大切なご家族を亡くされた皆さまへ、心よりお悔やみ申し上げます。
深い悲しみの中、「何から手をつければよいのか分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ご家族が亡くなられた直後から行うべき手続きを、優先度と期限を明確にして整理しました。すべてを一度にやろうとせず、できることから少しずつ取り組んでいただければと思います。
目次
手続き全体の流れ(期限別)
期限 | 主な手続き | 緊急度 |
---|---|---|
当日~3日 | 死亡診断書取得、葬儀社連絡 | ★★★ |
7日以内 | 死亡届提出、火葬許可証取得 | ★★★ |
10~14日以内 | 年金受給停止届、健康保険返却 | ★★☆ |
3か月以内 | 相続放棄判断、準確定申告 | ★★☆ |
10か月以内 | 相続税申告 | ★☆☆ |
【緊急】当日~3日以内にすること
医師による死亡確認・死亡診断書の受け取り
亡くなった場所別の対応
人が亡くなった際の対応は、亡くなった場所や状況によって異なります。
病院で亡くなった場合は、その場で医師が死亡を確認し、速やかに死亡診断書が発行されます。
自宅で亡くなった場合は、まずかかりつけ医に連絡し、往診を依頼します。
医師が来て死亡を確認できれば、死亡診断書が発行されます。
ただし、かかりつけ医が不在であったり、夜間などで対応が困難な場合には、119番に連絡して救急車を呼ぶことになります。
一方で、事故や突然死など異常死の場合は、110番で警察に通報する必要があります。
警察による検視の後に、医師によって死体検案書が発行されます。
重要ポイント
- 死亡診断書は以降すべての手続きで必要になります
- 必ず5~10枚コピーを取っておいてください
- 発行費用:1通300~1,000円程度
家族・親戚・関係者への連絡
故人が亡くなった直後は、気持ちの整理もつかない中で、多くの人への連絡が必要になります。
限られた時間の中で混乱を避けるためにも、連絡の優先順位を把握しておくことが大切です。
連絡の優先順序
- 配偶者・子ども(直系家族)
- 故人の両親・きょうだい
- 配偶者の家族
- 親しい友人・知人
- 勤務先・関係団体
訃報で伝える内容
- 故人の名前と続柄
- 亡くなった日時
- 通夜・葬儀の予定(未定なら「後日連絡」でOK)
- 喪主の氏名と連絡先
葬儀社への連絡と搬送手配
死亡確認が済んだら、次に必要となるのが遺体の搬送と安置の手配です。
これは速やかに進める必要があるため、あらかじめ対応可能な葬儀社をリストアップしておくと安心です。
葬儀社に伝える情報
- 故人の氏名・年齢
- 亡くなった日時・場所
- 搬送先(自宅・安置所)
- 宗教・宗派
- 葬儀の希望(家族葬・一般葬など)
費用目安
- 搬送費:1~3万円
- 安置費:1日5,000~15,000円
【法定期限】7日以内の必須手続き
人が亡くなった後は、法律で定められた期限内に行わなければならない重要な手続きがあります。
特に「死亡届」は火葬の手配に直結するため、できるだけ早めに準備することが大切です。
死亡届の提出と火葬許可証の取得
まず行うべきは、死亡届の提出です。
この手続きによって、市区町村から火葬許可証が交付され、火葬を実施できるようになります。
提出先:故人の死亡地・本籍地・届出人の住所地のいずれかの市区町村役場
必要書類
- 死亡届(死亡診断書と一体)
- 届出人の印鑑
- 届出人の本人確認書類
注意点
- 期限は「死亡の事実を知った日から7日以内」
- 土日祝日も受付可能(時間外窓口利用)
- 火葬許可証は火葬当日に必要
健康保険証・介護保険証・マイナンバーカードの返却
死亡に伴い、故人が保有していた各種保険証や公的証明書の返却が必要になります。
これらも市区町村によって対応窓口が異なるため、整理して進めることがポイントです。
手続き場所
- 国民健康保険:市区町村役場
- 社会保険:勤務先経由
- 介護保険証:市区町村役場
葬祭費・埋葬料の申請も同時に
- 国民健康保険:葬祭費5万円程度
