スマホやパソコンのロックが解除できない、ネット銀行の口座がわからない──。
そんな「デジタル遺品」のトラブルが、残された家族を悩ませています。
この記事では、デジタル遺品のトラブル実例をもとにした防止策と解決方法を紹介。
今からできる備えで、いざという時に備えましょう。
目次
よくあるデジタル遺品トラブル事例と解決方法

スマホやPC、ネット銀行、SNSなど、私たちの生活は多くのデジタル情報であふれています。
これらは、亡くなった後に”遺品”として残され、適切に管理されなければ思わぬトラブルにつながることがあります。
ここでは、実際に起こりやすい事例を紹介します。
<トラブル1>故人の友人や知人に連絡が取れない

スマホの中にしか連絡先が保存されておらず、葬儀や訃報を知らせることができないケースがあります。
特におひとりさまや独居高齢者で起こりやすい問題です。
解決方法:生前に「連絡先リスト」を作成し、家族に共有しておく
こうした事態を防ぐために有効なのが、生前に「信頼できる知人・友人リスト」を作っておくことです。
具体的な対策方法
- 名前・連絡先(電話/メール)・関係性などを記載した「連絡先リスト」を作成
- 家族や信頼できる人に、その保管場所と取り扱いの意図を伝えておく
- SNSアカウントに登録している友人リストの一部を控えておくのも有効
- 終活ノートやエンディングノートに一緒に記入しておくと管理がしやすい
<トラブル2>遺影に使える写真が見つからない

プリントされた写真がなく、デジタルデータにアクセスできないため、遺影写真の選定が困難になることがあります。
適切な写真が見つからず、やむを得ず過去の集合写真を使う例もあります。
解決方法:生前からエンディングノートや事前の準備をしておく
具体的な対策方法:
- 本人が納得できる写真(表情・服装・画質など)を1〜2枚、事前に選んでおく
- デジタルデータであれば、写真フォルダ名やファイル名に目印をつけておく(例:「遺影候補_2023.jpg」など)
- エンディングノートで使ってほしい写真と保管場所を家族に伝える
<トラブル3>スマホやPCにアクセスできない

端末がロックされたままになり、写真や連絡先、重要なファイルにアクセスできないケースは非常に多く見られます。
特にiPhoneやMacはセキュリティが厳しく、本人以外が解除するのはほぼ不可能。家族の写真やメモ、仕事上のデータが取り出せず困る例が増えています。
解決方法:パスワード管理と緊急アクセス設定で“開ける状態”を作っておく
具体的な対策方法:
- パスワード管理アプリを活用し、スマホ・PC・アカウント情報を一元管理し共有できるようにする
- パスワードを書いたメモを用意する場合は、保管場所と存在を信頼できる家族にだけ伝えておく
- エンディングノートに、「端末とパスワードの所在欄」を記入しておくと安心
<トラブル4>ネット銀行・証券口座がわからない

紙の通帳が存在しないネット銀行では、ログイン情報がなければ残高も相続財産も把握できません。
証券口座やFX口座の情報がわからず、相続税申告にも影響が出ることがあります。
解決方法:金融資産の“存在”をメモしておく
残高や資産内容までは不要でも、「口座の存在」さえ伝われば相続手続きのきっかけになります。
さらに利用しているメールアドレスを記録しておくと、ログインの手がかりになります。
具体的な対策方法:
- ネット銀行・証券口座・仮想通貨取引所など、利用中の金融サービス名を一覧で書き出しておく
- エンディングノートやデジタル遺品整理ガイドの「金融資産一覧」欄に、最低限の情報を記入しておく
<トラブル5>クレジットカード・サブスクが自動引き落としされ続ける

契約者が死亡しても、放置されたサブスクリプション(動画配信、音楽、クラウドサービスなど)が毎月引き落とされてしまうトラブルも。
カードの停止が遅れると、数ヶ月~数年単位で無駄な支払いが発生します。
解決方法:契約中のサービス一覧を残し、支払い元口座やカード情報も明示しておく
具体的な対策方法:
- 利用しているサブスクや定期支払いサービスを一覧表にして残しておく
- 可能であれば「支払い元のカード会社名」「請求日」「月額金額」などもメモしておく
- エンディングノートに記入しておく
トラブルが起きてしまったときの対処法

