スマホやパソコンの中に残された写真、SNSアカウント、ネット銀行のログイン情報――。これらは、あなたが亡くなった後「デジタル遺品」として家族を悩ませる存在になるかもしれません。
この記事では、「デジタル遺品とは何か?」という基本から、見落としがちな注意点、そして今すぐ始められる生前整理の方法までをわかりやすく解説します。
目次
デジタル遺品とは?今、なぜ注目されているのか

デジタル遺品とは、故人が生前に使用していた電子機器内のデータや、インターネット上の情報資産を指します。以下のようなものが含まれます。
- スマホ・PC内の写真、動画、連絡先
- SNSアカウント(LINE、X、Instagram、Facebookなど)
- ネット銀行、証券、仮想通貨のアカウント
- サブスクリプションサービス(Netflix、Amazon等)
- クラウドストレージ(Google Drive、iCloud等)
「見えない財産」であるため、家族でも気づけないケースが多く、後の相続や解約手続きに支障が出ることも少なくありません。
放置するとどうなる?デジタル遺品の代表的なトラブル

パスワードが解除できず、大切な情報が見られない
特にiPhoneなどのセキュリティは強固で、パスコードがわからないと初期化すらできない場合もあります。
アカウントが残り、悪用リスクがある
SNSやメールが残っていると、故人になりすました不正利用や情報漏洩のリスクが生まれます。なかには、故人のLINEにメッセージが届き続け、家族が精神的に苦しむケースもあります。
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いますぐできる!デジタル遺品の生前整理5つの方法

デジタル終活は、従来の終活に「スマホやオンライン資産の整理」を加えた新しい考え方です。
スマホやSNSを日常的に使う今、放置すると家族がログインできずに困るケースが多発しています。
以下の5つのステップで、今日から少しずつ備えを始めてみましょう。
1. パスワード管理アプリを活用する
複数のパスワードをノートやメモに書き残すのは危険です。
安全に一元化できる専用アプリを使うことで、万が一の際も家族がアクセスしやすくなります。
- おすすめアプリ:1Password、Bitwarden、Google パスワード マネージャー
- 「家族共有」や「緊急連絡先設定」などの機能があるものを選びましょう
- バックアップコード(リカバリキー)は紙で保管しておくと安心です
2. SNSの「追悼アカウント」設定を行う
主要SNSでは、ユーザーの死後に備えた「追悼アカウント設定」や削除手続きが用意されています。
あらかじめ設定しておくことで、アカウントが放置されるリスクを防げます。
SNS各社の死後アカウント対応比較表
| サービス | 死後アカウント設定 | 手続き方法 | 家族ができること |
|---|---|---|---|
| 追悼アカウント設定が可能 | 生前に「追悼アカウント管理人」を登録 | 管理人変更、追悼ページとして残す、投稿管理 | |
| 追悼アカウント設定が可能 | 家族・友人からの申請で追悼化 | 投稿は残るが編集不可、アーカイブ化 | |
| X(旧Twitter) | 死後設定機能なし | 家族からの申請により削除可能 | アカウント削除のみ、データ取得は不可 |
| 無効化アカウント管理ツールで対応可能 | 生前に共有先や削除設定を登録 | 指定先にデータ共有、または自動削除 | |
| Apple(iCloud) | 故人アカウント管理連絡先を設定可能 | 生前に連絡先を登録、死亡証明で申請 | 連絡先登録者がアクセス権を取得 |
3. クラウドデータの整理とバックアップ
Google DriveやiCloudなどのクラウドには、写真や文書などの大切なデータが多数保存されています。
定期的に整理しておくことで、家族が必要な情報を見つけやすくなります。
- 利用中のクラウドサービスをリストアップする
- 不要なデータは削除し、残すものはバックアップ
- 主要サービスの生前設定:
- Google:アカウント無効化管理ツール
- Apple:故人アカウント管理連絡先を追加する方法
4. 相続対象となるデジタル資産を明記する
ネット銀行や暗号資産は、金額に関わらず「相続財産」として扱われます。
残高やウォレット情報を家族が把握できないと、相続の手続きが進められないことも。
- 銀行・証券・仮想通貨口座などを一覧化する
- 二段階認証やセキュリティキーの保管場所も明記
- 遺言書やエンディングノートに「相続対象」として記載しておく
5. 書き出し式テンプレートで一覧化しておく
紙に書き出して残すことで、家族がスムーズに確認できます。
無料テンプレートを活用して、主要なサービスや資産状況を一覧化しておきましょう。
テンプレートに含めるべき項目例:
- 使用サービス名(例:LINE、Google、Amazon)
- ログイン方法(メールアドレス・パスワード)
- 所持資産の有無(有料サービス・預金など)
- 解約希望の有無(残す/削除)
- 備考(家族へのメッセージなど)
よくある質問(FAQ)
Q1. デジタル遺品は法的に「遺産」として扱われますか?
はい、扱われます。ネット銀行や証券口座、仮想通貨などのデジタル資産は、法的にも「相続財産」として見なされます。
一方で、SNSやクラウド上のデータ(写真・メッセージなど)は、所有権よりも利用契約に基づくものであり、サービス提供者の規約に従う必要があります。
そのため、相続対象と非対象の区別を明確にしておくことが大切です。
Q2. スマホのロック解除ができないとき、家族はどうすればいいですか?
iPhoneやAndroidは、本人以外がパスコードを解除することが原則できません。
ただし、AppleやGoogleには「故人アカウントへのアクセス申請」制度があり、死亡証明書や相続人である証明を提出することで、限定的にデータを取得できる場合があります。
生前に連絡先(アクセスキー)を登録しておくことで、家族の負担を大幅に減らせます。
Q3. SNSアカウントは削除せずに残しておく方がいい?
どちらにもメリットがあります。
削除する場合は、なりすましや個人情報漏洩のリスクを防げます。
一方で、残す場合は思い出として家族や友人が見返すことができます。
FacebookやInstagramのように「追悼アカウント」として残す設定を選べば、安全かつ心の拠り所として活用できます。
Q4. デジタル遺品の整理はいつから始めるのが理想ですか?
早ければ早いほど安心です。特に40〜60代の方は、スマホやオンラインバンキングを複数利用しているため、情報が散らばりやすい傾向にあります。
まずは、「使用サービスのリストアップ」→「パスワード整理」→「家族への共有」の順で始めるのがおすすめです。
まとめ|見えない遺品だからこそ「今」から備えを
スマホやSNS、ネット銀行などの情報は、いまや誰にとっても欠かせない「デジタル資産」です。
しかし、見えない形で残るため、放置すると家族が困るトラブルにつながることも少なくありません。
- デジタル遺品とは:スマホ・SNS・ネット銀行などの電子的な資産やデータのこと
- 放置のリスク:ロック解除不能、個人情報の流出、財産の見落としなど
- 今できる備え:パスワード管理アプリや整理テンプレートを活用して、生前に記録を残す
あなたの想いとデジタル資産を、確実に未来へつなぐために。
今日から、できることから少しずつ始めてみましょう。
okusokuでは、終活や相続、デジタル遺品整理に関する情報を、正確でわかりやすくまとめています。読者の方が「迷わず次のステップに進める」「家族と安心して話し合える」ように、実用的で保存して役立つコンテンツづくりを心がけています。