- 社会保険:埋葬料5万円
- 申請期限:2年以内
【重要】10~14日以内の手続き
死亡届提出後も、限られた期間内に進めなければならない公的手続きがあります。特に年金の受給停止と世帯主の変更は期限が短いため、速やかに対応することが求められます。
年金受給停止届の提出
故人が年金受給者だった場合は、年金の受給停止手続きが必要です。
放置していると不正受給と見なされる恐れがあるため、速やかに届け出ましょう。
提出期限
- 厚生年金:死亡日から10日以内
- 国民年金:死亡日から14日以内
手続き場所:年金事務所・年金相談センター
必要書類
- 年金受給権者死亡届
- 年金証書
- 死亡診断書のコピー
未支給年金の請求 亡くなった月分までの年金を家族が受け取れます(請求期限:5年以内)
世帯主変更届
故人が世帯主であった場合は、残された家族が住民票上の世帯主を変更する届出を行う必要があります。
対象:故人が世帯主で、残された世帯員が2人以上の場合
手続き場所:市区町村役場
期限:14日以内
【生活関連】2週間~1か月以内
葬儀や行政手続きが一段落したら、故人名義の各種契約の確認と整理に取りかかりましょう。
公共サービスやサブスクリプションは、自動継続されていることも多く、放置していると無駄な請求が発生するリスクがあります。
各種契約の名義変更・解約
故人が契約していた公共料金は、住居の継続使用の有無に応じて名義変更または解約が必要です。
公共料金(電気・ガス・水道)
- 継続なら名義変更
- 不要なら解約
- 口座振替の変更も忘れずに
通信関連(携帯電話・インターネット)
- 解約手続き
- 端末の返却確認
- 未払い料金の精算
定期契約・サブスクリプション
- 新聞・雑誌の配達停止
- 動画配信サービス
- 音楽ストリーミング
- クラウドストレージ
確認方法 クレジットカードや銀行口座の明細から契約中のサービスをリストアップ
雇用保険・高額療養費の手続き
故人が雇用保険を受給中だった場合、受給資格の返還と停止手続きが必要になります。これは遺族が代行可能です。
雇用保険受給者の場合
- ハローワークに連絡
- 雇用保険受給資格者証を返還
高額療養費の還付
- 申請期限:2年以内
- 加入していた健康保険組合に申請
【財産関連】1~3か月以内
財産に関わる手続きは、期限が決められているものも多く、うっかりすると損をする可能性がある重要項目です。この時期は、相続に関する意思決定や名義変更、各種請求などを計画的に進めていく必要があります。
相続の意思決定(重要:3か月以内)
故人の財産や債務を相続するかどうかは、死亡を知った日から3か月以内に決定し、必要であれば手続きを取る必要があります。
選択肢
- 単純承認:すべての財産を相続
- 限定承認:プラス財産の範囲内で借金も相続
- 相続放棄:すべての財産・借金を放棄
相続放棄の場合
- 家庭裁判所に申述
- 費用:収入印紙800円+郵送料
- 期限を過ぎると単純承認とみなされます
遺言書の確認
遺言書がある場合、遺産分割や手続きの方法が大きく変わるため、最初に確認する必要があります。
探す場所
- 自宅(金庫・仏壇・書斎)
- 貸金庫
- 公証役場(公正証書遺言の場合)
- 法務局(自筆証書遺言保管制度利用の場合)
見つかった場合
- 自筆証書遺言:家庭裁判所で検認手続き(勝手に開封禁止)
- 公正証書遺言:検認不要、そのまま執行可能
銀行口座の手続き
故人の死亡を金融機関が把握すると、口座は凍結され、引き出しや送金ができなくなります。解除や解約には、相続人全員の合意と書類が必要です。
口座凍結について金融機関が死亡を知ると口座を凍結します
解除に必要な書類
- 戸籍謄本(故人と相続人の関係証明)
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 本人確認書類
手続きの流れ
- 各金融機関に連絡
- 必要書類を確認
- 書類準備・提出
- 口座解約または名義変更
不動産・車両の名義変更
不動産や自動車などの名義も、法的に相続人へ変更する手続きが必要です。
