葬儀や法要でのお布施、正しく渡せていますか?
「いつ渡せばいいのか」「どう手渡すのが正しいのか」「袱紗は必要?」——初めての方はもちろん、何度か経験していても迷いがちなのがお布施のマナーです。
お布施は単なる謝礼ではなく、僧侶への感謝と仏教における「布施行」という大切な行為。
だからこそ、失礼のないように、心を込めて渡したいものです。
この記事では、渡し方のタイミングから、袱紗の扱い方、金額の目安、避けるべきNGマナーまで、わかりやすく解説します。
目次
お布施を渡す前に知っておきたい基本知識
お布施は、僧侶への「お礼」ではなく、仏教における「施し(布施行)」の一つとしての行為です。
もともとは、仏法を学ぶ者や修行者に対して支援するという意味があり、感謝や信仰の気持ちを表す大切な行為です。
仏教では「布施」は修行のひとつとされ、物やお金を施すことで自らの煩悩を減らし、功徳を積むという教えがあります。
つまり、お布施は僧侶に「してあげる」のではなく、施主自身が功徳を積ませていただく機会でもあるのです。
金額や形式にとらわれるよりも、誠意をもって丁寧に渡すことが重視されます。
お布施を渡すタイミング(通夜・葬儀・法要の違い)
葬儀や法要では、僧侶が読経や供養を行ってくださいます。そのお礼としてお布施を渡すタイミングは場面によって異なります。
葬儀の場合は「読経が終わった後」、法要では「お斎(会食)の前後」が一般的です。通夜の場合は、通夜終了後に僧侶が控室に戻られたタイミングで渡すのがスムーズです。
いずれも慌ただしい式中ではなく、落ち着いた場で感謝の言葉を添えて手渡しましょう。僧侶が退席される前に渡し忘れないよう、あらかじめ袱紗に包んで手元に準備しておくことが大切です。
お布施と「お車代・御膳料」との違い
お布施は読経への感謝を表すものであり、「お車代」「御膳料」は別の目的です。
お車代は僧侶の交通費として、自宅や斎場まで来ていただいた際に渡します。
相場は5,000円〜1万円程度が一般的です。
御膳料は、法要後のお斎(会食)に僧侶が参加されない場合に、食事の代わりとして渡す謝礼を指します。相場は5,000円〜2万円程度です。
これらは一つの封筒にまとめず、別封筒に分けて用意するのが正式なマナーです。それぞれに「お布施」「御車代」「御膳料」と表書きを分けて準備しましょう。
お布施を渡すタイミングとマナー
お布施を渡すタイミングや方法には、明確な作法があります。
どの場面で・どんな言葉を添えて渡すべきかを把握しておくと、失礼のない丁寧な所作につながります。
葬儀の場合:読経後に控室で渡すのが基本
葬儀では、僧侶の読経が終わり、焼香後や閉式後に控室で渡すのが一般的です。
僧侶が退席される前に、施主(喪主)が直接お礼を述べながら渡すと丁寧です。
葬儀は進行が慌ただしいため、式の途中で渡すのは避け、僧侶がひと息つかれるタイミングを見計らいましょう。
葬儀社のスタッフに「お布施を渡すタイミング」を事前に確認しておくと安心です。
例:「本日はご丁寧にお勤めいただき、誠にありがとうございました。こちらはお布施でございます。」
法要(初七日・一周忌など)の場合
法要では、読経が終わり僧侶が退席する前に渡します。
お斎の有無を確認し、「お布施」「お車代」「御膳料」をそれぞれ準備しておくとスムーズです。
法要は自宅や法要会館で行われることも多く、葬儀より落ち着いた雰囲気で渡せます。
お斎に僧侶が同席される場合は、お斎の前に渡すのが一般的です。
同席されない場合は御膳料も忘れずに用意しましょう。
混在させないことが基本です。それぞれの封筒を袱紗に重ねて入れ、上から順に「お布施」「御車代」「御膳料」と渡すとスマートです。
郵送する場合のマナー(現金書留・添え状つき)
遠方などで直接渡せない場合は、現金書留で郵送します。お布施袋をそのまま同封し、短い添え状を添えるのが礼儀です。
添え状には、法要の日時や感謝の言葉、直接お渡しできないお詫びを簡潔に記します。
法要の1週間前を目安に届くよう手配すると安心できます。
郵送の際も、お布施袋は袱紗に包んでから現金書留の封筒に入れると、より丁寧な印象になります。
お布施の正しい渡し方(手順つき解説)
