大切な家族を失った時、残された家族の生活を支える重要な制度が「遺族年金」です。
遺族年金は、公的年金制度のひとつであり、亡くなった方がこれまで納めていた年金保険料に基づいて、一定の条件を満たす遺族に対して給付されます。
この記事では、遺族年金の基本的な仕組みから申請方法、受給金額の目安までを詳しく解説します。
目次
遺族年金とは?
遺族年金とは、家計の中心となる方が亡くなったときに、残された家族の生活を支えるために支給される公的年金です。
生計を一にしていた家族(=同居または経済的に支え合っていた関係)に対して、一定の条件のもと国が年金を支給する仕組みです。
- 申請から受給開始まで通常2~3か月程度
- 年金は毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の6回に分けて支給
- 受給権は死亡の翌日から発生
参考:日本年金機構「遺族年金」
遺族年金の種類と対象者
項目 | 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 | 寡婦年金 | 死亡一時金 |
---|---|---|---|---|
主な対象 | 国民年金の被保険者(自営業・無職等を含む) | 厚生年金の被保険者(会社員等) | 国民年金第1号被保険者だった夫を亡くした妻 | 国民年金の保険料納付済期間が3年以上で年金未受給のまま死亡 |
受給対象者 | 子のある配偶者 / 子(18歳到達年度末まで、または20歳未満で障害1・2級) | 配偶者・子 → 父母 → 孫 → 祖父母(優先順位あり) | 子のない妻(婚姻期間等の要件あり) | 遺族(配偶者・子・父母等の順位あり) |
主な受給要件 | 被保険者の保険料納付要件(原則:加入期間の3分の2以上納付 等)を満たすこと | 生計維持関係(同一生計) ※2025年改正:子のいない20〜50代世帯は「収入要件」撤廃予定 |
老齢基礎年金の受給資格期間を満たす夫の納付歴 など | 保険料納付済期間3年以上/寡婦年金との併給不可 |
受給期間・開始 | 子が18歳到達年度末まで(該当子がいる間) | 受給権発生は死亡の翌日。条件を満たす限り継続 | 60歳〜65歳まで | 一度きりの支給 |
支給額の目安 | 年額 831,700円 + 子の加算(第1・2子 各239,300円/第3子以降 各79,800円) | 亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3 を基本に算定 | 老齢基礎年金額の4分の3 | 12万円〜32万円(納付月数により変動) |
支給時期 | 偶数月(2・4・6・8・10・12月)にそれぞれ前月分までを支給 | |||
申請窓口 | 市区町村(国民年金窓口) | 年金事務所 | 市区町村(国民年金窓口) | 市区町村(国民年金窓口) |
注意点 | 子がいない配偶者は対象外 | 受給順位と生計維持の確認が必要 | 死亡一時金とは併給不可 | 寡婦年金とは併給不可 |
注1:2015年10月以降、公務員は厚生年金に統合。旧「遺族共済年金」は経過措置の扱い。 注2:申請期限は死亡の翌日から5年以内。受給権は死亡の翌日に発生。 注3:金額は2025年度の水準。最新の数値は日本年金機構・厚生労働省の公表で確認してください。 |
遺族基礎年金の対象と条件
遺族基礎年金は、国民年金加入者が亡くなった場合に支給されます。
受給対象者:
- 18歳未満の子ども(高校卒業年度の3月31日まで)がいる配偶者
- 18歳未満の子ども
- 20歳未満で障害等級1級・2級の子ども
保険料納付要件:
- 被保険者期間の3分の2以上の期間で保険料を納付済み
- 死亡日の前々月までの1年間に保険料の滞納がない
遺族厚生年金の対象と条件
遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者が亡くなった場合に支給されます。
受給対象者(優先順位あり):
- 配偶者または子ども
- 父母
- 孫
- 祖父母
生計維持要件:
- 同一生計要件:同居または別居でも仕送り、健康保険の扶養など
- 収入要件:前年収入が850万円未満、または所得が655万5千円未満
2025年改正情報:
2025年の改正では、20代~50代の子のいない世帯に関して、2要件のうち「収入要件」が撤廃される予定です。これにより高所得の配偶者でも受給しやすくなります。
寡婦年金と死亡一時金
