大切なご家族を亡くされた皆さまへ、心よりお悔やみ申し上げます。
深い悲しみの中、「何から手をつければよいのか分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ご家族が亡くなられた直後から行うべき手続きを、できるだけわかりやすく流れに沿って丁寧にまとめました。
ひとつひとつ確認しながら、無理のないペースでお進めいただければと思います。
すぐにやるべきこと(亡くなった直後〜当日)
ご家族が亡くなられた直後は、深い悲しみの中でも、迅速な対応が求められる場面がいくつかあります。
まずは以下の流れに沿って確認しましょう。
医師による死亡確認・死亡診断書の受け取り
ご家族が亡くなられた際、まず必要になるのが医師による死亡確認です。
- 病院で亡くなった場合:その場で医師が死亡確認を行い、死亡診断書が発行されます。
- 自宅で亡くなった場合:かかりつけ医に連絡し、往診を依頼。対応が難しい場合は救急車を呼ぶ必要があります。
- 事故死・突然死などの場合:警察に連絡し、検視ののち医師によって「死体検案書」が発行されます(死亡診断書の代わりになる書類)。
この書類が必要となる手続き例:
- 死亡届の提出(市区町村役場)
- 火葬許可証の申請
- 生命保険金の請求
通常は死亡当日か翌日までに交付されます。
以後の手続きで原本提出が必要な場面もあるため、あらかじめ複数枚コピーをとっておくと安心です。
家族・親戚・関係者への連絡
訃報の連絡は突然のことで戸惑うことも多いですが、最低限連絡すべき親族や知人のリストをあらかじめ確認しておくと安心です。
まずは身近な家族や親族から順に連絡し、連絡可能な方には電話で、遠方や面識の少ない方には必要に応じて書面や口頭で丁寧に伝えましょう。
訃報連絡の際に伝える主な内容:
- 故人の名前と続柄(例:○○の父など)
- 亡くなった日付と時間
- 死因(必要に応じて簡潔に)
- 通夜・葬儀の日時と場所(未定の場合は後日連絡)
- 喪主の氏名と連絡先
形式にこだわる必要はありませんが、混乱を避けるために、日時・場所・連絡先などは事前にメモしておくと伝えやすくなります。
葬儀社への連絡と搬送手配
亡くなられた場所からご遺体を搬送するため、速やかに葬儀社に連絡します。
事前に決めていない場合は病院から紹介を受けることもできます。
搬送後すぐに葬儀の打ち合わせも始まるため、信頼できる葬儀社を選ぶことが大切です。
\葬儀社に伝えるべき主な情報:
- 故人の氏名と年齢
- 亡くなった日時と場所(病院・自宅など)
- 搬送先(自宅・安置所など)
- 宗教・宗派(わかる範囲で)
- 連絡先(喪主や家族の電話番号)
- 葬儀の希望(家族葬・一般葬など、あれば)
死亡から7日以内に必要な公的手続き
死亡届などは法律上の提出期限があり、役所での手続きが中心になります。
早めに必要書類をそろえ、忘れずに対応しましょう。
死亡届の提出と火葬許可証の取得
死亡届は医師が作成した死亡診断書を添えて市区町村役場に提出する必要があります。
この手続きにより火葬許可証が交付され、葬儀や火葬の準備が進められます。
提出は原則7日以内ですが、土日祝を挟む場合などは早めに相談しましょう。
健康保険証・介護保険証・マイナンバーカードの返却
亡くなられた方の健康保険証や介護保険証、マイナンバーカードは、市区町村へ返却する必要があります。
手続きは死亡届の提出と同時に進められることもあるため、役所の窓口で確認しておきましょう。
葬祭費や埋葬料の申請
故人が加入していた健康保険制度によっては、葬儀費用の一部が支給される制度があります。
申請できる金額や提出書類は制度によって異なりますが、葬儀後でも申請期限内であれば受け取れる可能性があります。
早めの確認と準備をおすすめします。
国民健康保険なら市区町村、協会けんぽや健康保険組合なら所属先を通じて申請しましょう。
2週間〜1か月以内にやるべき手続き
葬儀が終わって少し落ち着いた頃に、生活や行政に関する手続きを進めていくタイミングです。
期限があるものもあるため、すみやかに対応していきましょう。
年金の停止と未支給年金の請求
年金を受け取っていた方が亡くなった場合、そのまま放置していると不正受給とみなされる可能性があります。
できるだけ早く年金事務所に連絡を入れ、「年金受給権者死亡届(報告書)」を提出しましょう。
また、亡くなった月までに支給されるべき年金で、まだ振り込まれていない分(未支給年金)は、配偶者や同居していた家族などが請求できます。
請求には戸籍や通帳のコピーなどが必要になるため、手続きの流れを年金事務所に確認しながら進めると安心です。
