車を相続するときに欠かせないのが「名義変更」です。
これを怠ると売却や廃車ができず、自動車税の通知や保険適用にも影響が出る可能性があります。
本記事では、車の相続名義変更の流れや必要書類、普通車と軽自動車の違い、費用の目安を詳しく解説します。
相続人が複数いる場合や相続しないケースについても触れるので、安心して手続きを進める参考にしてください。
目次
車の相続名義変更とは?基礎知識
車の相続名義変更とは、亡くなった方が所有していた自動車の名義を相続人に変更する手続きのことです。正式には「移転登録」と呼ばれ、道路運送車両法で義務付けられています。
この手続きを行うことで、法的に車の所有者が故人から相続人へと移転し、売却や廃車、保険の適用などが可能になります。
車を相続したら名義変更が必要な理由
車を相続すると、法律上・実務上どちらの観点からも名義変更を行わなければなりません。
ここでは、なぜ名義変更が必須なのか、怠った場合に生じるトラブルや罰則を解説します。
名義変更の期限はいつまで?
道路運送車両法第13条では、車の所有者が変更された場合15日以内に移転登録(名義変更)を申請する義務が定められています。
この15日は、相続開始日(故人の死亡日)ではなく、遺産分割協議が成立し、車の相続人が決定した日から起算されます。
法律上の義務と罰則
期限を過ぎても名義変更を行わない場合、50万円以下の罰金に処せられることがあります。
ただし、実際に罰金が科せられるケースは稀で、多くの場合は行政指導にとどまります。
名義変更をしないデメリット
- 故人名義のままでは売却や廃車の手続きができない
- 任意保険が適用されない可能性がある
- 自動車税が故人宛に請求され続ける
- 車検の更新ができない
- 事故時の責任関係が複雑になる
このようなリスクを避けるためにも、相続したら速やかに名義変更を行う必要があります。
車の相続、名義変更の流れ
名義変更の流れは、所有者確認から書類準備、運輸支局での申請まで一連のステップがあります。
ステップ1:所有者確認と相続人の決定
車検証の所有者欄を確認し、誰が相続するかを決めます。遺言がなければ遺産分割協議で相続人を定める必要があります。
【重要】ローン残債がある場合の確認
車検証の所有者がディーラーやローン会社になっている場合は、まずローン完済の手続きが必要です。
ステップ2:必要書類の準備
必要書類の準備には通常1-2週間程度かかります。以下のチェックリストを参考に早めに準備を始めましょう。
必要書類チェックリスト
【共通書類】
- □ 車検証(原本)
- □ 故人の戸籍謄本(死亡の記載があるもの)または法定相続情報一覧図
- □ 相続人全員の戸籍謄本
- □ 相続人代表の印鑑証明書(3ヶ月以内)
- □ 相続人代表の実印
【相続人が複数の場合】
- □ 遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印)
- □ 相続人全員の印鑑証明書(3ヶ月以内)
【普通自動車のみ】
- □ 車庫証明書(1ヶ月以内、住所変更がある場合)
【軽自動車のみ】
- □ 住民票(住所変更がある場合)
ステップ3:運輸支局または軽自動車検査協会で申請
現在、車の相続名義変更はオンライン手続きに対応していません。必ず運輸支局または軽自動車検査協会の窓口での手続きが必要です。
申請場所の確認方法:
ステップ4:新しい車検証の受領
審査が通れば即日で新しい車検証が交付されます。これで正式に名義変更が完了します。
相続人が複数いる場合の対応
相続人が複数いるときは、誰が車を相続するか合意形成が不可欠です。ここでは、遺産分割協議や特別なケースに対応する方法をまとめます。
遺産分割協議書の作成
車は分割できない財産なので、相続人のうち誰が取得するかを話し合い、遺産分割協議書に記載します。
遺産分割協議書に記載すべき内容:
- 車両の詳細情報(車種、車台番号、登録番号)
- 相続する人の氏名・住所
- 相続人全員の合意内容
- 作成日と相続人全員の署名・実印
