「生前贈与をやってみたいけど、手続きが複雑そうで不安…」
「税制改正で何が変わったの?今からでも間に合う?」
そんな疑問をお持ちの方へ。この記事では、生前贈与の基本的なやり方から2024年の最新税制改正への対応まで、初心者でも迷わず実践できるよう分かりやすく解説します。
目次
生前贈与とは?
生前贈与とは、生きている間に自分の財産を子や孫などに無償で譲り渡すことです。相続が発生する前に行うため、相続税対策や家族間トラブルの予防に活用されています。
相続との主な違い
項目 | 生前贈与 | 相続 |
---|---|---|
実施時期 | 生存中 | 死亡後 |
受取人 | 自由に選択可能 | 法定相続人 |
税金 | 贈与税 | 相続税 |
効果 | 即座に財産移転 | 死亡時に移転 |
生前贈与を行う3つの目的
- 相続税の負担軽減:計画的な贈与で将来の相続税を削減
- 子や孫の生活支援:教育資金や住宅購入資金の提供
- 遺産分割トラブルの回避:事前の財産整理で争族を防止
生前贈与のやり方【5つのステップで完全解説】
「生前贈与をやってみたいけど、何から始めればいいか分からない」という方のために、実際の手続きを5つのステップに分けて詳しく解説します。この順番で進めれば、初心者でも確実に生前贈与を実行できます。
ステップ1:贈与する相手と財産を決定する
1-1. 贈与相手の選定
- 配偶者、子、孫(直系血族)
- その他親族(兄弟姉妹、甥姪など)
- 第三者(法人含む)
1-2. 贈与財産の種類別チェックポイント
現金の場合
- 銀行振込で確実な記録を残す
- 手渡しは避ける(証拠が残らない)
不動産の場合
- 登記費用(登録免許税)の計算
- 不動産取得税の確認
- 固定資産税の精算
株式の場合
- 評価額の算定方法
- 証券会社での名義変更手続き
ステップ2:贈与契約書の作成【重要】
2-1. 必須記載事項
- 贈与者の氏名・住所・押印
- 受贈者の氏名・住所・押印
- 贈与財産の詳細(種類・数量・価額)
- 贈与の条件(負担付贈与の場合)
- 契約年月日
2-2. 契約書作成のポイント
- 手書きまたはワープロ作成(どちらでも有効)
- 印鑑は実印を使用(印鑑証明書も添付推奨)
- 公証人役場での公正証書作成も検討
ステップ3:実際の財産移転を実行する
3-1. 現金贈与の手続き
- 銀行振込で受贈者の口座へ送金
- 振込明細書を保存
- 受贈者が口座を管理することを確認
3-2. 不動産贈与の手続き
- 登記申請書の作成
- 法務局への登記申請
- 登録免許税の納付(固定資産税評価額×2%)
- 不動産取得税の申告・納付
3-3. 株式贈与の手続き
- 証券会社への名義変更依頼
- 贈与契約書の提出
- 移管手続きの完了確認
ステップ4:贈与税の申告・納付
4-1. 申告が必要な場合
- 年間の贈与額が110万円を超える場合
- 相続時精算課税を選択する場合
- 各種特例を適用する場合
4-2. 申告期限と方法
- 申告期限:贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日
- 申告方法:税務署窓口、郵送、e-Tax
- 必要書類:贈与税申告書、戸籍謄本、契約書写し等
4-3. 納付方法
- 現金納付(銀行、郵便局、税務署)
- 振替納税
- クレジットカード納付
- インターネットバンキング
ステップ5:その他税金の納付と手続き完了
5-1. 不動産取得税(不動産贈与の場合)
- 納付時期:取得から6ヶ月以内
- 税率:固定資産税評価額×3%(住宅・土地)、4%(その他)
5-2. 完了後の確認事項
- 受贈者による財産管理の確認
- 関連書類の整理・保管
- 翌年以降の贈与計画の検討
2024年税制改正|贈与制度の種類と選び方
2024年1月から施行された税制改正により、生前贈与の戦略が大きく変わりました。改正内容と各制度の特徴を正しく理解して、最適な贈与方法を選択しましょう(詳細は記事末尾の参考リンク参照)。
1. 暦年課税制度(基本制度)
特徴
- 年間110万円まで非課税
- 受贈者1人当たりの限度額
- 複数人に贈与すれば節税効果大
適用例
- 父が子3人に各100万円を贈与 → 合計300万円すべて非課税
2024年改正ポイント
- 相続前加算期間が7年に延長(従来は3年)
2. 相続時精算課税制度
特徴
- 累計2,500万円まで贈与税なし
- 相続時に相続財産に加算して精算
- 2024年から基礎控除110万円が新設
メリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
大きな金額を一度に移転可能 | 暦年課税に戻れない |
値上がり益の相続税圧縮効果 | 相続時の計算が複雑 |
3. 特例制度(用途限定)
教育資金一括贈与特例
- 非課税限度額:1,500万円(学校等以外は500万円まで)
- 対象:30歳未満の直系卑属
