遺言書の自宅保管は危険?法的リスクと安全な保管方法を解説

遺言書の自宅保管は危険?法的リスクと安全な保管方法を専門家が解説

「遺言書は自宅で保管しても大丈夫?」そんな疑問を持つ方が増えています。

この記事では、自宅保管のメリット・リスク・注意点を整理し、安全に保管するための具体策を紹介します。

紛失や改ざんのリスク、法務局保管との違い、安全な保管方法までわかりやすく解説します。

自宅で遺言書を保管するのはアリ?ナシ?

遺言書の執筆

遺言書の自宅保管は法律上認められており、費用もかかりません。

ただし、遺言書の取り扱いには法律上の義務があります。

民法第1004条では、 「相続人は遅滞なく家庭裁判所に提出し、検認を請求しなければならない」ことが定められており、 勝手に開封した場合には5万円以下の過料が科される可能性があります。

つまり家庭裁判所での検認手続きが必須で、安全性や発見の確実性にも注意が必要です。

自宅で保管する際のリスクは?

紛失・改ざんリスク

遺言書が「見つからなかった」「書き換えられていた」などのトラブルは少なくありません。

地震や火災などで失われるケースもあり、安全な保管環境が欠かせません。

発見されず無効になるリスク

自宅保管の遺言書の約3割は発見されないまま相続が進むとも言われています。

遺言書の保管方法3つの選択肢

遺言書の保管には主に3つの方法があります。それぞれの特徴・メリット・注意点を比較しながら、自分に合った方法を選びましょう。

保管方法 主な仕組み・法的根拠 メリット リスク・注意点 手続き・費用の目安
① 自宅保管(自筆証書遺言) 遺言者本人が自筆で作成し、自ら保管する方法。民法で認められており、最も手軽に始められる。 ・費用がかからない
・いつでも作成・修正できる
・内容を完全に秘密にできる
・紛失・改ざん・災害による破損リスクが高い
・相続開始後に家庭裁判所での検認手続きが必須
・保管場所が不明だと無効になるおそれ
検認申立てに収入印紙800円+郵便代が必要。通知制度はなし。
② 法務局保管制度(自筆証書遺言) 「自筆証書遺言書保管制度」に基づき、本人が法務局に原本を預ける制度。検認が不要となる。 ・紛失・改ざんの心配がない
・検認不要で相続手続きがスムーズ
・全国の法務局で保管・閲覧確認が可能
・遺言内容の法的チェックは行われない
・遺言者本人が来庁して申請する必要あり
・様式(用紙・記載方法)に厳格な要件あり
保管手数料3,900円/通。事前予約が必要。
③ 公正証書遺言(公証役場で作成) 公証人が作成し、公文書として保管される遺言。法的効力が最も強く、検認は不要。 ・形式・内容の法的チェックが入るため安全
・改ざん・紛失のリスクがほぼない
・すぐに相続手続きに利用できる
・作成費用が数万円〜と高額
・証人2名の立会いが必要
・内容を秘密にしたい場合はやや不向き
費用は遺産額により変動(目安:数万円〜)。作成予約と打合せが必要。

それぞれの方法には一長一短があります。手軽さを重視するなら自宅保管、安全性を重視するなら法務局や公証役場を検討しましょう。

遺言書を安全に自宅保管するための対策

遺品整理

鍵付き金庫や貸金庫を利用

セキュリティが高い場所に保管し、紛失・改ざんを防止します。

信頼できる人に保管場所を伝える

  • 封筒に「遺言書在中・要検認手続き」と明記
  • 家族LINEなどで保管場所を共有

エンディングノートと一緒に保管

ノートに保管場所や検認の必要性を書いておくことで、確実に見つけてもらえます。

遺言書の自宅保管に関するよくある質問

Q1. 自宅で保管した遺言書はどこに置くのが安全ですか?

耐火性のある鍵付き金庫や、金融機関の貸金庫での保管がおすすめです。

押入れや引き出しなどに保管すると、火災や盗難のリスクが高まります。

また、信頼できる家族や専門家に保管場所を伝えておくことが重要です。

Q2. 家族が遺言書を見つけた場合、すぐに開封してもいいですか?

絶対に開封してはいけません。

民法第1004条により、相続人は遅滞なく家庭裁判所に提出し、検認を請求する義務があります。

勝手に開封すると5万円以下の過料が科されることがあります。

Q3. 法務局に預ける遺言書と公正証書遺言の違いは?

法務局保管制度は「自筆証書遺言」を安全に預けるための制度で、内容の法的チェックは行われません。

一方で、公正証書遺言は公証人が内容を確認し、公文書として保管するため、法的効力や信頼性が最も高い方式です。

Q4. どの方法が一番おすすめですか?

費用をかけずに手軽に始めたいなら自宅保管
確実性と安全性を重視するなら法務局保管制度公正証書遺言が適しています。

資産の規模や家族構成に応じて、専門家に相談して決めるのが安心です。

まとめ:自宅保管するなら「手続き理解」がカギ

  • 検認手続きの流れを理解し、家族に共有
  • 書式不備を防ぐテンプレートを活用
  • 費用・時間を考慮して保管方法を選ぶ

まずは無料テンプレートを活用して、今日からできる備えを始めましょう。