公的年金の受給者が亡くなった場合、年金事務所への届け出が必要です。同時に、亡くなった月までの未支給年金の請求も可能です。
世帯主変更・住民票の修正など
故人が世帯主であった場合は、新たに世帯主となる人を指定するための手続きが必要です。市区町村の役所で「世帯主変更届」を提出することで対応できます。
また、住民票の続柄や世帯構成に変化がある場合は、その修正も合わせて行う必要があります。これらの手続きは、今後の行政サービスの受け取りや郵送物などにも影響するため、できるだけ早めに済ませておきましょう。
雇用保険受給資格者証の返還
故人が失業保険(雇用保険)を受給中だった場合は、ハローワークに連絡し、「雇用保険受給資格者証」などの返還手続きを行います。
必要書類としては、死亡届の写しや本人確認書類、振込口座情報などが求められることがあります。地域によって若干の違いがあるため、事前に所管のハローワークへ問い合わせるのがおすすめです。
高額医療費の還付申請
亡くなる直前まで入院や治療を受けていた場合、高額療養費制度により一部医療費が払い戻される可能性があります。
原則として2年以内であれば申請可能です。
医療費が高額だった場合は、忘れずに確認しましょう。
遺族年金の請求
故人が厚生年金や国民年金に加入していた場合、遺族には「遺族基礎年金」や「遺族厚生年金」が支給される制度があります。
支給対象や金額は、家族構成や収入などによって異なります。
申請しないと遺族年金は支払われないので、早めに申請をしましょう。
公共料金や携帯電話などの名義変更・解約
契約者が亡くなられた場合、生活インフラや通信サービスの契約内容を見直す必要があります。放置しておくと継続的に費用が発生するため、速やかに確認と手続きを行いましょう。
対象となる主な契約:
- 電気
- ガス
- 水道
- インターネット回線
- 携帯電話(スマートフォン)
契約によって対応や必要書類が異なるため、まずは請求書や契約書を確認し、速やかにカスタマーセンターに連絡を取りましょう。
名義変更で継続利用する場合は、相続人または同居家族が対応するケースが一般的です。口座振替の変更や請求先住所の修正なども同時に行うとスムーズです。
サブスク・定期購読などの契約停止
新聞・雑誌・動画配信サービス・音楽ストリーミング・クラウドストレージなど、さまざまな定期課金サービスが近年増えています。
これらの契約は放置していると月々の引き落としが続いてしまうため、忘れずに停止や解約の手続きを行いましょう。
クレジットカードの明細や、故人のスマホ・メールなどを確認し、契約中のサービスをリストアップすることから始めるとスムーズです。
相続・銀行・保険の手続き(1か月〜3か月以内)
財産や契約に関する名義変更・解約などの手続きが本格的に始まる時期です。
時間がかかることもあるため、早めの準備が安心につながります。
遺言書の有無確認と検認
亡くなった方が生前に遺言書を残していたかどうかを確認することが、相続の第一歩です。
自宅の金庫や引き出し、貸金庫、公証役場などを探し、見つかった場合は内容を確認します。
自筆証書遺言が見つかったときは、勝手に開封せず、家庭裁判所で「検認」を受ける必要があります。
公正証書遺言であれば、検認は不要で、スムーズに手続きに入ることができます。
相続人の調査と遺産分割協議
相続手続きにおいては、誰が相続人なのかを明確にすることが必要です。
相続人が確定したら、財産をどのように分けるかを話し合い、「遺産分割協議書」を作成します。
相続人全員の同意と署名・押印が必要になるため、場合によっては司法書士など専門家のサポートを受けるのが安心です。
銀行口座の凍結解除と解約手続き
金融機関は、口座名義人の死亡を知ると、その口座を凍結します。
凍結された口座からは出金や引き落としができなくなるため、相続人が手続きを行い、解約または名義変更を進める必要があります。
必要な書類の例:
- 戸籍謄本(故人と相続人の関係を証明)
- 遺産分割協議書(相続人全員の同意と押印)
- 相続人の本人確認書類(免許証など)
- 金融機関所定の申請書類
複数の金融機関に口座がある場合は、それぞれに問い合わせて必要書類と手順を確認してから進めましょう。
不動産・車・証券などの名義変更
不動産や自動車、株式・証券口座などの名義は、相続後に速やかに変更しておく必要があります。
不動産は法務局で「相続登記」を、自動車は陸運局で「移転登録」を行います。証券会社には、必要書類や名義変更の手順を確認してから対応しましょう。