どれだけ備えていても、予期せぬタイミングでトラブルが発生することはあります。
大切なのは、慌てず適切な手段をとること。
ここでは、実際にトラブルが起きてしまったときの対応方法をご紹介します。
AppleやGoogleなどの公式サポートを利用する
たとえば、Appleでは「故人アカウント管理連絡先」という制度を使えば、あらかじめ登録された相手がデータにアクセスできます。
- Appleサポートページ:Apple Accountの故人アカウント管理連絡先を追加する方法
Googleも「アカウント無効化管理ツール」を使うことで、指定の連絡先に情報を渡すことが可能です。
- Googleサポートページ:アカウント無効化管理ツール
専門業者や弁護士に相談する
スマホやPCの解除、アカウントの相続などが難航する場合は、専門の業者や法律家の力を借りましょう。
- デジタル遺品整理業者(データ復旧・ロック解除)
- 相続専門の弁護士・司法書士
相談先を見つけておくことが、最初の安心につながります。
今すぐチェック!デジタル遺品トラブルの備えチェックリスト
以下のような点を確認しておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
- パスワード管理方法を家族と共有しているか
- 金融・SNS・サブスクなどのアカウントをリスト化しているか
- スマホやPCのロック解除手順を明記しているか
- エンディングノートにデジタル情報を記入しているか
- 万が一の相談先を把握しているか
このような備えを日頃から進めておくことで、いざというときの混乱やトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
よくある質問
Q1. デジタル遺品とは具体的にどのようなものですか?
デジタル遺品とは、故人が生前に使用していたデジタル機器やサービスに残された「データ」や「アカウント情報」などを指します。
たとえば、スマホ・パソコン・クラウドストレージ・SNSアカウント・ネット銀行・有料アプリ・仮想通貨などが該当します。
見落とされがちですが、定額制サービス(サブスク)やメルマガ契約、オンラインストレージもデジタル遺品の一部です。
Q2. エンディングノートとデジタル遺品対策はどう関係していますか?
エンディングノートは、自分の死後に備えて情報を残すためのノートです。
デジタル遺品対策では、ノートに使用中のアカウント一覧、パスワードの保管場所、重要ファイルの所在などを記録しておくと家族がスムーズに整理できます。
また、写真データや希望するSNSアカウントの削除・保存方針も明記しておくと、トラブル防止に役立ちます。
Q3. 故人のスマホやPCのロックは家族でも解除できないのですか?
はい、iPhoneやMacなどの端末では、正規のパスコードやApple IDがない限りロック解除は非常に困難です。
一部のAndroid端末では解除の可能性もありますが、いずれも法的な手続きや時間・費用がかかるケースがあります。
そのため、Appleの「故人アカウント管理連絡先」や、Googleの「アカウント無効化管理ツール」などの事前設定が推奨されます。
Q4. デジタル遺品整理を業者に頼む場合、費用はどのくらいかかりますか?
デジタル遺品整理業者に依頼する場合、内容により費用は大きく異なります。
スマホやPCのロック解除では、数万円〜30万円前後が相場とされています。
費用の内訳は、作業時間、機器の種類、データ復旧の有無などで変動します。
また、業者によっては成功報酬型や出張費込みのプランもあるため、事前に見積もりを取り、契約内容をしっかり確認することが重要です。
まとめ|“もしも”のときのために、今日からできる備えを
デジタル遺品をめぐるトラブルは、今や誰にでも起こり得る身近な問題です。
けれども、生前に少しだけ意識して整理しておくことで、多くのトラブルは防ぐことができます。
パスワード管理や契約リストの作成、家族との共有など、できることから一歩ずつ始めていきましょう。
記事内で紹介したチェックリストや実例を活用し、自分と家族の安心を整えてみてください。
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