- 期限:2026年3月31日まで
結婚・子育て資金一括贈与特例
- 非課税限度額:1,000万円(結婚は300万円まで)
- 対象:18歳以上50歳未満の直系卑属
- 期限:2025年3月31日まで
住宅取得等資金贈与特例
- 非課税限度額:省エネ住宅1,000万円、その他住宅500万円
- 対象:直系卑属(年齢制限なし)
- 期限:2026年12月31日まで
実践的ケーススタディ
理論だけでなく、実際によくある贈与シーンを想定した具体例を見ることで、自分に当てはまるケースが見つかり、すぐに行動に移せます。
ケース1:現金を孫に贈与【最も一般的】
状況
- 祖父(75歳)が孫3人(小学生)に教育資金として贈与したい
- 贈与予定額:年間300万円(各100万円)
最適解
- 暦年課税を選択(各110万円以内で非課税)
- 各孫に年間100万円ずつ10年間継続
- 総額3,000万円を無税で移転可能
手続きの流れ
- 各孫名義の銀行口座開設(親が代理)
- 贈与契約書作成(年ごとに更新推奨)
- 毎年決まった時期に振込実行
- 通帳管理は各家庭に委託
ケース2:不動産を子に贈与【高額資産】
状況
- 父(65歳)が自宅土地建物(評価額3,000万円)を長男に贈与
最適解
- 相続時精算課税を選択
- 2,500万円まで贈与税なし、残り500万円に20%課税
- 贈与税額:(3,000万円-2,500万円)×20%=100万円
注意点
- 登録免許税:3,000万円×2%=60万円
- 不動産取得税:約90万円(軽減措置適用後)
- 総コスト:約250万円
ケース3:教育資金をまとめて贈与【特例活用】
状況
- 祖母(70歳)が孫(高校生)の大学費用として1,200万円贈与
最適解
- 教育資金一括贈与特例を活用
- 信託銀行等で専用口座開設
- 1,200万円全額非課税で贈与
管理のポイント
- 教育費支払時に領収書提出必要
- 30歳時点で残額があれば贈与税課税
- 年間管理手数料(数千円~1万円程度)
生前贈与成功の5つのポイント
生前贈与を確実に成功させ、税務調査でも問題にならないためのポイントを5つに絞って解説します。これらを押さえておけば、安心して贈与を進められます。
1. 確実な証拠書類の作成・保管
必須書類チェックリスト
- ✅ 贈与契約書(双方署名押印)
- ✅ 財産移転の証明書類(振込明細、登記簿等)
- ✅ 贈与税申告書控え
- ✅ 戸籍謄本・住民票
- ✅ 財産評価に関する資料
2. 名義預金回避のための実質管理
NG例
- 子名義の口座でも通帳・印鑑は親が管理
- 子が贈与の事実を知らない
- 贈与資金を親が使用
OK例
- 通帳・カードは必ず子が管理
- 贈与の事実を子に確実に伝達
- 子が実際に資金を活用
3. 計画的な贈与スケジュール設計
10年計画の例
- 目標移転額:2,000万円(子2人)
- 年間贈与額:200万円(各100万円)
- 節税効果:贈与税ゼロ(暦年課税活用)
4. 2024年主要改正事項への対応
- 相続前加算期間:3年→7年延長
- 相続時精算課税:基礎控除110万円新設
5. 専門家との連携
相談すべき専門家
- 税理士:税務全般、申告書作成
- 司法書士:不動産登記、契約書作成
- 弁護士:法的トラブル、複雑な契約
- ファイナンシャルプランナー:全体的な資産設計
よくある失敗例と対策
実際に多く発生している生前贈与の失敗パターンを知ることで、同じ失敗を避けることができます。特に税務調査で指摘されやすいポイントを中心に解説します。
失敗例1:名義預金による否認
失敗ケース 80歳の父が孫3人の名義で各500万円の定期預金を作成。しかし通帳は父が管理し、孫たちは存在を知らなかった。税務調査で「実質的な贈与なし」と判定され、相続財産に加算。
対策
- 贈与契約書の作成
- 受贈者による実質的な財産管理
- 贈与の事実を明確に伝達
失敗例2:相続前加算による二重課税
失敗ケース 父の死亡直前3年間で子に毎年200万円贈与(贈与税90万円納付)。相続時に600万円が相続財産に加算され、結果的に贈与税・相続税の両方負担。
対策
- 早期からの計画的贈与実行
- 2024年改正で加算期間が7年に延長された点を考慮
- 健康状態を考慮した贈与タイミング
失敗例3:特例制度の要件違反
失敗ケース 教育資金特例で1,000万円贈与したが、大学卒業後に400万円が残存。30歳到達時に残額に贈与税課税(税額約110万円)。
対策
- 必要額の正確な見積もり
- 使途の定期的な確認
- 残額処理方法の事前検討
まとめ:生前贈与で確実に節税するために
生前贈与は早く始めるほど節税効果が大きいため、まずは年間110万円以内の暦年贈与から着実にスタートしましょう。
財産の整理と相続税試算を行い、10年単位の長期計画を立てて専門家に相談しながら進めましょう。
高額贈与や不動産・株式の贈与は必ず税理士等に確認するのが安心です。