記載例は国土交通省 提出書類様式集に掲載されています。
軽自動車と普通自動車で異なる名義変更の手続き
車の種類によって、名義変更の窓口や必要書類は異なります。ここでは、普通車と軽自動車を比較し、それぞれの特徴を表で整理しました。
項目 | 普通自動車 | 軽自動車 |
---|---|---|
管轄窓口 | 運輸支局 | 軽自動車検査協会 |
登録手数料 | 500円(印紙代) | 無料 |
車庫証明 | 必要 | 不要(地域によって届出制あり) |
ナンバープレート | 管轄変更で交換が必要 | 管轄変更で交換が必要 |
印鑑証明書 | 必要 | 不要(認印でも可) |
遺産分割協議書 | 実印が必要 | 認印でも可 |
軽自動車の車庫証明について
軽自動車は原則として車庫証明が不要ですが、以下の地域では「保管場所届出」が必要です:
- 東京都23区、大阪市、横浜市など主要都市部
- 県庁所在地の多く
詳細は各地域の警察署にご確認ください。
車を相続しない場合の選択肢
車を相続したくない場合や引き取り手がいない場合には、廃車や売却などの選択肢があります。ここでは、相続放棄も含めて代表的な方法を紹介します。
廃車手続き
永久抹消登録の流れ:
- 相続人名義への変更
- 解体業者への依頼
- 運輸支局で永久抹消登録申請
名義変更を経て相続人が所有者となった上での申請が必要です。
売却する
売却の手順:
- 相続人名義への変更
- 買取業者への査定依頼
- 売却契約の締結
- 売却代金の受領
売却代金は相続財産として分配します。この場合も一旦相続人名義に変更する必要があります。
相続放棄
家庭裁判所で申述し、最初から相続人でなかった扱いになります。
相続放棄の注意点:
- 相続開始から3ヶ月以内に申述が必要
- 車だけでなく全ての相続財産を放棄することになる
- 相続放棄した人以外の相続人が車を引き継ぐ
- 全相続人が放棄した場合は相続財産管理人の選任が必要
車の相続手続きにかかる費用
手続きに必要な費用は数千円程度ですが、環境性能割など条件によっては追加費用が発生します。
基本的な手続き費用
- 登録手数料:普通車は500円、軽自動車は無料
- 車庫証明:2,000〜3,000円程度
- ナンバープレート代:約1,500円(管轄変更時)
- 戸籍謄本や印鑑証明書:1通300〜450円程度
税金関係
環境性能割
- 車の評価額に応じて課税
- 50万円以下は非課税
- 51万円以上の場合、評価額の1-3%
自動車税
- 相続時点で月割り計算
- 4月1日時点の所有者に年税額が課税
相続手続きをスムーズに進めるためのポイント
名義変更を滞りなく進めるには、事前の準備が重要です。
書類集めを早めに
戸籍謄本や車庫証明は取得に日数がかかるため、早めに準備しましょう。法務局 法定相続情報証明制度を使うと効率的です。
相続人間の合意形成
遺産分割協議は感情的になりがちです。以下の点を心がけましょう:
- 車の査定額を事前に把握
- 維持費や税金負担も考慮
- 必要に応じて専門家の仲裁を依頼
保険契約の名義変更も忘れずに
自賠責保険は承認請求、任意保険は契約変更や等級引き継ぎの手続きを行う必要があります。名義変更と同時に進めると安心です。
自賠責保険の手続き:
- 承認請求書の提出
- 車検証の写し
- 印鑑証明書
任意保険の手続き:
- 契約者変更手続き
- 等級引き継ぎ申請
- 車両入替手続き(必要に応じて)
まとめ
車の相続では、名義変更が必須です。
放置すると売却・廃車もできず、税金や保険面で不利益を被るため、早めに手続きを行いましょう。
手続きのポイント再確認:
- 15日以内の名義変更が法的義務
- 必要書類の準備には1-2週間かかる
- 普通車と軽自動車で手続きが異なる
- 相続人が複数の場合は遺産分割協議が必要
- 保険の名義変更も忘れずに実施
複雑な相続関係や時間がない場合は、専門家への依頼も検討しましょう。適切な手続きを行うことで、安心して車を相続・活用することができます。