おひとりさまが老後を安心して迎えるためには、早めの終活がカギになります。
家族に頼れないからこそ、自分の希望や意思を明確にし、信頼できる人や制度に備えておくことが重要です。
この記事では、おひとりさま終活で取り組むべきことや活用できる制度、必要な費用の目安まで、分かりやすく解説していきます。
おひとりさまの終活とは
おひとりさまとは、独身で配偶者がいない・子どもがいないなど、身近に頼れる家族がいない方を指します。
必ずしも生涯独身に限らず、
- 配偶者を亡くした方や子どもがいない夫婦
- 家族や親族と関係が希薄になっている方
上記のような方も、おひとりさまとして終活を考えるケースが多く見られます。
家族がいないことで、介護・緊急入院・葬儀・遺品整理などを誰に頼むのか不透明になるのを避けるため、周囲との関係性を再確認しながら、自分の意志で備えを整えておくことが大切です。
おひとりさまが早くから終活を行うことで、孤立せず安心して暮らせる土台をつくることができます。
おひとりさま終活のメリット
おひとりさまにとって終活を行うことは、自分の意志で人生の最期を整えられるという大きなメリットがあります。
老後の安心感を得られる
終活を行うことで、「将来どうなるか分からない」という漠然とした不安を減らすことに繋がります。
特におひとりさまは、自分に何かあったときに代わりに判断してくれる人が必要です。
事前に医療や介護、財産の管理について明確にしておくことで、希望しない人に財産が渡ってしまうことを防げるほか、自分らしい葬儀や埋葬の形を確実に実現できます。
周囲の人に手間や迷惑をかけないためにも、自分の意志を早めに整えておくことは大きな意味があります。
孤独死のリスクを減らせる
終活を通して定期的な見守りや信頼できる第三者とのつながりを作っておくことで、誰にも気づかれずに亡くなるといった不安を軽減できます。
自分の体調や状況に異変があった場合にも、早期に対応してもらえる体制が整うため、精神的な安心感にもつながります。
第三者へ手続きを託しやすくなる
死後の手続きや介護・医療の場面で自分に代わって動いてくれる人を明確にできることも終活の大きなメリットです。
契約や制度を利用することで、法的に権限を持った人へ託す準備が可能となり、トラブルや手続きの遅れを防ぐことができます。
身近な人がいない場合でも、行政書士や司法書士などの専門家に託すことができるため、おひとりさまでもしっかり備えることができます。
老後の不安をなくすために、おひとりさま終活でやるべきこと8選
1. エンディングノートを記入する
エンディングノートは、医療・介護・葬儀・相続などに関する自分の意向を自由に記載できるノートです。
法的な効力はないものの、家族や支援者にとっては大きな判断材料となり、特におひとりさまにとっては、自分の希望を明確に伝える手段として非常に重要です。
誰に何を託すか、どこに保管するかをしっかり決めておくことも忘れずに。
まずは書ける部分から書き始めることが、終活の第一歩になります。
2. 財産・契約を整理する
財産や契約関係を整理しておくことは、相続や死後の事務処理をスムーズに進めるために欠かせません。
預金口座や保険、不動産、年金など、所有している資産や契約をリスト化しておきましょう。
紙でもデジタルでも良いので見える形で借入金やクレジットカード、サブスクリプションなどの負債や定期契約も整理対象に含めておくと安心です。
管理情報は定期的に見直し、変更点があればすぐに更新しましょう。
3. 医療・介護の希望をまとめておく
自分が病気になったとき、どのような医療を受けたいか、介護はどのように行ってほしいかを明確にしておくことも終活の大切な一部です。
延命治療の希望や、最期の場所(自宅・病院・施設)なども書き留めておきましょう。
事前にかかりつけ医や地域包括支援センターに相談しておくことで、現実的なプランを立てやすくなります。
将来の判断を他人に委ねるのではなく、自分の意志として残しておくことが重要です。
4. 遺言書を作成する
法的に有効な遺言書を作成することで、死後の相続トラブルを防ぎ、自分の財産を希望通りに分配することが可能になります。
おひとりさまにとっては特に、財産の行き先を明確にする手段として必要不可欠です。
遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があり、後者のほうが法的なトラブルに強く、安全性が高いと言われています。
作成後は保管場所を明示し、信頼できる人に存在を伝えておくことも重要です。
5. 生前整理・断捨離をする
生前整理とは、自分が元気なうちに持ち物や財産、人間関係を見直し、必要なもの・不要なものを整理しておくことです。
断捨離は、物理的な整理だけでなく、気持ちや暮らしの優先順位を再確認することにもつながります。
処分に困るものは、リサイクルや譲渡、業者への依頼などの方法も考えてみましょう。
また、現代ではSNSやネットバンク、クラウド保存の写真や書類など「デジタル遺品」も増えています。
万が一の際に備え、アカウントやパスワード、利用サービスの一覧を残しておくことが重要です。
6. 死後事務委任契約・任意後見契約を検討する
死後事務委任契約とは、自分の死後に必要となる手続き(葬儀・納骨・公共料金の解約など)を、生前に第三者に託すための契約です。
他にも任意後見契約は、自分の判断能力が落ちた際に備え、信頼できる人に財産管理や生活支援を任せる契約です。
将来に備え早めの契約が勧められますが、いずれの契約も弁護士・行政書士などの専門家に相談して進めると安心です。
7. 信頼できる相談先・専門家とつながっておく
終活はひとりで抱え込まず、専門家や支援機関と連携しながら進めることが成功のカギです。
行政書士・司法書士・社会福祉士など、分野ごとのプロに相談することで、具体的かつ現実的な対応ができます。
