もし突然、自分が亡くなってしまったら…。スマホやiCloudに残した写真やメッセージ、大切な連絡先はどうなるのでしょうか。
Appleはプライバシーを重視しているため、家族であっても正しい手続きを踏まなければデータにはアクセスできません。
そこで用意されているのが「故人アカウント管理連絡先(Digital Legacy)」です。
生前に指定しておくことで、死後に家族や信頼できる人がiCloudのデータを受け取れる仕組みです。
本記事では、設定方法・必要書類・引き継げるデータと引き継げないデータ・注意点までをわかりやすく解説します。デジタル遺品への備えを検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
故人アカウント管理連絡先が必要な理由と機能概要
なぜ故人アカウント管理連絡先が必要なのか
現代では写真や連絡先、メッセージなど、多くの思い出や情報がスマホやクラウド上に保管されています。
もしものときに、それらデジタル遺品に家族がアクセスできなくなると、大きな困りごとになります。
Appleはプライバシーを非常に重視しており、正当な手続きなしに本人以外がデータへアクセスすることは認めていません。
そのため、生前に信頼できる人を登録しておくことで、自分の死後に大切なデータを確実に残せるようにする仕組みが「故人アカウント管理連絡先」です。
故人アカウント管理連絡先を設定していない場合の対応
設定していなかった場合、家族がデータを引き継ぐのは非常に困難です。
Appleは原則として家族でも開示せず、裁判所命令などの法的書類が必要になります。
時間も費用もかかり、必ず承認されるわけではありません。事前に設定しておくのが最も確実な方法です。
故人アカウント管理連絡先の仕組みと特徴
基本の流れ
【生前】 利用者が信頼できる人を「管理連絡先」に登録 ↓ 【死亡後】 登録された人が申請(アクセスキー+死亡証明書) ↓ 【Appleで確認】 専用Apple IDが発行され、iCloudのデータにアクセス可能
特徴の一覧
項目 | 内容 |
---|---|
登録できる人数 | 最大5人まで(後から変更可能) |
生前のアクセス | 登録しても、生前はデータを見られない(死後申請が必須) |
アクセス手続き | 「アクセスキー」+「死亡を証明する書類」で申請 |
アクセス可能な範囲 | iCloud上のデータ(写真・メッセージ・メモ・ファイルなど) |
アクセス不可なもの | 購入済みコンテンツ、Apple Pay情報、パスワード類 |
アクセス可能期間 | 最大3年間(その後データは削除) |
その他 | 申請承認後、元のApple IDは無効化され、アクティベーションロックも解除 |
※詳細は Apple公式サポートページ を参照してください。
故人アカウント管理連絡先の設定方法とアクセスキー発行
利用するには条件があり、正しい手順で登録しなければ機能しません。ここでは対応デバイスや準備、設定方法を整理します。
- 条件:iOS/iPadOS 15.2以降、macOS 12.1以降/Apple IDの二要素認証が有効/13歳以上
手順(iPhone例)
- 設定アプリ → 自分の名前をタップ
- 「サインインとセキュリティ」→「故人アカウント管理連絡先」
- 追加する連絡先を選び、アクセスキーを発行
- メッセージ送信または印刷して相手に渡す
設定後は通知メールが届き、相手が承諾すればアクセスキーが自動保存されます。
アクセスキーの共有と安全な保管方法
アクセスキーは申請時に必須で、紛失すると手続きできません。確実に共有し、安全に保管しておくことが大切です。
- メッセージで共有:相手のAppleデバイスに自動保存され管理が容易
- 紙で共有:印刷して手渡しや郵送、遺言書類と一緒に保管
- バックアップ:複製を自分でも保管し、家族に預けて二重管理
故人のデータへのアクセス申請方法と必要書類
実際に亡くなった後は、指定された人がAppleへ申請します。必要な書類を知っておくと安心です。
- 必要なもの
- アクセスキー
- 死亡を証明する書類(日本では「死亡の記載がある戸籍謄本」)
承認されると専用Apple IDが発行され、iCloudデータにログイン可能になります。
元のApple IDは無効化され、アクティベーションロックも解除されます。
引き継げるデータと引き継げないデータ
Apple公式サポート(故人アカウント管理連絡先について)によると、対象となるデータは次のとおりです。
引き継げるデータ | 引き継げないデータ |
---|---|
写真・動画 | 購入済みコンテンツ(映画・音楽・アプリなど) |
メッセージ | Apple Pay情報 |
連絡先 | iCloudキーチェーン(パスワード類) |
メモ | サブスクリプション契約情報 |
iCloud Driveのファイル | 端末のパスコードや本体データ |
ヘルスケアデータ | その他法的に制限のある情報 |
※アクセス可能期間は3年間。その後データは削除されます。
注意点(よくある誤解と失敗例)
よく混同されるのが「端末のパスコード」と「クラウドのデータ引き継ぎ」の違いです。
- iPhoneのパスコードはAppleでも解除できない(端末内データは初期化しないと使えない)
- 故人アカウント管理連絡先はクラウドのデータにアクセスできる仕組み
つまり、端末を使うこととデータを引き継ぐことは別物です。
設定は便利ですが、誤解や失敗も多いので注意が必要です。
- 生前に勝手に見られることはない
- 設定していないと家族でもデータを引き継げない
- アクセスキーを渡し忘れると無効になる
- Apple IDやパスワードの共有で代用するのは危険
よくある質問(FAQ)
故人アカウント管理連絡先を登録すると、生前でもデータを見られてしまいますか?
いいえ。生前はアクセスできません。本人が亡くなった後に、登録された相手が「アクセスキー」と「死亡を証明する公的書類」を提出し、Appleの承認が下りてはじめてアクセス可能になります。
アクセスキーを紛失した場合、どうなりますか?
アクセスキーは申請に必須です。紛失すると手続きできません。メッセージ(デジタル)と紙の両方で保管する、家族に控えを預けるなど、複数経路での保管をおすすめします。
登録していなくても、裁判所の手続きをすればデータを引き継げますか?
可能性はありますが非常に困難です。裁判所命令などの法的書類が必要となり、時間や費用がかかるうえ、必ず承認されるとは限りません。生前に登録しておくのが確実です。
どのくらいの期間、データにアクセスできますか?
承認後、原則として最大3年間アクセスできます。期間経過後はデータが削除されるため、必要なデータは速やかにバックアップしてください。
詳細や最新情報は、Apple公式サポートの一次情報をご確認ください:故人アカウント管理連絡先について
まとめ
「故人アカウント管理連絡先」は、デジタル遺品を安全に家族へ残すためのApple公式の仕組みです。
登録してアクセスキーを共有しておけば、家族は裁判所を通さずに思い出のデータを受け取れます。
逆に設定していないと、大切な写真やメッセージが永遠に失われるリスクも。
もしもの時に備え、早めに設定しておくことをおすすめします。

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