あなたのiPhoneには、写真・動画・連絡先・メモ・アプリなど、人生のあらゆる記録が詰まっています。
これらのデータは、もしものとき「デジタル遺品」として遺され、家族や遺族にとって大きな負担や混乱の原因となることも。
本記事では、iPhoneに残るデジタル遺品の具体例から、削除・引き継ぎ方法、そして生前にできる対策までをわかりやすく解説します。
目次
iPhoneに残るデジタル遺品とは?
iPhoneには、日常生活のあらゆる記録が詰まっています。大切な人が亡くなったあと、その端末に残された情報は「デジタル遺品」と呼ばれ、遺族を悩ませることも少なくありません。
iPhoneに残る主なデジタル遺品
具体的には、写真や動画、LINEメッセージ、メモ帳、Apple IDの情報、さらには電子マネーや銀行アプリのログイン情報など、プライバシー性の高いデータが数多く保存されています。

これらのデータは、遺族が「見たい」と思う一方で、パスコードやアカウント情報が分からないとアクセスできないという大きな壁があります。
パスコードを推測で入力するのは非常に危険です。10回間違えると全データが消去され、二度と復旧できません。
デジタル遺品の法的位置づけ
デジタル遺品は法的には「相続財産」の一部と考えられています。その根拠となるのが、民法第896条の規定です。
民法第896条(相続の一般効力)
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。
ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
e-Gov法令データ提供システム:民法 第896条
この条文から分かるポイントは次の2つです。
- ① 相続の対象は「被相続人の財産に属した一切の権利義務」であること
- ② ただし、「被相続人の一身に専属したもの」は相続されないこと
つまり、まず「財産」にあたるかどうかが、相続の対象となる第一の基準になります。
ここでいう「財産」とは、法律上明確に定義されているわけではありませんが、一般的には金銭的価値をもつものとされています。
たとえば、現金や預金のように形があるものだけでなく、クラウド上のデータ、有料アプリの購入権、電子マネー、暗号資産など、金銭的価値をもつデジタル情報も「財産」に該当する場合があります。
これらは、相続人が正当な手続きを経て承継できる可能性があるデジタル遺品といえます。
一方で、LINEのトーク履歴や個人メモ、SNSの非公開投稿など、個人的な思考やプライベートに関わる情報は、「被相続人の一身に専属したもの」として扱われ、相続の対象外となる場合があります。
こうした情報に遺族が無断でアクセスすることは、不正アクセス禁止法に抵触するおそれもあるため注意が必要です。
デジタル遺品が「財産」として相続されるかどうかは、そのデータに金銭的価値や財産的権利が伴うかが基準となります。電子マネーや暗号資産、有料サブスクリプションなどは相続対象になり得ますが、個人的なメッセージや日記などは相続の対象外です。
パスコードやApple IDが分からない場合の緊急時の対処法
まずパスワードのメモがないか確認
- 故人がパスワード管理アプリを使用していないか
- 手帳やメモに記載がないか
- 家族に共有していた情報がないか
特にiPhoneはセキュリティが強固です。設定画面で「データを消去」オプションをオンにしている場合、パスコードを10回連続で間違えると、すべての情報・メディア・個人設定が消去されます。
この機能を有効にしていない端末では、自動消去は起こりませんが、いずれにせよ推測での入力は危険です。
詳細は Apple公式ガイド をご参照ください。
キャリア(docomo・au・SoftBank)での対応
各キャリアでできることは限られていますが、解約や料金停止などの手続きは可能です。以下にまとめました。
キャリア | できること | できないこと | 公式ページ |
---|---|---|---|
docomo | ・契約解約 ・料金支払い停止 ・SIMカード無効化 |
・iPhoneのロック解除 ・データ取り出し |
ドコモ公式:解約手続き |
au | ・契約解約 ・料金支払い停止 ・SIMカード無効化 |
・iPhoneのロック解除 ・データ取り出し |
au公式:解約手続き |
SoftBank | ・契約解約 ・料金支払い停止 ・SIMカード無効化 |
・iPhoneのロック解除 ・データ取り出し |
ソフトバンク公式:解約手続き |
※手続きには死亡診断書や戸籍謄本、印鑑証明書などの書類が必要です。詳細は各公式ページをご確認ください。
iPhoneのデジタル遺品を扱う基本ステップ
故人のiPhoneに残されたデータを確認・引き継ぐには、Appleの公式手続きや必要書類の準備が欠かせません。ここでは、遺族が取れる対応を整理します。
1. Apple公式の対応方法を確認する
iPhoneのロック解除やiCloudデータの閲覧には、基本的に故人のApple IDとパスコードが必要です。Appleは「遺族であっても本人の許可なく情報を開示できない」としており、特別な手続きが必要です。
▶ Apple公式:亡くなったご家族のAppleアカウントにアクセスする方法
2. 遺族ができること・できないこと
できること | できないこと |
---|---|
