エンディングノートとは、人生の終末期に向けて自分の想いや希望、必要な情報をまとめておくツールとして注目されています。
近年、終活ブームの影響で40代・50代の利用者が急増しており、単なる高齢者向けのものではなくなっています。厚生労働省の調査によると、人生の最終段階での医療について「事前に家族と話し合いたい」と答えた人は約7割に上るなど、自分らしい最期への関心が高まっています。
本記事では、エンディングノートを書く「目的」や「メリット」に焦点をあて、その活用法や書き方のコツまでわかりやすく解説します。
目次
エンディングノートを書く「目的」とは?
エンディングノートには明確な「目的」があります。単なる日記やメモではなく、人生の大切な意志を伝えるための役割を担っています。
自分の想いを「見える形」にする
口頭では伝えきれないことも、文字にすればしっかり残せます。例えば:
- 葬儀の形式:家族葬を希望、音楽は好きだった○○の曲を
- 供養の方法:お墓は○○霊園、散骨は海を希望
- 介護の希望:自宅での介護を希望、特養への入居は○○の条件で
このように具体的に記しておくことで「自分らしい最期」へつながります。
家族への負担を軽くする
突然の入院やもしもの時、家族は多くの判断を迫られます。実際に「本人の希望が明確で助かった」という体験談も少なくありません。
- 延命措置の可否を迷わずに済んだ
- 葬儀の準備で家族が揉めることがなかった
- 財産の在り処がすぐに分かり、手続きがスムーズだった
情報の整理と把握
保険、金融口座、持ち物、重要書類の保管場所などを一覧で把握しておくことで、いざという時の手続きもスムーズになります。特に:
- 銀行口座の暗証番号
- 生命保険の証券番号
- 年金手帳の保管場所
- 借入金の詳細
これらの情報整理は、残された家族の負担を大幅に軽減します。
法的文書ではないからこそ書けること
エンディングノートは遺言書と異なり、法的効力はありません。だからこそ、「気持ち」や「価値観」など、形式に縛られない記述が可能です。
- 家族への感謝のメッセージ
- 人生で大切にしてきた価値観
- 孫世代への想い
- ペットの世話についての希望
エンディングノートの主な「メリット」
エンディングノートを書くことは、本人と家族の双方にとって大きな利点があります。
自分らしい最期の準備ができる
医療の希望や延命措置、介護施設の希望など、「そのとき」が来ても自分の意思を尊重してもらえる土台ができます。
具体的には:
- 人工呼吸器の使用可否
- 胃ろう造設の希望
- 介護施設の種類(特養、有料老人ホーム等)
- 在宅医療の希望
家族・親族の精神的負担を減らせる
判断を委ねられる家族にとって、「本人の言葉」があるだけで迷いが減り、心の負担が軽くなることも多くあります。
実際の体験談:
「父が意識を失った時、エンディングノートに『延命措置は希望しない』と書いてあったおかげで、家族で悩むことなく父の意思を尊重できました。後悔のない選択ができて良かったです」(50代女性)
医療・介護の意思決定に役立つ
治療の可否、終末期のケア、介護方針などもノートで明確にしておけば、医師やケアマネジャーとの連携にもスムーズです。
デジタル遺品の管理にも有効
近年はSNSやネットバンク、クラウドサービスなども重要な資産。IDやパスワードの記録、削除希望の記述などを含めることで、残された人の作業を大きく減らすことができます。
特に重要なのは:
- Facebook、Instagram等のSNSアカウント
- ネットバンクのログイン情報
- Google Drive、iCloud等のクラウドデータ
- サブスクリプションサービスの解約
書くタイミングと活用シーン
「エンディングノートは高齢者のもの」と思われがちですが、実際には40代・50代から書き始める人が増えています。
30代から始める人も増加中
30代でもエンディングノートを書く人が増えています。理由として:
- 結婚や出産を機に家族への責任を意識
- 住宅ローンや生命保険の加入
- 親の介護を意識し始める
40代・50代から始める人が増えている理由
仕事や家庭が安定し、今後の人生設計を見直す時期に書き始める人が多くなっています。親の介護や相続を経験し、自分の準備も意識し始めるきっかけになることも。
60代以上では健康状態を考慮
60代以上では、健康状態の変化を機に書き始めるケースが多く:
- 定期健診での異常発見