実際にお布施を渡す場面では、姿勢・動作・袱紗の扱い方まで注意が必要です。以下の手順を押さえておけば、誰でも失礼なく実践できます。
① 袱紗(ふくさ)の上にお布施袋を置く
袱紗は「大切なものを包む」意味を持ち、直接封筒を手に持たずに渡すための礼儀です。
弔事の場合はグレー・紺・紫など落ち着いた色を選びましょう。
袱紗には「包むタイプ」と「挟むタイプ(金封袱紗)」があります。包むタイプの場合は、弔事では右開き(右→下→上→左の順)に包むのが正式です。
慶事とは逆になるので注意しましょう。
袱紗がない場合は、無地の風呂敷やハンカチでも代用できますが、できれば正式な袱紗を用意することをおすすめします。
② 「本日はありがとうございました」と一言添える
無言で渡すのは避け、読経への感謝を短く伝えます。
形式に偏らず、心のこもった言葉が何よりのマナーです。
難しく考える必要はありません。
「本日はありがとうございました」「ご丁寧にお勤めいただき感謝申し上げます」など、シンプルな言葉で十分です。
緊張して言葉が出にくい場合は、深く一礼するだけでも気持ちは伝わります。
大切なのは、感謝の心を込めて渡すことです。
③ 僧侶の正面に袋の表を向けて両手で差し出す
封筒の「表書き(お布施)」が僧侶側に見えるようにして渡します。袱紗を開いてから封筒を取り出し、両手で差し出すのが正式な所作です。
具体的には、袱紗を開いて封筒を取り出したら、自分から見て封筒が逆さまになるように180度回転させます。
こうすることで、僧侶から見て正しい向きになります。
両手で封筒の下を支えるように持ち、目の高さより少し低い位置で差し出すと丁寧な印象になります。
④ 袱紗は受け取られた後に静かに下げる
お布施を受け取られた後は、深く頭を下げて袱紗をたたみます。
動作を急がず、静かな所作を心がけると良い印象になります。
袱紗をたたむ際も、慌てずゆっくりと丁寧に。たたんだ袱紗は脇に置くか、持参したバッグにしまいます。
複数の封筒を渡す場合は、一つずつ丁寧に渡し、それぞれに「こちらは御車代でございます」などと一言添えると親切です。
⑤ 複数僧侶がいる場合の渡し方
複数人の僧侶が来られる場合は、導師(代表僧侶)にまとめて渡します。
個別に分ける必要はなく、封筒の宛名も「御導師様」等に統一すると分かりやすくなります。
ただし、地域や寺院によっては個別に用意する慣習もあるため、事前に菩提寺や葬儀社に確認しておくと安心です。
まとめて渡す場合は、「皆様へのお礼として」と一言添えると、複数の僧侶への感謝が伝わります。
宗派別・法要別のお布施の目安金額と注意点
お布施には全国一律の決まりがないため、相場を把握しておくと判断しやすくなります。
地域や菩提寺の慣習で幅がある点を前提に、以下の目安を参考にしてください。
宗派別の相場
宗派や地域の慣習で金額は変わります。下表は一般的な目安です。迷う場合は、菩提寺に事前確認するのがもっとも確実です。
宗派 | 葬儀 | 一周忌 | 三回忌以降 |
---|---|---|---|
浄土真宗 | 5〜10万円 | 1〜3万円 | 1〜3万円 |
曹洞宗 | 5〜10万円 | 1〜3万円 | 1〜3万円 |
日蓮宗 | 5〜10万円 | 1〜3万円 | 1〜3万円 |
真言宗 | 5〜15万円 | 1〜5万円 | 1〜3万円 |
上記はあくまで目安であり、都市部では高め、地方では低めの傾向があります。また、戒名のランクや読経の回数によっても金額は変動します。
「お気持ちで」と言われることもありますが、これは「いくらでもよい」という意味ではなく、相場の範囲内で用意するのが一般的です。
法要ごとの金額目安
初七日・一周忌・三回忌などでは、読経回数やお斎の有無で金額が変動します。お斎がない場合でも、御膳料を別包みで用意するのが一般的です。
初七日:1〜5万円(葬儀と同日の場合は葬儀のお布施に含むこともあります)
四十九日:3〜5万円
一周忌:3〜5万円
三回忌以降:1〜3万円(回忌が進むにつれて規模が小さくなるため、金額も控えめになります)
お盆・お彼岸の供養:5,000円〜3万円
法要を自宅で行う場合と、寺院で行う場合でも金額が異なることがあります。不明な点は遠慮せず菩提寺に相談しましょう。
新札・旧札どちらが正しい?