不動産(相続登記)
- 手続き場所:法務局
- 2024年4月から義務化(3年以内)
- 費用:登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)
自動車
- 手続き場所:運輸支局
- 期限:15日以内
- 費用:500~3,000円程度
生命保険金の請求
故人が生命保険に加入していた場合は、保険会社に連絡して受取手続きを行う必要があります。
忘れず請求することで、生活資金や葬儀費用に充てることができます。
必要書類
- 保険証券
- 死亡診断書
- 受取人の本人確認書類
- 受取人の印鑑証明書
:3年以内(できるだけ早めに)
住宅ローンの団体信用生命保険
故人が住宅ローンを組んでいた場合、団体信用生命保険に加入していれば、残債が完済される可能性があります。
手続き
- 融資銀行に連絡
- 団信加入状況を確認
- 必要書類を提出
- 保険金でローン完済
【税務関係】4~10か月以内
相続が発生すると、生前の所得や財産に関わる税務申告が必要になります。
税金の手続きには厳密な期限が設けられており、遅れると延滞税が発生する可能性があるため注意が必要です。
準確定申告(4か月以内)
故人が生前に確定申告の義務があった場合、相続人が代わりに「準確定申告」を行う必要があります。
これは、死亡年の1月1日から死亡日までの所得に対して行う申告です。
対象者
- 年収2,000万円超の給与所得者
- 事業所得者
- 2か所以上から給与を受けていた方
- 年金以外に20万円超の所得があった方
必要書類
- 源泉徴収票
- 支払調書
- 医療費控除の領収書など
提出先:故人の住所地の税務署
相続税の申告・納付(10か月以内)
基礎控除額 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数
例:相続人が配偶者と子2人の場合 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
遺産総額が基礎控除額を超える場合のみ申告が必要
主な控除制度
- 配偶者控除:1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額
- 小規模宅地等の特例:居住用宅地330㎡まで80%評価減
【その他】遺品整理・デジタル遺品
故人の生活の痕跡を整理する作業は、精神的な負担も大きい一方で、相続や契約整理にも直結する大切なプロセスです。
不要な費用の発生や情報漏洩を防ぐためにも、計画的に行いましょう。
物理的な遺品整理
時間が経つほど手がつけにくくなるため、体力・気力に余裕のあるうちに少しずつ進めるのが理想的です。
進め方
- 貴重品・重要書類の確保
- 思い出品の選別
- 不用品の処分
業者依頼の目安
- 一軒家:20~80万円
- マンション:10~40万円
- 作業時間:1~3日
デジタル遺品の整理
確認すべきデジタル資産
- スマートフォン・パソコン内のデータ
- クラウドストレージ(Google Drive、iCloudなど)
- SNSアカウント(Facebook、Twitter、Instagram)
- 電子マネー・仮想通貨
- 定期購読サービス
対処法
- パスワードが分からない場合は各サービスに問い合わせ
- SNSは追悼アカウント設定や削除申請が可能
- 故人のスマホ・PCから契約中のサービスを確認
専門家への相談目安
相談内容 | 専門家 | 費用目安 |
---|---|---|
相続全般 | 司法書士 | 10~30万円 |
相続税申告 | 税理士 | 遺産額の0.5~1% |
相続トラブル | 弁護士 | 相談料1時間1万円 |
不動産評価 | 不動産鑑定士 | 20~30万円 |
まとめ
家族が亡くなった後の手続きは多岐にわたりますが、期限や優先度を把握して一つずつ進めていけば必ず完了できます。
この記事を参考に、落ち着いて手続きを進めていただければと思います。一人で抱え込まず、家族や専門家と協力しながら進めることが大切です。