人生の最終段階に向けた準備「終活」。その中でもとくに大切なのが「お金の管理」です。
資産や負債を整理しておくことで、自分自身はもちろん、家族にも安心を与えることができます。
本記事では、終活におけるお金の管理の基本ステップを5つに分けてわかりやすく解説。今すぐ取りかかれる具体的な方法も紹介します。
終活における”お金の管理”の重要性とは
お金の管理は、終活全体の中でも特に優先度が高いテーマです。正確に資産や負債を把握しておくことは、自分自身の安心につながるだけでなく、家族や相続人の負担を大幅に減らすことができます。
なぜ「今」お金の整理が必要なのか?
人生の後半になるほど、契約や資産の複雑化・デジタル化が進んでいます。万が一のときに家族が困らないよう、早めに整理を始めることでトラブル回避が可能になります。
実際に起こりがちな問題例:
- 使っていない銀行口座が10個以上残っている
- ネット証券の口座があることを家族が知らない
- 仮想通貨の取引所に資産があるが、アクセス方法が不明
管理が不十分だと何が起きるのか?
- 使っていない口座が多く残る:口座維持手数料や管理コストが発生
- 家族が資産の所在を把握できない:相続手続きが長期化(平均1年以上)
- ローンや借入金の処理が遅れる:延滞金や信用情報への影響
こうした事態は相続手続きや遺産分割のトラブルに直結し、相続税の申告期限(10か月以内)に間に合わない可能性もあります。
お金の管理に必要な5つの基本ステップ
ここからは、終活におけるお金の管理を具体的に進めるための5つのステップを紹介します。順を追って取り組むことで、確実に整理が進みます。
ステップ①:財産と負債をすべてリストアップ
作業内容: 資産だけでなく、借入や未払いも含めた「全体像」を把握することが第一歩です。
必要な情報:
- 現金・預貯金:銀行名・支店名・口座番号・残高の目安
- 証券・投資信託・仮想通貨:証券会社名・口座番号・保有銘柄
- 不動産:所在地・名義人・固定資産税評価額
- 生命保険・年金:保険会社名・証券番号・受給予定額
- 借入金:金融機関名・残高・月々の返済額
- クレジットカード:カード会社・限度額・リボ残高
実務的なコツ:
この一覧は、書面またはエンディングノートにまとめておくと家族に伝えやすくなります。通帳記帳を行い、最新の残高を記録しましょう。
ステップ②:使っていない口座やサービスを解約
作業内容: 不要な口座や金融サービスは、早めに解約することをおすすめします。放置しておくと口座の凍結・手続き遅延などが発生しやすくなります。
解約対象の判断基準:
- 1年以上入出金がない普通預金口座
- 残高が1万円未満の口座
- 使っていないクレジットカード
- 解約し忘れたネットバンキング
注意点:
- ネットバンキングや証券口座も整理対象に含めましょう
- 長期間使用していない口座は、通帳・印鑑の所在も確認を
- 公共料金の引き落とし口座は解約前に変更手続きを
ステップ③:年金・保険情報をまとめる
作業内容: 年金や保険は老後の生活や相続にも大きく関係するため、詳細な情報整理が必要です。
整理すべき年金情報:
- 国民年金・厚生年金の加入履歴
- 企業年金・個人年金の契約内容
- 年金受給開始時期と受給予定額
保険関連の整理項目:
- 生命保険の保障内容・受取人・保険金額
- 医療保険・がん保険の特約内容
- 個人年金保険の受取予定額
活用ツール:
- ねんきん定期便やマイナポータルでの情報確認を推奨
- 保険証券のコピーや契約内容は一か所にまとめて保管
参考リンク: ねんきんネット(日本年金機構)
ステップ④:デジタル資産・パスワード管理も忘れずに
作業内容: 終活では、スマホ・パソコン・クラウドなどにある「デジタル遺産」の管理も重要です。
整理が必要なデジタル資産:
- 銀行・証券口座のログイン情報
- キャッシュレス決済(PayPay、楽天ペイ等)の残高
- 仮想通貨取引所のアカウント情報
- サブスクリプションサービス(Netflix、Amazon Prime等)