お布施は香典と異なり「不祝儀」ではありません。
新札またはきれいな状態の札を用意すると、感謝の気持ちがより丁寧に伝わります。
香典では「急な不幸に備えて新札を用意していたわけではない」という配慮から旧札を使いますが、お布施は法要の日程が決まっており、事前に準備する性質のものです。
ただし、新札にこだわる必要はなく、使用済みでもしわや汚れのない、きれいな状態のお札を選ぶことが大切です。
破れたお札や極端に古いお札は避けましょう。
お布施を渡すときに避けたいNGマナー
形式に見えて、所作は相手への敬意を映します。うっかりやりがちな失礼マナーを事前に知っておくと、当日の不安を減らせます。
袱紗を使わず裸で渡す
封筒をむき出しで持参するのは失礼にあたります。小さな布袋や袱紗を必ず使用し、丁寧な扱いを心がけましょう。
ポケットやバッグから直接封筒を取り出して渡すのも避けるべきです。
袱紗は「大切なものを丁寧に扱っています」という気持ちの表れであり、最低限のマナーとして認識しておきましょう。
金額を口に出して伝える
「〇万円です」と明言するのは不粋とされます。お布施は「心からの施し」であり、金額表明は避けるのが作法です。
僧侶から金額を聞かれることは通常ありません。もし「お気持ちで結構です」と言われた場合も、相場を参考に適切な金額を包み、金額には触れずに渡すのがマナーです。
お布施の金額は、施主と仏様との間の問題であり、僧侶に対して説明や報告をするものではないという考え方が基本にあります。
葬儀社や受付に預けて終わりにする
僧侶へのお布施は、施主が直接手渡すのが望ましいとされています。代理で渡す場合も、丁寧な言葉を添えましょう。
やむを得ず代理の方に依頼する場合は、「施主の○○に代わりまして」と一言添えてもらうよう伝えておくと良いでしょう。
葬儀社のスタッフに預ける場合も、「直接お渡しできず申し訳ございませんが、よろしくお伝えください」といった配慮の言葉を添えることが大切です。
迷ったときの文例集(添え状・挨拶)
感謝の言葉を添えることで、形式にとどまらない心遣いが伝わります。ここでは場面別に使える簡潔な文例を示します。
法要で渡すときの一言挨拶
基本の挨拶:
「本日はご多忙のところ、誠にありがとうございました。ささやかですが、どうぞお納めください。」
丁寧な挨拶:
「本日はご丁寧にお勤めいただき、心より感謝申し上げます。こちらはお布施でございます。」
シンプルな挨拶:
「本日はありがとうございました。お布施をお納めください。」
どの表現でも問題ありませんが、感謝の気持ちを込めて、落ち着いてゆっくり伝えることが大切です。
郵送時の添え状文例
基本的な添え状:
拝啓 このたびは○回忌法要に際し、ご読経を賜りありがとうございます。感謝の気持ちを込めて、心ばかりのお布施をお送りいたします。何卒よろしくお願い申し上げます。敬具
より丁寧な添え状:
拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
このたびは故○○の○回忌法要において、ご多忙の中ご読経を賜り、誠にありがとうございました。本来であれば直接お伺いしてお礼を申し上げるべきところ、遠方のため略儀ながら書中にてお礼申し上げます。
ささやかではございますが、感謝の気持ちとしてお布施を同封いたしましたので、何卒お納めくださいますようお願い申し上げます。
今後とも変わらぬご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。敬具
添え状は白無地の便箋に黒または濃紺のペンで書くのが正式です。パソコンで作成しても構いませんが、署名だけは手書きにすると丁寧な印象になります。
お布施のマナーに関するよくある質問
お布施はいつ渡すのが正しいですか?
葬儀では読経が終わった後に僧侶が控室へ戻られたタイミング、法要ではお斎(会食)の前後が一般的です。
式の最中など慌ただしい時間を避け、落ち着いた場で感謝の言葉を添えて渡しましょう。
お布施とお車代・御膳料は一緒にしてもいいですか?
お布施・お車代・御膳料はそれぞれ目的が異なるため、別の封筒に分けて用意するのが正式なマナーです。
表書きはそれぞれ「お布施」「御車代」「御膳料」と分け、袱紗に重ねて入れると丁寧な印象になります。
お布施の金額はいくらくらいが目安ですか?
宗派や地域によって異なりますが、一般的な目安は次の通りです。
葬儀では5〜10万円、法要では1〜5万円程度、一周忌以降は1〜3万円ほどが相場です。菩提寺や葬儀社に相談して確認しておくと安心です。
新札と旧札、どちらを使うのが正しいですか?
お布施は不祝儀ではないため、新札またはきれいな状態のお札を使うのがマナーです。
香典とは違い、事前に準備しても失礼にはなりません。しわや汚れのあるお札は避けましょう。
お布施を郵送しても失礼になりませんか?
直接渡せない場合は、現金書留で郵送しても問題ありません。
お布施袋を袱紗に包み、感謝の言葉を添えた添え状を同封します。法要の1週間前を目安に届くように手配すると丁寧です。
まとめ|感謝を形にして丁寧に伝えるのが一番のマナー
お布施を渡すことは、僧侶への「感謝」を形にする大切な行為です。金額や作法にとらわれすぎず、誠意をもって丁寧に行えば失礼にはなりません。
お布施の渡し方で大切なポイント:
・袱紗を使い、丁寧に包んで持参する
・読経後の落ち着いたタイミングで渡す
・感謝の言葉を添えて、両手で差し出す
・お布施・お車代・御膳料は別封筒で用意する
・新札またはきれいな状態のお札を使う
慣れない場面だからこそ、正しいマナーを知り、安心して気持ちよく感謝を伝えましょう。分からないことがあれば、菩提寺や葬儀社に遠慮なく相談することも大切です。
最も重要なのは、形式よりも「心を込めて感謝を伝える」という姿勢です。この記事を参考に、自信を持ってお布施を渡してください。

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