おひとりさまは老後にいくら必要?平均支出と年金額からわかる貯蓄の目安

おひとりさまは老後にいくら必要?平均支出と年金額からわかる貯蓄の目安

一人で老後を迎える場合、配偶者と支え合う世帯よりも金銭的・精神的な不安は大きくなりがちです。

この記事では、「おひとりさま」にとって本当に必要な老後資金の目安や、無理のない備え方、孤独に備えるお金の使い方などを網羅的に解説します。

なぜ「おひとりさま」の老後資金が今すぐ準備すべき重要課題なのか?

終活

ライフスタイルの多様化が背景にある

  • 結婚しないまま老後を迎える「生涯未婚率」の上昇
  • 配偶者との死別や離婚による単身化の増加
  • 子どもとの同居が難しくなる都市部での生活事情

「頼れる人がいない」現実に備える必要性

夫婦世帯とは異なり、おひとりさまは体調を崩すと生活が立ち行かなくなる可能性があります。自立した備えが必要です。

「おひとりさま」の老後資金|月15万円の生活で年180万円が目安

通帳

出典:総務省統計局『家計調査 年報(家計収支編)2024年(令和6年)結果の概要』によると、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の消費支出は149,286円、平均消費性向は122.9%となっています。

この結果から、生活費の平均はおよそ月15万円前後であることがわかります。

出典:(総務省統計局 家計調査2024年)

平均支出とシミュレーション

  • 食費:約3.7万円
  • 住居費:約1.3万円(持ち家前提)
  • 光熱・水道:約1.3万円
  • 保健医療:約1.6万円
  • 交通・通信:約1.3万円
  • その他生活費:約5.7万円

年金と生活費の差額

年金の種類 月額 年額 不足額(年) 22年間の必要額
国民年金のみ 6.8万円 82万円 98万円 約2,103万円
厚生年金あり 10.5万円 126万円 54万円 約1,129万円

生活レベル別の必要資金

生活レベル 月額 年金との差額 備考
節約生活 12万円 18万円〜66万円 外食控えめ、趣味は低予算
標準生活 15万円 54万円〜98万円 平均的な生活水準
ゆとり生活 20万円 114万円〜158万円 旅行・趣味を楽しむ

老後資金を確実に貯める3つの方法

手続き

方法1:公的年金の受給額を最大化する(まずは土台を底上げ)

年金は「増やせる余地」がある公的ベース資金です。受給開始前〜後にできる対策を順に進めると、毎月の不足額を確実に縮められます。

チェック1:ねんきんネットで記録・見込み額を確認(未納・未加入の有無、受給見込額、加給年金の該当など)。

チェック2:未納の追納・免除期間の扱い(追納の可否・加算金の有無を確認)。将来の年金額に直結します。

チェック3:60歳以降の任意加入(満額に届かない場合などは60~65歳で任意加入が可能)。

チェック4:付加年金(第1号被保険者・任意加入者は月400円上乗せで将来年金が増額)。

チェック5:繰下げ受給の検討(65歳以降、1か月あたり0.7%増。選択可能年齢が75歳までに拡大し、最大約84%増)※健康・就労・資産と税・社会保険料の影響を総合判断。

参考:日本年金機構|繰下げ制度改正(75歳まで選択可)
日本年金機構|任意加入制度
日本年金機構|付加保険料(月400円)

実行ステップ(3か月プラン)

  1. ねんきんネット登録 → 年金見込額と未納期間の洗い出し。
  2. 市区町村・年金事務所で任意加入や追納・付加年金の可否を確認・届出。
  3. 65歳以降の受給戦略(標準/部分繰下げ/就労併用)をメモに可視化。

方法2:新NISA・iDeCoで「税制優遇×長期積立」を仕組み化

インフレ・長寿化を踏まえると、現役期に“少額でも長く”積み立てる仕組みが重要です。税制優遇の強い制度を優先的に活用します。

新NISAつみたて投資枠(年120万円)+成長投資枠(年240万円)を併用可。非課税保有限度額は生涯1,800万円、非課税保有は無期限で再利用も可能。

iDeCo:掛金が全額所得控除、運用益非課税、受取時も控除あり。加入区分別の掛金上限は就業形態や企業年金の有無で異なるため、公式で最新上限を確認して設定。

参考:金融庁|NISA特設サイト(年間枠・生涯枠)
iDeCo【公式】(国民年金基金連合会)

