墓じまいとは、現在のお墓を解体・撤去して更地にし、遺骨を別の場所へ移す手続きです。
少子化により継承者がいない、遠方でお参りが困難などの理由で選択する方が増えています。
この記事では、墓じまいの正しい方法を9つのステップで詳しく解説します。
目次
墓じまいの9つのステップ
墓じまいは複数の手続きが必要な複雑なプロセスです。全体の期間は3〜6ヶ月程度を見込んでおきましょう。以下の9ステップに沿って進めることで、スムーズに完了できます。
ステップ1:家族・親族との相談と合意形成
墓じまいは感情が絡むデリケートな問題のため、いきなり行動に移すのは危険です。まずは親族全員と納得できるまで話し合いましょう。
反対意見が出ることもあるため、説明資料を用意しておき、可能であれば同意書を作成し署名をもらっておくと後のトラブル防止になります
ステップ2:現在の墓地状況の確認
墓じまいを進める前に、現在のお墓の状況を正確に把握する必要があります。
確認すべき項目:
- 永代使用権の名義人
- 墓地の契約条件
- 埋葬されている人数と関係
- 墓石の大きさと材質
ステップ3:墓地管理者への連絡と承諾取得
現在の墓地の管理者(寺院や霊園)に墓じまいの意思を伝えます。無断で撤去することはできません。
必要な手続き:
- 撤去承諾書の取得
- 埋葬証明書の発行依頼
- 永代使用権の返還手続き
- 離檀料(寺院の場合)の確認
ステップ4:新しい納骨先の決定と契約
遺骨の移転先を決めて契約を完了させます。改葬許可申請には受入証明書が必要なため、このステップは早めに完了させましょう。
主な選択肢:
- 永代供養墓:管理費不要、合同で供養(10〜30万円)
- 樹木葬:自然志向の人に人気(20〜70万円)
- 納骨堂:都市部中心、屋内保管(20〜100万円)
- 新しいお墓:従来型の墓石(100〜300万円)
ステップ5:必要書類の収集
改葬許可申請に必要な書類を準備します。自治体により様式が異なるため、事前に確認しましょう。
必要書類一覧:
- 改葬許可申請書(現在の墓地がある市区町村で取得)
- 埋葬証明書(現在の墓地管理者が発行)
- 受入証明書(新しい納骨先が発行)
- 申請者の身分証明書
- 戸籍謄本(場合により必要)
ステップ6:改葬許可証の取得
市区町村の窓口で「改葬許可証」の発行を受けます。この許可証がないと遺骨を移すことができません。
申請の流れ:
- 現在の墓地がある市区町村の窓口へ
- 必要書類を提出
- 審査(通常1〜2週間)
- 改葬許可証の発行
ステップ7:閉眼供養(魂抜き)の実施
墓石から魂を抜く宗教的な儀式を行います。宗派により内容は異なりますが、多くの場合は僧侶にお願いします。
閉眼供養のポイント:
- お布施の相場:2万〜5万円
- 日程は墓石撤去の前に実施
- 家族・親族で参列するのが一般的
ステップ8:遺骨の取り出しと墓石撤去
石材店に依頼して遺骨を取り出し、墓石を撤去します。重機を使用する場合は、墓地へのアクセスや周辺への配慮が必要です。
作業の流れ:
- 遺骨の取り出し作業
- 墓石の解体・撤去
- 基礎部分の撤去
- 更地への復旧
- 現地確認
ステップ9:新しい納骨先での納骨
改葬許可証を持参して、新しい納骨先で納骨を行います。多くの場合、開眼供養も併せて実施します。
必要書類と取得方法
墓じまいでは複数の公的書類が必要です。書類不備で手続きが遅れないよう、早めに準備を始めましょう。
改葬許可申請書
- 取得場所:現在の墓地がある市区町村の窓口またはホームページ
- 費用:無料(自治体により手数料が必要な場合あり)
- 記入内容:申請者情報、現在の墓地情報、改葬先情報、埋葬者情報
埋葬証明書
- 発行者:現在の墓地管理者(寺院・霊園等)
- 費用:1通あたり300〜1,000円程度
- 内容:埋葬年月日、埋葬者氏名、申請者との続柄
受入証明書
- 発行者:新しい納骨先の管理者
- 費用:無料が一般的
- 必要なタイミング:改葬許可申請前に取得必須
墓じまいの費用相場と詳細内訳【2025年版】
墓じまいにかかる費用は、お墓の規模や立地、新しい納骨先により大きく異なります。全体で30〜150万円程度を見込んでおきましょう。
墓石撤去・更地化費用:10万〜40万円
- 基本撤去費用:8万〜25万円
- 重機使用料:立地により2万〜10万円追加
- 処分費:1万〜5万円
- 更地化作業:1万〜3万円
作業費は墓石の大きさ、立地条件(車両進入の可否)、使用する重機により変動します。
各種手続き費用:3万〜8万円
- 改葬許可申請:無料〜1,000円程度
- 各種証明書発行:1通300〜1,000円
- 行政書士依頼(必要時):3万〜5万円
供養関連費用:2万〜10万円