これらは相続税の対象となることもあるため、税理士に相談しておくとスムーズです。期限があるものもあるので、早めに着手しましょう。
団体信用生命保険の請求(住宅ローン)
住宅ローンを組んでいた方が亡くなった場合、契約時に団体信用生命保険(団信)に加入していたケースが多く見られます。
この保険により、ローン残高が完済される可能性があります。
まずはローンを組んだ金融機関に連絡し、団信の加入状況と請求方法を確認しましょう。
手続きには死亡診断書や保険証券などの書類が必要になるため、事前に準備しておくとスムーズです。
生命保険金の請求
故人が生命保険に加入していた場合、保険会社に連絡して保険金の請求手続きを進めます。
通常、請求期限は「死亡日から3年以内」ですが、できるだけ早めに対応することで、相続や納税の準備もスムーズになります。
保険証券が見つからない場合でも、まずは保険会社に直接確認すると良いでしょう。
税金関連の手続き(4か月〜10か月以内)
税務に関する手続きは、相続財産の有無や内容にかかわらず、多くの方に関係してくる大切な手続きです。
期限を過ぎると延滞金や加算税などが課されることがあるため、早めに取りかかりましょう。
準確定申告や相続税の申告は専門知識が必要な場合も多く、必要に応じて税理士への相談も視野に入れると安心です。
所得税の準確定申告
故人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得については、相続人が代わりに所得税を申告する「準確定申告」が必要です。
これは、通常の確定申告とは別に行う手続きで、提出期限は死亡日から4か月以内と比較的短いため、早めの準備が必要です。
故人に給与や年金、事業収入などがあった場合は、源泉徴収票や支払明細書などを集め、必要に応じて税理士に相談すると安心です。
固定資産税の納税
不動産を相続した場合、その不動産にかかる固定資産税は原則として相続人が納めることになります。
相続登記(名義変更)を済ませた後、役所から納税通知書が届きます。
納税義務が相続人全員にあるのか、一部の相続人が代表して支払うのかなど、話し合いをしておくとトラブル防止につながります。
名義変更後は、自治体からの連絡が行き届くよう住所変更も忘れずに行いましょう。
相続税の申告と納付
遺産の総額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告と納付が必要です。
申告期限は、亡くなった日の翌日から10か月以内となっており、期限を過ぎると加算税や延滞税が課されることがあります。
不動産、預貯金、有価証券などの評価や、控除の適用可否を判断するために、税理士に相談するのが一般的です。
相続税の納付は一括が基本ですが、場合によっては延納や物納も選択肢になります。
遺品整理
物理的な遺品整理は、非常に体力と時間を要する作業です。
家族だけで行うのが難しい場合は、無理せず専門業者に相談しましょう。
近年では、スマホやパソコン、クラウドサービス、SNSなど、故人が使っていたデジタル機器やオンラインアカウントも重要な「遺品」として扱われています。中には金銭が関係する契約や個人情報、写真やメッセージといったプライバシー性の高いデータも含まれるため、放置すると家族が困るケースもあります。
遺品整理・不用品処分のタイミングと進め方
遺品整理は、故人との思い出が詰まっている分、精神的にも体力的にも大きな負担となります。
多くの場合、四十九日法要を終えてから本格的に始めるケースが多いですが、焦らず自分たちのペースで進めることが大切です。
物が多くて手に負えない場合や、遠方で頻繁に通えない場合には、遺品整理の専門業者に依頼するのも選択肢の一つです。事前に見積もりを取り、信頼できる業者を選ぶと安心して任せることができます。
家族が亡くなったらすることチェックリスト
- 死亡診断書を受け取っているか
- 死亡届を提出し、火葬許可証を取得しているか
- 健康保険・年金などの返却・申請を済ませているか
- 銀行口座や保険の手続きを始めているか
- 名義変更や契約の整理を進めているか
- 相続や税金の手続きの流れを把握しているか
- 専門家への相談先をリストアップしているか
このように準備状況を可視化することで、今やるべきことが明確になります。
まとめ|少しずつ、できることから
家族が亡くなったあとの手続きは、量も多く、精神的にも大きな負担になります。すべてを一度にやろうとせず、できることから少しずつ取り組むことが大切です。
この記事で紹介した内容を参考に、落ち着いたタイミングで一歩ずつ手続きを進めてみてください。