これからのお墓のあり方とは|時代とともに変わる供養のかたち

これからのお墓のあり方とは|時代とともに変わる供養のかたち

少子化・核家族化が進む今、「自分の死後、お墓はどうしたらよいのか」と悩む人が増えています。

墓じまい、永代供養、樹木葬、納骨堂──。選択肢が増えた一方で、「どれが正解かわからない」という声も多く聞かれます。

この記事では、新しいお墓のかたちを多角的に解説し、これからの供養について考えるヒントをお届けします。

少子高齢化と継承者不在が引き起こす「墓じまい」問題

お墓

戦後日本では「家」単位での墓地継承が常識でしたが、少子高齢化・都市部への人口集中により、その前提が崩れつつあります。

「跡継ぎがいない」「遠方で管理できない」などの理由から、お墓を持つことへの不安が高まっています。

実際、一般社団法人終活協議会の調査によると、墓じまいを検討する理由として最も多かったのは「跡継ぎがいない」(35.7%)でした。

さらに、墓じまい時に希望する供養方法としては「永代供養」が32.3%と最多で、樹木葬(6.6%)や納骨堂(9.3%)が続いています。
※出典:【2025年最新調査】墓じまいを考える理由1位は「跡継ぎがいない」 |終活ガイド資格者390人に聞いた意識調査

新しいお墓の形──時代に合わせた供養スタイル

お墓詣り

永代供養墓:継承者がいなくても安心できる仕組み

永代供養墓とは、寺院や霊園が契約に基づいて半永久的に供養・管理を続けるスタイルです。子どもや孫に負担をかけず、供養の心だけを残したいというニーズに応えます。

費用相場:

  • 合祀タイプ:10万円~30万円
  • 個別安置タイプ:30万円~80万円
  • 夫婦墓タイプ:50万円~150万円

メリット・デメリット:

  • ○ 継承者不要、管理費なしが多い
  • ○ 宗教・宗派不問が一般的
  • △ 一度合祀すると遺骨の取り出し不可
  • △ 個別供養期間は通常13年~33年

樹木葬:自然とともに眠る選択肢

近年人気を集めている樹木葬は、墓石ではなく木や花を墓標とする自然志向のスタイルです。宗教不問・管理費不要な霊園も多く、無宗教層や単身者に選ばれています。

全国のお墓購入者を対象とした調査によれば、購入されたお墓のうち 約48.5% が「樹木葬」 を選んでおり、一般墓は17.0%、納骨堂は16.1% との結果でした(鎌倉新書「第16回 お墓の消費者全国実態調査(2025年)」)。

費用相場:

  • 合祀タイプ:5万円~20万円
  • 個別区画タイプ:20万円~80万円
  • ガーデニングタイプ:30万円~100万円

都市部と地方での違い:

  • 都市部:ガーデニング型が主流、アクセス重視
  • 地方:里山型が多い、自然環境重視、費用が安価

納骨堂・自動搬送式:都市型供養のスタンダードに

納骨堂は屋内型の納骨施設で、都市部を中心に増加中です。駅チカや完全屋内の利便性が支持されています。専用カードで参拝ブースへ遺骨が自動搬送されるタイプなど、テクノロジーを活かした新しい形も登場しています。

費用相場:

  • ロッカー式:30万円~80万円
  • 仏壇式:50万円~150万円
  • 自動搬送式:80万円~300万円
  • 年間管理費:1万円~3万円

お墓選びで大切にしたい3つの視点

終活のメリット

1.「供養の継続性」より「想いを伝える方法」

お墓を選ぶとき、長く維持できるかどうか(継続性)も大切ですが、それ以上に重要なのは、故人を思う気持ちをどのように表現できるかという点です。

近年は、日々の暮らしの中で無理なく続けられ、心から故人に想いを伝えられる供養のスタイルに注目が集まっています。

たとえば、思い出の品や言葉を残す方法、家族だけの静かな祈りの時間など、形式にとらわれず、気持ちを形にする方法は人それぞれです。

自分たちにとって自然であたたかい供養の形を考えることが、お墓選びの第一歩です。

2.「場所より心」:故人とつながる手段としてのお墓

お墓とは単に「遺骨を納める場所」ではなく、「故人と心をつなぐ場」としての役割を持ちます。

近年は、お墓参りが難しい高齢者や、遠方に住む遺族の増加により、「場所」に縛られない供養の形が広がっています。

こうした背景をふまえると、「立地が便利かどうか」だけではなく、「自分や家族にとって、心から故人と向き合える形かどうか」が、お墓選びにおいてより大切になっているといえるでしょう。