パスワード管理の方法:
- パスワード管理ツールの使用(例:Googleパスワードマネージャー)
- 手書きのパスワード一覧表を作成し、金庫等で保管
- 二段階認証の設定状況も記録
デジタル終活の注意点:
- SNSアカウントの追悼設定や削除方法を確認
- クラウドストレージ(Google Drive、Dropbox等)の重要データを整理
- 定期的にパスワードを更新し、リストも最新に保つ
参考リンク: Google パスワードマネージャー
ステップ⑤:相続を見据えた対策を立てる
作業内容: 最終的には、残す側・受け取る側が「もめない」状態にしておくことが理想です。
遺言書作成のポイント:
- 法的効力を持たせるには公正証書遺言を推奨
- 遺言執行者の指定も併せて検討
- 定期的な見直しと更新が必要
相続対策の基本知識:
- 相続税の基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人数
- 限定承認・相続放棄の手続き期限(3か月以内)
- 遺産分割協議書の作成方法
専門家への相談タイミング:
- 相続税が発生する可能性がある場合:税理士
- 不動産や複雑な資産がある場合:司法書士
- 家族間での意見対立が予想される場合:弁護士
よくある疑問Q&A
お金の終活に関してよくある質問をまとめました。
Q. 口座が多くて整理が大変…
A. まずは「給与振込・公共料金・積立」の用途で分類し、使っていない口座は順次解約を。一覧表を作ると作業がスムーズになります。月1回程度のペースで進めれば、3か月程度で整理完了が可能です。
Q. ネット銀行やキャッシュレス決済の扱いは?
A. 相続の際はアクセスが困難になるため、アカウント情報やID・パスワードを整理し、信頼できる人に伝える仕組みを作っておきましょう。定期的に残高を確認し、使わないサービスは解約することをお勧めします。
Q. 相続税はいくらから発生する?
A. 基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える遺産がある場合に発生します。例:配偶者と子供2人の場合、4,800万円を超えると相続税の対象となります。
Q. 認知症になる前にやっておくべきことは?
A. 家族信託の設定や任意後見契約の締結を検討しましょう。判断能力が低下してからでは、これらの手続きができなくなる可能性があります。
活用したい終活サポートツール
お金の管理は手間がかかるように感じるかもしれませんが、今では便利なツールも豊富です。身近なもので始められる方法を活用しましょう。
手軽に始められる管理方法
家計簿アプリの活用:
既存の家計簿アプリ(マネーフォワード、Zaim等)を使って、複数口座の残高を一括管理できます。自動連携機能により、リアルタイムで資産状況を把握可能です。
エクセル・Googleスプレッドシートでの管理:
シンプルな表形式で資産一覧を作成。家族との共有も簡単で、更新履歴も残るため、変更点の把握が容易です。
銀行の資産管理サービス:
メガバンクが提供する資産管理サービスを活用すれば、他行口座も含めた総合的な資産把握が可能です。
まとめ:お金の終活は「見える化」と「削減」から始めよう
終活におけるお金の管理は、安心できる老後と家族への思いやりの第一歩です。今回紹介した5つのステップを実践すれば、無理なく整理が進み、万が一のときにも困らない体制が整います。
今すぐ始められる3つのアクション:
- 今週中に:財産と負債の一覧表を作成開始
- 今月中に:不要な口座を1つ以上解約
- 3か月以内に:家族との情報共有の仕組みを確立
まずは「資産と負債の一覧化」から始め、不要なものは解約・削減。そして、家族に伝わるかたちで記録を残しましょう。完璧を目指さず、段階的に進めることが継続の秘訣です。
定期的な見直しの重要性:
一度整理したからといって終わりではありません。年1回は情報を更新し、新しい資産や契約の追加、不要になったサービスの解約を行いましょう。これにより、常に最新の状態を保つことができます。