- 配偶者や友人の病気・他界
- 退職による生活の変化
病気や節目のタイミングでの記入もおすすめ
入院や病気の治療、定年退職、引越しなど、人生の節目がエンディングノートを始める良いタイミングです。
家族会議や相続の準備にも活用できる
財産の分け方や希望を共有しておけば、トラブルの回避や家族の信頼関係維持にもつながります。
エンディングノートの主な構成と項目例
エンディングノートに書くべき項目は多岐に渡ります。以下のようなカテゴリで整理されていると分かりやすくなります。
基本情報
- 氏名・生年月日・血液型
- 緊急連絡先(家族、かかりつけ医、ケアマネジャー)
- 健康状態や持病(服薬情報、アレルギー、既往歴)
- 健康保険証・お薬手帳の保管場所
医療・介護について
- 延命措置の希望(人工呼吸器、胃ろう、人工透析等)
- 介護の方針や施設の希望(在宅介護、特養、有料老人ホーム等)
- 臓器提供の意思(ドナーカードの有無)
- 終末期医療の希望(緩和ケア、ホスピス等)
財産・保険・契約情報
- 預金口座・証券口座(銀行名、支店名、口座番号、暗証番号)
- 保険契約内容(生命保険、医療保険、火災保険等)
- 所有不動産や借入金(住宅ローン、クレジットカード等)
- 年金関係(年金手帳、加入履歴)
デジタル関連情報
- SNSやサブスクのログイン情報
- 写真・動画・クラウド保存情報
- 削除してほしいデータの指定
- パソコン・スマートフォンのパスワード
家族へのメッセージ
- 感謝の気持ち
- 人生で大切にしてきた価値観
- 家族への希望や願い
これらをカテゴリ別にまとめておけば、記入もスムーズに進み、家族にとっても分かりやすくなります。
書き方のコツとよくある悩み
いざ書こうと思っても、どう始めればいいか分からない…という方に向けて、取り組みやすいコツを紹介します。
「縁起が悪い」という不安を解消
「エンディングノートを書くのは縁起が悪い」と感じる方も多いですが、実際は前向きな人生設計の一環です。
- 自分の人生を振り返る良い機会
- 家族との絆を深めるツール
- 今後の人生をより充実させるための準備
と考えることで、ポジティブに取り組めるようになります。
すべて完璧に書こうとしない
最初から完成させる必要はありません。まずは「家族に伝えたいこと」や「医療・介護の希望」など、思いついたところから書いてみましょう。
段階的な取り組み方:
- 第1段階:基本情報と緊急連絡先
- 第2段階:医療・介護の希望
- 第3段階:財産・保険情報
- 第4段階:デジタル関連情報
- 第5段階:家族へのメッセージ
家族に見せるかどうかは内容次第
エンディングノートは「共有」が前提ではありません。見せたい部分だけを渡したり、ノートを保管する場所だけを伝えておくなど、柔軟な扱いが可能です。
書き直し・更新は定期的に
一度書いたら終わりではありません。ライフステージや状況が変われば内容も見直す必要があります。定期的に更新する癖をつけましょう。
更新のタイミング:
- 年に1回(誕生日や正月など)
- 大きな生活の変化があった時
- 健康状態に変化があった時
- 家族構成が変わった時
無料テンプレートで今すぐはじめよう
「どこから書けばいいか分からない…」という方には、使いやすい無料テンプレートをご用意しています。
テンプレートの特徴
- すぐに書き始められるフォーマット(PDF)
- 医療・介護・財産・デジタル情報などを網羅
- ご家族とも共有しやすい設計
- 年代別の記入例付き
記事の下から、LINEで友だち登録するだけで、すぐにダウンロードできます。
まとめ:エンディングノートは「自分と家族への贈り物」
エンディングノートを書く目的は、自分の意思を記録することだけではありません。家族の負担を減らし、想いをしっかり伝えるための「準備」であり、信頼関係を築くための「ツール」でもあります。
エンディングノートの価値:
- 自分らしい最期の実現
- 家族の精神的・物理的負担の軽減
- 医療・介護における意思決定の支援
- デジタル遺品の適切な管理
30代・40代・50代の今から始めておくことで、いざという時も慌てず対応できます。「縁起が悪い」という先入観を捨てて、前向きな人生設計の一環として取り組んでみませんか?
まずはテンプレートを活用して、一歩を踏み出してみましょう。あなたの想いを形にする第一歩が、きっと家族にとっても大きな安心につながるはずです。