「遺産分割協議書って、必ず作らないといけないの?」
相続について調べ始めたとき、多くの方が最初に悩むポイントです。
結論から言うと、遺産分割協議書の作成は法律上の義務ではありません。ただし、相続の内容や手続きによっては、実務上ほぼ必須になるケースがあります。
この記事では、「遺産分割協議書が必要かどうか」の判断の分かれ目を軸に、どんな場合に作成が必要になり、どんな場合に不要なのかを、具体例を交えて整理します。
目次
遺産分割協議書は必ず必要?【結論】

遺産分割協議書について調べていると、「必ず作らなければならない」と書かれている情報と、「作らなくてもいい」と書かれている情報が混在していて、混乱しやすいポイントです。
まずは、法律上の位置づけと、実務上の扱いを分けて整理しておきましょう。
法律上は「作成義務」はない
遺産分割協議書は、民法で「必ず作成しなければならない」と定められている書類ではありません。
相続人全員が合意していれば、理論上は遺産分割そのものは成立します。そのため、「作らなかったから違法になる」というものではありません。
ただし実務では「求められる場面」がある
一方で、相続の現場では遺産分割協議書の提示を求められるケースが多く存在します。
理由はシンプルで、法務局や金融機関など、第三者が相続人同士の合意内容を確認する必要があるからです。
「義務ではないが、実際には必要になることが多い」このズレこそが、多くの人が迷う原因になっています。
遺産分割協議書が必要かどうかの判断軸

遺産分割協議書が必要かどうかは、ケースを丸暗記するよりも、「どんな状況なら必要になるのか」という判断の考え方を知っておく方が役立ちます。
ここでは、多くの相続手続きに共通する判断の分かれ目を、3つの視点から整理します。
判断軸① 相続手続きに第三者が関わるか
遺産分割協議書が必要になる大きな理由の一つが、法務局・金融機関などの第三者が手続きを確認するかどうかです。
第三者は、相続人同士の口約束を確認できません。そのため、「誰が、どの財産を取得するのか」を示す書面が求められます。
判断軸② 名義変更や解約などの手続きがあるか
相続では、財産を「分ける」だけでなく、名義変更や解約といった実務的な手続きが発生することがあります。
こうした手続きがある場合、遺産分割協議書は重要な判断材料になります。
判断軸③ 相続人が複数いて分け方を決める必要があるか
相続人が1人であれば、分割の合意そのものが不要です。
一方、相続人が複数いる場合は、「全員が合意していること」を示す証拠が必要になります。その役割を果たすのが遺産分割協議書です。
遺産分割協議書が必要になる代表的なケース
次に、実際の相続手続きの中で、遺産分割協議書が求められることが多い代表的なケースを紹介します。
「自分の状況が当てはまるかどうか」を確認しながら読み進めてみてください。
| 代表ケース | 遺産分割協議書が必要になりやすい理由 | ポイント |
|---|---|---|
| 不動産の名義変更(相続登記) | 法務局で「誰が取得するか」を第三者が確認する必要があるため | 遺産分割協議書または遺言書の提出を求められることが多い |
| 銀行預金の解約・名義変更 | 金融機関が相続内容と取得者を確認する必要があるため | 遺言書がない場合、協議書の提示を求められるケースが多い |
| 相続人が複数で分け方を決める | 相続人全員の合意を「書面」で証明する必要があるため | 将来のトラブル防止にもなるので作成が推奨されやすい |
| 証券会社で株式・投資信託などの名義変更 | 証券会社が取得者を確認する必要があるため | 手続きに必要な書類は各社で異なるので事前確認が必要 |
| 自動車の名義変更 | 名義人変更の根拠として合意内容の確認が必要になる場合があるため | 地域や手続き先により必要書類が異なることがある |
不動産の名義変更をする場合
被相続人名義の不動産を相続する場合、法務局で相続登記の申請が必要になります。
この際、遺産分割協議書または遺言書の提出を求められるのが一般的です。詳しい案内は法務局(法務省)のページをご確認ください。
なお、相続登記は令和6年4月1日から義務化されており、相続(遺言を含む)により不動産の所有権を取得した相続人は、原則として「相続の開始を知り、かつ、所有権を取得したことを知った日」から3年以内に申請する必要があります。
正当な理由なく義務を怠った場合は、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
銀行預金の解約・名義変更をする場合
銀行預金の相続手続きでは、金融機関が相続内容を確認します。
遺言書がない場合は、遺産分割協議書の提出を求められるケースが多いため、必要書類を事前に確認しておくと安心です。
相続人が複数いて分割内容を決める場合
相続人が複数いる場合、分割内容について全員の合意が必要です。
その合意を「後から証明できる形」にするため、遺産分割協議書が用いられます。将来のトラブル防止という意味でも、このケースでは作成が推奨されます。
遺産分割協議書が不要なケースもある
すべての相続で、必ず遺産分割協議書が必要になるわけではありません。
条件によっては、作成しなくても手続きを進められるケースもあります。ここでは代表的な例を紹介します。
| ケース | 遺産分割協議書が不要になりやすい理由 | 注意点 |
|---|---|---|
| 相続人が1人しかいない | 分割の話し合い自体が不要なため | 名義変更などの手続きは別途必要 |
| 有効な遺言書がある | 遺言内容に従って相続できるため | 遺言書の種類によって必要書類が変わる |
| 名義変更・解約などの手続きが不要 | 第三者による確認が発生しないため | 後から手続きが必要になる財産が見つかることもある |
| 相続財産がほとんど存在しない | 分割や取得の対象がないため | 負債や未把握の財産がないかは要確認 |
相続人が1人しかいない場合
法定相続人が1人のみの場合、分割協議そのものが不要です。
この場合、遺産分割協議書は通常求められません。
有効な遺言書がある場合
被相続人が有効な遺言書を残しており、その内容どおりに相続する場合は、遺産分割協議書が不要になるケースがあります。
ただし、手続き先や遺言書の種類(公正証書遺言か、自筆証書遺言か等)によって必要書類が変わることがあるため、提出先の案内を確認しましょう。
名義変更や解約などの手続きが不要な場合
名義変更や解約といった第三者が関与する手続きが発生しない場合、協議書を求められないこともあります。
ただし、後から手続きが必要になる財産が見つかることもあるため、財産の全体像は早めに確認しておくことが大切です。
遺産分割協議書が必要かどうかを判断するフロー
ここまで紹介した内容をもとに、遺産分割協議書が必要かどうかを一目で判断できるフローにまとめました。
ご自身の状況に当てはめて確認してみてください。