・デジタル遺産プログラムが設定されていればアクセス ・キャリア契約の解約 ・Appleへの開示請求(死亡診断書や戸籍謄本が必要) ・データ復旧業者への相談 |
・パスコードなしでの強制解除 ・iCloud保存データの閲覧(設定がない場合) ・故人の同意なしでの第三者解除 |
3. 必要書類と費用の目安
必要書類 | 費用の目安 | 処理期間 |
---|---|---|
・死亡証明書(原本) ・戸籍謄本 ・遺族であることを証明する書類 ・申請者の本人確認書類 |
・書類取得費用:約1,000〜3,000円 ・郵送費用:約500〜1,000円 ・データ復旧業者利用時:10万〜30万円(成功報酬制あり) |
・書類準備:約1週間 ・Apple審査:約2週間〜1ヶ月 |
業者依頼時の注意点
パスコードが分からない場合、データ復旧業者へ相談する選択肢もあります。ただし業者選びを誤ると高額請求や情報漏洩のリスクがあるため、注意が必要です。
信頼できる業者と避けるべき業者
信頼できる業者の特徴 | 避けるべき業者の特徴 |
---|---|
・料金体系が明確 ・成功報酬制を採用 ・セキュリティ対策を公表している ・実績や口コミが確認できる |
・「100%復旧可能」と断言 ・前払い料金のみ請求 ・所在地や会社情報が不明 ・契約条件が不透明 |
費用の相場
- 調査料金:無料〜1万円
- 復旧成功時:10万〜30万円程度
- 復旧失敗時:0円または調査料金のみ
生前にできるiPhoneの終活準備
亡くなったあとに遺族が困らないよう、今からできる準備をしておくことが重要です。その中でも、Appleが公式に提供する「デジタル遺産プログラム」は必ず確認しておきたい機能です。
「デジタル遺産プログラム」の活用
AppleはiOS15.2以降で「デジタル遺産プログラム(Legacy Contact)」を導入しました。これを設定しておけば、本人の死後に指定された連絡先がAppleに申請し、写真やメモなどのデータにアクセスできます。
遺産連絡先の設定手順
- iPhoneの「設定」アプリを開く
- [Apple ID] > [パスワードとセキュリティ] > [アカウントの復旧連絡先]
- 「遺産連絡先を追加」を選択し、家族や信頼できる人物を登録
- アクセスキーを保存・共有する
この機能を利用するには、申請時にアクセスキーと死亡証明書の両方が必要です。設定後も定期的に確認して、家族と情報を共有しておくと安心です。
アカウント情報やパスワードの整理
以下の情報は、紙や専用アプリなどにまとめておくと安心です。
必須情報
- Apple IDのメールアドレスとパスワード
- iPhoneのパスコード(6桁数字)
- 使用中のLINE・SNSのログイン情報
- よく使うアプリの課金・登録内容
写真や動画のバックアップ
iCloudやGoogleフォト、外付けHDDなどに写真・動画を二重保存しておくと、突然の事態でも大切な思い出を守ることができます。iPhone内のみに保存されている場合、ロック解除ができなければ二度と見られない可能性があります。
バックアップの具体的方法
- iCloudの容量を十分に確保
- Googleフォトとの同期設定
- 定期的な外部ストレージへの保存
- 家族との共有アルバムの作成
よくあるQ&A|iPhoneのデジタル遺品
Q. iCloudの写真は消えてしまうの?
A. 故人がApple IDからログアウトされない限り、一定期間はクラウドに残ります。ただし、支払いが滞ると30日後にデータが削除されるリスクがあります。クレジットカードの利用停止により、iCloudの有料プランが継続できなくなることが主な原因です。早めに保存手段を検討しましょう。
Q. LINEのトーク履歴はどうなる?
A. ログイン情報が分かれば、別端末で引き継ぐことも可能ですが、基本的には個人情報保護の観点から復元は困難です。LINEアカウントは90日間ログインしないと自動削除されます。事前のバックアップ(iCloud)が重要です。
Q. 電子マネーや銀行アプリの残高はどうなる?
A. 各サービスの規約により異なりますが、多くの場合は相続手続きが必要です。Pay系アプリは本人確認が厳格なため、基本的には払い戻し手続きを行います。銀行アプリの場合は、銀行窓口での相続手続きが必要になります。
Q. データ復旧業者に依頼すれば確実に復旧できる?
A. 100%の復旧は保証されません。特にiPhoneのセキュリティは非常に強固で、パスコードが不明な場合の復旧率は20%~30%程度です。費用も高額になる可能性があるため、事前の備えが最も重要です。
Q. 子どものiPhoneはどうすればいい?
A. 18歳未満の場合、親権者が管理していれば比較的アクセスしやすいですが、独自のApple IDを使用している場合は大人と同様の手続きが必要です。ファミリー共有の設定があれば、親のApple IDからある程度のデータにアクセス可能です。
まとめ|iPhoneのデジタル遺品対策で大切なこと
iPhoneには、日々の生活や思い出が詰まった膨大な情報が残されています。デジタル遺品として残されたとき、遺族が困らないようにするには、生前からの対策が重要です。
今すぐ、iPhoneの設定を見直して、「もしも」のときに備えてみませんか?残された人の負担を軽減する一歩を、今日から始めてみましょう。

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