3.家族と事前に話し合うことの重要性

どれだけ丁寧に準備を整えていても、故人の希望が家族に伝わっていなければ、その供養が本当に望まれた形になるとは限りません。

実際に、「どこに埋葬してほしいのか」「どの宗派で供養したいのか」「費用はどうするのか」といった情報が曖昧なまま残されたことで、遺された家族が困惑したり、意見の食い違いによってトラブルになるケースも多く見られます。

だからこそ、生前のうちに家族と話し合いをしておくことが何より重要です。

自分らしいお墓を選ぶためにできること

情報収集は「現地見学」「公式サイト」を活用

実際に見て感じることが、後悔のない選択につながります。

現地見学でチェックすべき点:

  • 施設の清掃状況・管理体制
  • スタッフの対応・説明の丁寧さ
  • 交通アクセス・駐車場の有無
  • 法要施設・休憩所の充実度
  • 他の利用者の年齢層・雰囲気

エンディングノートに希望を記す

供養の意志を明確に残しておくことで、家族にとっても判断がしやすくなります。

▼あわせて読みたい

お墓選びのチェックリスト

お墓選びのチェックリスト(確認観点と要点)
観点 確認ポイント
費用関連 初期費用+管理費の総額/追加料金(法要・刻字)/支払い方法(分割可否)
立地・アクセス 公共交通の便/駐車場有無・料金/家族の居住地からの距離
運営・管理体制 運営主体の信頼性/清掃・メンテ状況/スタッフの対応
契約内容 永代使用権の内容・期間/承継・改葬条件/キャンセル・返金規定

よくある質問(FAQ)

Q1. 墓じまいにはどのくらい費用がかかりますか?

墓じまいの費用は規模や立地によって異なりますが、一般的には30万~150万円程度が相場です。

内訳としては、墓石の撤去・整地費用(20~80万円)、離檀料(10~30万円)、新しい納骨先の費用(10~50万円)などが挙げられます。

詳細は事前に複数業者から見積もりを取るのがおすすめです。

Q2. 永代供養と納骨堂はどう違うの?

どちらも「継承者がいなくても供養が続く」点は共通していますが、永代供養墓は屋外型で寺院などが供養を行うのに対し、納骨堂は屋内型で参拝ブースや自動搬送システムがあるなど、都市型施設として人気です。

参拝のしやすさを重視するなら納骨堂、自然志向なら永代供養墓や樹木葬が向いています。

Q3. 跡継ぎがいない場合はどんな供養を選ぶべき?

跡継ぎがいない場合、永代供養墓や樹木葬、納骨堂などが主な選択肢です。

これらは継承者を必要とせず、寺院や霊園が契約に基づいて供養・管理を行ってくれるため、家族への負担を減らせます。

事前に費用と供養期間を確認し、自分の希望をエンディングノートに残しておくと安心です。

Q4. お墓を選ぶときに後悔しないためのポイントは?

現地見学を行い、清掃状況・スタッフの対応・アクセスの良さを自分の目で確認しましょう。

さらに、契約内容(永代使用権の期間や返金規定)を必ず確認することが重要です。

費用面だけでなく、「自分や家族が気持ちよく手を合わせられる場所かどうか」を基準に選ぶことが、後悔しないお墓選びのコツです。

まとめ|これからのお墓は「継がない」からこそ自由に選べる

「お墓は代々受け継ぐもの」という常識は過去のものとなりつつあります。費用や場所、継承の有無にとらわれず、自分に合った供養の形を選べる時代です。
形式よりも「想い」。
これからのお墓のあり方を、家族とともに話し合うことから始めてみませんか?