※一般的な判断目安です。手続き内容や提出先によって、必要書類が異なる場合があります。
よくある誤解と注意点
遺産分割協議書については、「不要と聞いたから作らなかった」「とりあえず作れば安心」といった誤解も多く見られます。
ここでは、実務でつまずきやすいポイントや注意点を整理します。
「不要」=「何もしなくていい」ではない
遺産分割協議書が不要な場合でも、相続手続きそのものが不要になるわけではありません。
戸籍の取得、各種届出、手続き先への提出など、別の手続きが必要になることは多くあります。
作成するなら「書き方ミス」で手続きが止まることがある
遺産分割協議書を作成する場合でも、住所・氏名の表記や財産の特定方法を誤ると、手続きが進まない原因になります。
詳しい書き方や注意点(よくある間違いの具体例)は、別記事で詳しく解説しています。
専門家に相談すべきケース
相続の内容が複雑な場合や、相続人同士で意見がまとまらない場合は、無理に自分だけで進めない方がよいケースもあります。
ここでは、専門家への相談を検討した方がよい代表的な状況を紹介します。
- 相続人間で意見が割れている(話し合いが進まない)
- 不動産が複数ある、共有名義が絡むなど財産構成が複雑
- 相続税の申告が必要になりそうで、財産評価や分け方に迷う
状況によっては、司法書士・税理士・弁護士など、相談先が変わります。迷う場合は、まず「何で困っているか」を整理してから相談するのがおすすめです。
まとめ|遺産分割協議書が必要かどうかは「手続き内容」で決まる
遺産分割協議書は法律上の義務ではありません。
しかし、不動産や預金などの相続手続きが関わる場合には、実務上ほぼ必要になることが多い書類です。
「必要かどうか」を判断するときは、次の3点を基準に考えると整理しやすくなります。
- 第三者(法務局・金融機関など)が関与する手続きがあるか
- 名義変更や解約などの手続きが必要か
- 相続人が複数いて分け方を決める必要があるか
まずはご自身の状況に当てはめて整理し、必要に応じて遺産分割協議書の準備を進めていきましょう。
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