- 寡婦年金:国民年金第1号被保険者だった夫を亡くした妻が対象。60歳から65歳まで受給可能。老齢基礎年金の4分の3相当額。
- 死亡一時金:保険料納付済期間が3年以上で年金を受給せずに亡くなった場合に支給。金額は12万円~32万円。
注意:これらの制度は併給できないため、最も有利な制度を選択する必要があります。
受給額の目安と計算例【2025年度最新】
2025年度の支給額
- 遺族基礎年金:年額831,700円(月額69,308円)
- 加算額:第1子・第2子 各239,300円、第3子以降 各79,800円
具体的な計算例
ケース1:国民年金加入者(自営業)の夫が死亡、妻と子ども2人の場合
- 遺族基礎年金:831,700円
- 子の加算:239,300円 × 2人 = 478,600円
- 年間合計:約131万円
ケース2:厚生年金加入者(会社員、年収500万円、勤続20年)の夫が死亡、妻と子ども2人の場合
- 遺族基礎年金:約131万円
- 遺族厚生年金:約100万円
- 年間合計:約231万円
専門用語解説
標準報酬月額:厚生年金保険料の計算基準となる月収額(4月~6月の給与平均を基に決定)
他制度との関係
- 生命保険との併用:遺族年金と併用可能。遺族年金は非課税、生命保険金は相続税の対象(500万円×法定相続人数まで非課税)。
- 企業の弔慰金:給与の6か月分程度が一般的。遺族年金とは別に受給可能。
- 税金の扱い:遺族年金は全額非課税。確定申告の必要なし。
遺族年金の申請手続きと必要書類
申請の流れと期限
- 申請期限:死亡の翌日から5年以内(時効により受給権が消滅するため注意)
- 申請窓口:
・国民年金→市区町村役場の国民年金担当窓口
・厚生年金→年金事務所 - 申請から受給まで:通常2~3か月
必要書類一覧(チェックリスト)
- 基本書類:
・年金請求書(窓口で配布)
・年金手帳または基礎年金番号通知書
・死亡診断書のコピー
・住民票の除票(亡くなった方)
・世帯全員の住民票(請求者)
・戸籍謄本(死亡記載のあるもの) - 収入・所得関係:
・所得証明書または課税証明書
・非課税証明書(収入がない場合) - その他(該当者のみ):
・子どもの在学証明書(18歳以上20歳未満の場合)
・障害者手帳のコピー(障害のある子どもがいる場合)
・預金通帳の写し
・印鑑(認印可)
注意:自治体により必要書類が異なる場合があるため、必ず事前に確認してください。
世帯別の注意点
- 共働き世帯:夫婦それぞれの年金加入状況を確認。2025年改正で高所得配偶者も受給しやすくなる予定。
- シングル世帯:元配偶者は原則対象外。ただし、子どもを監護している場合は例外的に申請代理人となる可能性あり。
- 三世代同居:生計維持関係の証明が必要。経済的扶養関係がない場合は対象外。
よくある質問(FAQ)
Q1. 遺族年金は誰でも受け取れますか?
いいえ。亡くなった方が国民年金や厚生年金に加入していて、保険料納付要件を満たしている必要があります。さらに、遺族側にも「子の有無」「生計維持関係」など条件があります。
Q2. 遺族年金と生命保険は両方もらえますか?
はい、併用可能です。遺族年金は非課税ですが、生命保険金は相続税の対象です(500万円×法定相続人の数までは非課税枠あり)。
Q3. 高収入でも遺族年金は受け取れますか?
2025年改正により、子のいない20〜50代世帯では収入要件が撤廃される予定です。これにより高所得の配偶者でも受給しやすくなります。
Q4. 申請期限はありますか?
申請期限は死亡の翌日から5年以内です。時効を過ぎると受給できなくなるため、早めの手続きが必要です。
まとめ|遺族年金制度を理解して、もしもの備えを
遺族年金は、家族を失った後の生活を支える重要な制度です。2025年の制度改正により、特に共働き世帯では受給しやすくなる面もあります。
押さえておくべき重要ポイント:
- 申請期限は死亡の翌日から5年以内
- 2025年度の遺族基礎年金は年額83万円+子の加算
- 高所得の配偶者も2025年改正で受給しやすくなる予定
- 税金はかからず、他の制度との併用も可能
制度の種類や受給条件を正しく理解し、必要な書類や申請期限を把握しておくことで、いざというときに慌てず対応できます。チェックリストや相談窓口も積極的に活用し、ご自身の状況を事前に確認しておきましょう。

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