積立設計のコツ

  • 先取り自動化:給料日翌日に自動で積立→「残ったら投資」をやめる。
  • リスクは年齢に合わせて:株式インデックス中心→定年接近で徐々に債券・現金比率を高める。
  • リバランスは年1回:上がりすぎた資産を売って目標配分に戻すだけ。
  • コスト最重視:信託報酬(年率)と売買コストが低い商品を軸に。

長期積立の目安(年利3%の例)

毎月積立額 10年後 20年後 30年後
1万円 約140万円 約325万円 約560万円
3万円 約420万円 約975万円 約1,680万円
5万円 約700万円 約1,625万円 約2,800万円

※概算。実際のリターンや税制は将来変動します。

方法3:固定費×変動費を分けて「恒常的な月5万円捻出」を狙う

支出の最適化は“確実なリターン”です。同水準の投資利回りを安定的に出すより難易度が低く、効果は永続します。

固定費(効果が長続き)から着手:通信(格安プランへ)、電気・ガス(プラン見直し)、保険(掛け捨て・過不足の是正)、サブスク整理、住居(更新タイミングで交渉・ダウンサイジング)。

変動費は「ルール化」:食費は週次の予算封筒方式、日用品は月1回まとめ買い、外食の上限回数を決めるなど。

月5万円削減のロードマップ(90日)

  1. 1か月目:固定費の見直し(通信−3,000円、保険−6,000円、電気・ガス−2,000円、サブスク−2,000円 など)
  2. 2か月目:変動費の仕組み化(食費ルール化−8,000円、外食頻度調整−5,000円、移動最適化−3,000円 など)
  3. 3か月目:自動化と再投資(浮いた分を新NISA/iDeCoの自動積立に全額振替

副収入で下支え(リスク分散)

  • 就労+年金の併用(在職中の社会保険・税の影響を確認)。
  • 資格・経験のスポットワーク化(月3万円の副収入で年36万円=不足補填の強力な柱)。

家計の見える化テンプレ(毎月更新)

  • ①固定費一覧(名目/金額/見直し先/更新月)
  • ②積立一覧(制度/毎月額/年目標/口座)
  • ③老後不足額の進捗(累計準備額/目標比/次の一手)

よくある質問|おひとりさまの老後資金の疑問を解消

Q1. 老後資金は本当に2,000万円も必要ですか?

「老後2,000万円問題」は、金融庁が発表した報告書で話題になりましたが、
これは夫婦世帯をモデルとした平均値です。

おひとりさまの場合、年金受給額や生活費が異なるため、
必要資金は1,000万〜2,000万円程度が目安といわれています。
生活費が月15万円なら、22年間で約1,980万円。
つまり「2,000万円問題」はおひとりさまにもほぼ該当します。

重要なのは「金額」ではなく、自分の支出に合わせて計画を立てることです。
生活スタイル・住居・医療費を考慮して、現実的な目標額を算出しましょう。

Q2. 賃貸暮らしの場合、いくら多く準備すべき?

持ち家前提の平均生活費は月約15万円ですが、
賃貸の場合は家賃5〜8万円が上乗せされます。

つまり、年間で約60万〜100万円、
老後22年間で見ると1,300万〜2,000万円の追加資金が必要になります。

「高齢者歓迎物件」や「シニア向け住宅」などを早めに検討し、
老後に安心して住める住環境を確保しておくことが大切です。

Q3. 年金だけで暮らすのは不可能ですか?

国民年金のみの受給額は月約6.8万円
厚生年金でも平均10.5万円程度となっており、
総務省の家計調査による生活費(約15万円)には届きません。

つまり、多くの人にとって年金だけでは赤字になります。
年金に加えて貯蓄・資産運用・副収入を組み合わせることが現実的です。

特にiDeCo(個人型確定拠出年金)つみたてNISAは税制優遇があり、
長期的に安定した老後資金づくりに役立ちます。

Q4. 老後に孤独にならないための対策は?

おひとりさまにとって、経済面だけでなく精神的な安心も大切です。

地域包括支援センターやシルバー人材センター、自治体の見守りサービスなどを活用すると、
緊急時のサポート体制を整えられます。

また、近年は終活サポート死後事務委任契約を利用する人も増加。
「お金で安心を買う」という考え方で、孤独の不安を減らすことができます。

さらに、趣味やボランティアを通じて社会とのつながりを維持することも、
長期的な心の支えになります。

まとめ|まずは「自分の老後」を見える化しよう

  • 平均的な必要額を把握する
  • 自分の生活スタイルに合った収支を確認する
  • 制度やサービスを活用して”頼れる仕組み”をつくる

今すぐ行動すれば、安心できる老後は必ず実現できます。