- 閉眼供養のお布施:2万〜5万円
- 開眼供養のお布施:2万〜5万円
- 離檀料(寺院の場合):0〜20万円
新しい納骨先の費用:5万〜250万円
- 永代供養墓:5万〜50万円
- 樹木葬:20万〜70万円
- 納骨堂:20万〜100万円
- 新規墓石建立:100万〜250万円
墓じまいでよくあるトラブルと対策
墓じまいでは、事前の調整不足が原因でトラブルになることがあります。以下のような例に注意して、予防策を講じましょう。
親族間の意見対立
よくある問題:「勝手に決めるな」「先祖に申し訳ない」と反発を受けるケース
対策:
- 時間をかけて丁寧に説明する
- 墓じまいの理由を文書で整理する
- 可能であれば同意書を作成する
- 高齢者には特に配慮した説明を心がける
墓地管理者との契約トラブル
よくある問題:永代使用権の名義や契約条件を確認しないまま進めて後に問題が発生
対策:
- 契約書類を事前に確認する
- 不明な点は書面で質問する
- 必要に応じて専門家(行政書士)に相談する
書類不備による手続き遅延
よくある問題:必要書類の準備不足で改葬許可が下りない
対策:
- 自治体に事前確認を行う
- 余裕を持ったスケジュールを組む
- 書類のコピーを複数部準備する
墓じまい後の遺骨の行き先と選択肢
遺骨の最終的な安置場所は、墓じまいにおける最も重要な判断ポイントです。家族の価値観や将来の管理方法を考慮して選択しましょう。
永代供養墓・合祀墓
永代供養墓は、寺院や霊園が永続的に管理・供養を行う墓所です。家族に代わって管理者が供養を続けるため、将来の心配がありません。
特徴:
- 管理費が不要で家族の負担が少ない
- 他の方と一緒に供養される
- 一度合祀されると個別の取り出しは不可
費用相場:5万〜30万円
納骨堂
納骨堂は屋内に設置された納骨施設で、都市部を中心に人気が高まっています。天候に左右されず、アクセスの良い立地が多いのが特徴です。
特徴:
- 都市部でもアクセスが良い
- 屋内で天候に左右されない
- 個別に管理される場合が多い
費用相場:20万〜100万円(年間管理費別途)
樹木葬
樹木葬は墓石の代わりに樹木を墓標とする新しい供養の形です。自然回帰を望む方や環境を重視する方に選ばれています。
特徴:
- 自然に還る形式で環境に優しい
- 墓石の代わりに樹木が墓標
- 個別型と合祀型がある
費用相場:20万〜70万円
散骨
散骨は遺骨を粉状にして海や山に散布する供養方法です。最も費用を抑えられる選択肢ですが、法的な規制があるため専門業者への依頼が必要です。
特徴:
- 粉骨して海や山に散布
- 法的規制があるため専門業者への依頼が必要
- 費用を最も抑えられる選択肢
費用相場:3万〜15万円
よくある質問(Q&A)
Q: 改葬と墓じまいの違いは何ですか?
A: 改葬は遺骨を別の場所へ移すことで、墓じまいは現在のお墓を撤去することです。多くの場合、墓じまいと改葬は同時に行われます。
Q: 墓じまいの期間はどのくらいかかりますか?
A: 親族との合意形成から完了まで、通常3〜6ヶ月程度です。書類準備や供養の日程調整に時間がかかることが多いです。
Q: 墓じまいの相談先はどこですか?
A: まずは現在の墓地管理者、市区町村役場、石材店が主な相談先になります。複雑な手続きが必要な場合は行政書士への相談も検討しましょう。
Q: 永代使用権は相続できますか?
A: はい、永代使用権は相続可能です。ただし、墓地により承継の手続きや条件が異なるため、管理者に確認が必要です。
Q: 離檀料を請求されましたが、支払う必要はありますか?
A: 離檀料に法的な義務はありませんが、これまでお世話になったお礼として支払うことが一般的です。金額に納得できない場合は話し合いで解決を図りましょう。
まとめ|計画的な準備と親族の合意が成功のカギ
墓じまいは、単なる撤去作業ではなく、「これからのお墓との関わり方」を見直す重要なライフイベントです。9つのステップを着実に進めることで、後悔のない墓じまいを実現できます。
成功のポイント:
- 親族間での十分な話し合いと合意形成
- 必要書類の早めの準備
- 信頼できる石材店や専門家との連携
- 余裕を持ったスケジュール設定
もし「何から始めればよいか分からない」と感じたら、まずは親族に相談することから始めてみましょう。慎重に進めることで、ご先祖様に感謝の気持ちを込めた、心のこもった墓じまいができるはずです。
チェックリスト
- □ 親族との合意形成完了
- □ 墓地管理者への連絡完了
- □ 新しい納骨先の決定・契約完了
- □ 必要書類の準備完了
- □ 改葬許可証の取得完了
- □ 閉眼供養の日程調整完了
- □ 石材店との契約・日程調整完了
- □ 撤去後の納骨日程調整完了