなければ”永遠に課金される”現実
サブスク契約は、毎月・毎年自動で更新されるのが一般的です。契約者が亡くなっても、家族が気づかなければ引き落としが続くケースが後を絶ちません。
注意が必要な状況
- 利用していたサービスの通知がメールのみ
- 家族とアカウント情報を共有していなかった
- Web明細のみでクレジットカード明細を確認していなかった
- 複数のメールアドレスを使い分けていた
実際に、故人のサブスク契約に2年間気づかず、総額20万円以上の支払いが続いていたケースも報告されています。
相続放棄をしても支払いが止まらない法的な仕組み
相続放棄の効果と限界
- 民法上、相続放棄をすれば故人の債務は相続人に承継されません
- しかし、金融機関やクレジットカード会社への死亡通知がなされるまで、自動引き落としは機械的に継続されます
つまり、法的には支払い義務がなくても、実際の引き落としは続いてしまうのです
クレジットカード会社の対応
- 死亡の届出後、通常1-2週間でカードは利用停止されます
- ただし、それまでの期間の支払いは継続するため、早期の手続きが重要です
- 一部のカード会社では、死亡確認後に遡って一定期間の支払いを返金する場合もあります
どんなサブスクが”遺品”になる?主要サービスのチェックリスト
エンターテイメント系サービス
サービス名 | 月額料金 | 確認方法 |
---|---|---|
Netflix | 790円~1,980円 | Netflix公式サイト → アカウント → メンバーシップ・請求 |
Amazon Prime | 500円(月額)/4,900円(年額) | Amazonアカウント → Prime会員情報 |
Disney+ | 990円 | Disney+アプリ → アカウント → サブスクリプション |
Apple Music | 1,080円 | iPhone設定 → Apple ID → サブスクリプション |
Spotify Premium | 980円 | Spotifyアプリ → アカウント概要 → サブスクリプション |
クラウド・ビジネス系サービス
サービス名 | 月額料金 | 確認方法 |
---|---|---|
iCloud+ | 130円~2,200円 | iPhone設定 → Apple ID → iCloud → ストレージを管理 |
Google One | 250円~3,900円 | Google アカウント → 支払いとサブスクリプション |
Microsoft 365 | 1,284円~2,404円 | Microsoft アカウント → サービスとサブスクリプション |
Adobe Creative Cloud | 2,728円~ | Adobe アカウント → プランを管理 |
スマートフォンアプリ
確認場所 | 確認方法 |
---|---|
iPhone(iOS) | 設定 → Apple ID → サブスクリプション |
Android | Google Play ストア → メニュー → 定期購入 |
4つの対策|今からできるサブスクの”デジタル終活”
見落とされやすいサブスク契約への対策は、段階的に進めることが重要です。以下の4ステップで、効果的なデジタル終活を始めましょう。
① 現在のサブスク契約を完全に把握する
契約の棚卸し方法
- クレジットカード・銀行明細の確認
- 過去6ヶ月分の明細を詳細にチェック
- 英語表記や略称のサービス名も要注意
- 少額の定期支払いを見落とさない
- デバイス別の確認
- スマートフォン:App Store、Google Playの定期購入
- パソコン:ブラウザの保存されたパスワード
- タブレット:各アプリの設定画面
- メール履歴の調査
- 「請求」「月額」「定期」のキーワード検索
- 更新通知メールから契約を逆算
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② 家族とのアカウント情報共有体制を構築
安全な情報共有の方法
- パスワード管理ツールの活用
- 1Passwordなどの家族共有機能を利用
- 緊急時アクセス機能の設定
- アナログ記録との併用
- 重要なアカウント情報は紙媒体でも保管
- 銀行の貸金庫等、安全な場所での保管を検討
セキュリティ配慮事項
- 全ての情報を一箇所に集めすぎない
- 定期的なパスワード変更と記録の更新
- 二段階認証の設定と回復コードの共有
③ サービス別の解約・引き継ぎ手続きを事前調査
主要サービスの家族による手続き
- Apple ID
故人のApple IDは家族が削除申請可能
必要書類:死亡証明書、戸籍謄本、本人確認書類
手続き期間:約2-4週間 - Google アカウント
Googleアカウント無効化管理ツールの事前設定推奨
家族による削除申請:死亡証明書等が必要
Gmail、Google Drive等のデータ取得も可能 - Amazon
家族によるアカウント閉鎖申請が可能
Prime会員の返金対応あり(未使用期間分)
Kindle本等のデジタルコンテンツは基本的に移譲不可
④ 定期的な見直しシステムの確立
効果的な見直しスケジュール
- 四半期ごと:新規契約・解約の記録更新
- 年2回:家族との情報共有内容の確認
- 年1回:解約手続き方法の最新情報チェック
サブスク放置で想定される主なリスク
金銭的損失のリスク
- 月額数百円~数千円の支払いが長期間継続
- 複数のサブスクが重なると、年間で数万円~十数万円の損失の可能性
- 家族が気づくまでの期間が長いほど、損失額は拡大
データ喪失のリスク
- クラウドストレージの支払い停止により、重要なデータが削除される
- 写真、動画、文書など、金銭では代替できない思い出の喪失
- バックアップがない場合、復旧は困難
手続きの複雑化
- 故人のアカウント情報が分からず、解約に時間がかかる
- 海外サービスとの英語でのやり取りが必要になる場合
- 相続放棄をしていても、別途解約手続きが必要
専門家に相談すべきタイミングと費用
相談すべき状況
- 故人のデジタル機器にアクセスできない
- 海外サービスとのやり取りが必要
- 多額のデジタル資産(仮想通貨、電子マネー等)が関わる
- 相続人間でデジタル遺品の扱いに争いがある
専門家と費用目安
- 司法書士・行政書士:相続手続き全般(10-30万円)
- デジタル遺品整理業者:機器解析・データ復旧(5-20万円)
- 税理士:デジタル資産の相続税評価(時間当たり1-3万円)
まとめ|サブスク契約のデジタル遺品対策
サブスク契約は、家族が気づかないまま支払いが継続するリスクがあります。相続放棄をしても解約手続きは別途必要で、金銭的損失だけでなくデジタルデータの喪失リスクも深刻です。
今すぐできる対策
- 現在のサブスク契約をリストアップ
- 家族とアカウント情報を共有
- 解約手続き方法を事前調査
- 定期的な見直しを習慣化
デジタル終活は継続的な取り組みです。まずはサブスクの棚卸しから始めて、段階的に対策を進めていきましょう。
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