また、地域包括支援センターや市区町村の高齢者窓口など、無料で相談できる場所も活用しましょう。
複数の視点を持つことが、より安心感のある終活につながります。
8. 身元保証・見守りサービスの検討
高齢になると、入院や施設入所の際に「身元保証人」が求められることがあります。
おひとりさまの場合、保証人になってくれる人がいないことも多く、あらかじめ民間の保証サービスや信頼できる専門機関を検討しておくと安心です。
また、見守りサービスや訪問支援を利用することで、孤独死リスクの低減や定期的な安否確認が可能になります。
特に一人暮らしの高齢者には、日常的な安心感につながる備えとなります。
おひとりさまの終活で活用できる制度
おひとりさまが安心して老後を過ごし、亡くなった後の不安も軽減するためには、各種制度の活用が重要です。
ここでは、特に活用されやすい5つの制度について、その概要と利用のポイントを詳しく紹介します。
成年後見制度
判断能力が低下したときに備えて、財産管理や契約などを第三者に代行してもらう制度です。
家庭裁判所が選任する「成年後見人」が本人をサポートし、生活や財産の保護にあたります。
おひとりさまの場合、認知症や病気で判断が難しくなったときに代わりに対応してくれる親族がいないケースも多く、制度の活用によって法的な安心を確保できます。
注意点として、いったん始まると自由にやめられないため、「任意後見契約」との違いを理解しておくことも大切です。
項目 | 任意後見契約 | 成年後見制度 |
---|---|---|
開始のタイミング | 判断能力があるうちに契約し、後に発効 | 判断能力が不十分になった後に開始 |
手続きの主導者 | 本人 | 家族や関係者(申立て) |
後見人の選定 | 本人が指定 | 家庭裁判所が決定 |
契約の形 | 公正証書による契約 | 裁判所の審理・決定 |
柔軟性 | 高い(内容を自由に設定可能) | 制度上の制限あり |
家族信託制度
家族信託とは、自分の財産を信頼できる家族や知人に託し、あらかじめ定めたルールに従って運用・管理してもらう制度です。
民事信託とも呼ばれ、認知症対策や相続対策に活用されています。
遺言ではできない柔軟な財産管理が可能で、たとえば「自分が亡くなった後は妹に、その後は甥に継承」といった複雑な意思も反映できます。
おひとりさまで信頼できる人がいる場合は、制度を活用することで、安心して財産を託す仕組みを整えることができます。
死後事務委任契約
死後事務委任契約とは、亡くなった後の葬儀、納骨、役所手続き、住まいの解約などを、信頼できる人や専門家に託す契約です。
生前に公正証書などで取り交わします。
親族がいない、または負担をかけたくない場合に非常に有効で、死後の不安を軽減できます。行政書士・弁護士などに依頼するケースが一般的です。
この契約があることで、亡くなった後も希望通りに物事が進み、身元不明や手続き放置などのトラブルも回避できます。
財産管理等委任契約
判断能力があるうちから、財産管理や生活支援を信頼できる人に任せておける制度です。
たとえば入院中の支払い、税金の手続き、不動産の管理などを代行してもらうことができます。
任意後見契約と併用することで、元気なうちは委任契約でサポートを受け、将来的に判断能力が低下した際には後見制度に切り替える、といった柔軟な対応も可能です。
早めに準備しておくことで、急な病気や事故があっても安心して生活を継続できます。
遺言書
遺言書は、自分の財産を誰にどう渡すか、誰に何を託すかを法的に明示するための重要な書類です。
公正証書遺言で作成すれば、家庭裁判所の検認が不要でスムーズに執行されます。
おひとりさまの場合、法定相続人がいない・少ないケースもあり、遺産が国庫に納付されてしまうこともあります。
希望する人や団体に財産を託したい場合は、遺言書の作成が必須です。
遺言執行者を決めておくことで、手続きが円滑に進みます。
終活にかかる費用の目安
終活にはさまざまな準備が必要となりますが、内容によってかかる費用は大きく異なります。
ここでは、主な準備ごとの費用の目安を詳しく紹介します。
法的手続きにかかる費用
- 遺言書作成(公正証書):5万〜10万円程度。公証役場での作成が安心ですが、証人費用も含まれることがあります
- 死後事務委任契約:5万〜30万円程度。委任する範囲によって報酬は大きく変わります。
- 成年後見制度の報酬:2万〜6万円/月程度。報酬額は後見人の業務量や地域によって異なります。
- 財産管理等委任契約<:月1〜3万円程度が相場です。委任する内容によって変動します。
葬儀・供養関連の費用
- 永代供養墓の費用:20万〜50万円程度。納骨場所や宗教形式によって幅があります。
- 直葬・家族葬:15万〜40万円程度が目安。一般葬よりも費用を抑えることができます。
専門家への相談費用
- 行政書士・司法書士・弁護士:1時間5,000円〜1万円程度。初回相談は無料の場合もあります。
その他の費用
- 見守りサービスの利用料:月額1,000円〜数千円程度。訪問型・センサー型などで料金は異なります。
- 身元保証サービス:契約内容により10万円〜50万円程度の一時金がかかることも。
- エンディングノートの購入費用:市販品で1,000円前後。無料テンプレートも活用できます。
終活の費用は、自分に必要な準備や選ぶサービスの種類によって大きく変動します。
まずは必要最低限のことから始め、少しずつ整えていくことが無理のない進め方です。
まとめ
終活は「書く」「整理する」「誰かに託す」の3ステップ。
今できることから無理なく始めて、将来への安心を手に入れましょう。
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