「墓じまいをした後、お骨はどうすればいいの?」
お墓の後継者がいない、管理費が払えない、遠方で通えないなどの理由から墓じまいを考える方が増える一方で、その後のお骨の扱いに迷うケースが少なくありません。
本記事では、お骨の行き先としての5つの選択肢を比較し、それぞれの特徴や手続き、費用、気をつけたいポイントまで徹底解説します。
目次
まず知っておくべきこと:墓じまい後のお骨の基本
墓じまい=お骨の移動・再供養
墓じまいとは、既存の墓を撤去し、納められていた遺骨を別の場所へ移す「改葬」のことを指します。
単に墓石を撤去するだけでは完了しません。遺骨をどう扱うかを家族で話し合い、正式な手続きを踏む必要があります。
墓じまいをする時の5つの選択肢とは?徹底比較
① 改葬(他の墓地・納骨堂・合祀墓)
遺骨を新しいお墓や納骨施設に移す一般的な方法です。
種類別の特徴
一般墓地:従来型の個別墓
家族専用の墓石を建て、代々受け継いでいく形式です。墓石代、永代使用料、年間管理費が必要で、定期的な草むしりや掃除などの維持管理も必要になります。しかし、いつでも自由にお参りでき、家族の絆を感じられる安心感があります。
合祀墓:複数の遺骨を合同で納める
他の方々の遺骨と一緒に納める共同墓です。個別の墓石はありませんが、大きな慰霊碑や供養塔の下で供養されます。費用は一般墓地の3分の1程度で済み、管理も霊園が行うため手間がかかりません。ただし、一度納めると遺骨の取り出しはできません。
納骨堂:屋内施設、永代供養とセットも多い
建物内のロッカー式や仏壇式の設備に遺骨を納める方法です。天候に左右されずお参りでき、最新の施設では自動搬送システムや液晶モニターでの法要映像なども完備されています。都市部では駅近の立地も多く、アクセスの良さが魅力です。
メリット
宗教的安心感があり、法的手続きもしっかり整備されている。お参りの際の心の支えとなる物理的な場所があり、家族や親族が集まる場としても機能します。
注意点
改葬許可証の取得が必要で、手続きに1〜3ヶ月かかる場合があります。また、新しい墓地の永代使用料や年間管理費、墓石代など、まとまった費用が必要です。
こんな方におすすめ
- 継承者がいて、将来的にも管理を続けられる
- 伝統的な供養方法を重視したい
- 定期的にお参りしたい
- 家族や親族が集まる場所を確保したい
実例:Aさん(60代)の場合
「遠方の実家の墓を管理できないため、自宅近くの霊園に改葬しました。年2回のお参りが楽になり、家族も安心しています。」
② 永代供養・樹木葬
お寺や霊園が供養・管理を引き受けてくれる方法です。
種類別の特徴
永代供養墓:個別・合祀形式が選べる
最初の一定期間(通常13年、33年など)は個別に納骨され、その後は合祀されるタイプが一般的です。個別期間中は家族でお参りでき、その後は他の方々と一緒に供養されます。年1〜2回の合同法要が行われ、お寺や霊園が責任を持って供養を続けてくれます。
樹木葬:自然志向の方に人気、墓標は樹木
墓石の代わりに樹木を植え、その根元に遺骨を埋葬する自然回帰型の供養方法です。桜、ハナミズキ、モミジなど季節の花が咲く樹木が選べる場合が多く、四季の移ろいとともに故人を偲ぶことができます。都市部の霊園でも導入が進んでおり、ガーデニング感覚で管理されている施設も増えています。
メリット
継承者不要で管理が不要。一度支払えば追加費用はほとんどかからず、費用も明確です。お寺や霊園が法要を行ってくれるため、きちんと供養されている実感が得られます。
注意点
一度納めると遺骨の取り出しが難しい場合があります。また、個別の期間が終了すると合祀されるため、後から個別にお参りできなくなる点も考慮が必要です。
こんな方におすすめ
- 継承者がいない、または子どもに負担をかけたくない
- 管理の手間を省きたい
- 費用を抑えたい
- 自然志向で環境に配慮したい
実例:Bさん(70代)の場合
「子どもたちに負担をかけたくないので永代供養を選択。年1回の合同法要で十分供養されている実感があります。」
③ 散骨(海・山・空など)
自然へ還す供養方法として、自由葬の一種です。
種類別の特徴
海洋散骨:専門業者による代行が多い
山林散骨:自治体によっては制限あり
空中散骨:風船や飛行機から撒く形式も
メリット
宗教に縛られず、自然への回帰ができる。
注意点
法律・条例の確認必須。粉骨処理や業者選びが重要。
こんな方におすすめ
自然志向の方
宗教的な制約を受けたくない
故人の遺志が散骨
実例:Cさん(50代)の場合
「海が好きだった父の遺志で海洋散骨を選択。家族で船に乗り、思い出話をしながら見送ることができました。」
④ 手元供養(ミニ骨壺・アクセサリー)
自宅で遺骨の一部を保管するスタイルです。
メリット
いつでも故人を感じられる安心感。
注意点
法的にはグレーゾーン。分骨証明書があると安心です。
こんな方におすすめ
故人を身近に感じていたい
費用を最小限に抑えたい
他の供養方法と併用したい
⑤ 自宅保管(全骨)
全ての遺骨を自宅に安置する方法です。
メリット
費用がかからず、心の距離が近い。
注意点
法的な解釈があいまいで、トラブルの種になることも。
こんな方におすすめ
一時的な保管を考えている
他の選択肢を検討中
費用と期間の比較表
方法 | 費用相場(目安) | 手続きの難易度 | 完了までの期間 | 継承者の必要性 |
---|---|---|---|---|
改葬 | 30〜100万円 | 中 | 1〜3ヶ月 | 必要 |
永代供養 | 5〜30万円 | 低 | 数週間〜1ヶ月 | 不要 |
散骨 | 5〜15万円 | 中〜高 | 数日〜数週間 | 不要 |
手元供養 | 3千〜5万円 | 低 | 即日〜数日 | 不要 |
自宅保管 | 無料 | 低 | 即日 | 不要 |
最後に決めること:手続きと注意点
改葬に必要な書類
改葬許可申請書(新旧の墓地管理者の証明)
埋葬証明書
戸籍の附票(自治体によって必要)
各自治体の窓口で手続きできます。書類の不備があると時間がかかるため注意が必要です。
散骨の法的留意点
散骨は「葬送の一形態」とされ違法ではありませんが、以下に注意してください。
必ず粉骨処理が必要(焼骨をそのまま撒くのはNG)
散骨可否は自治体ごとに異なる
海洋散骨では環境省・国交省のガイドラインも要確認
よくある疑問
Q1. お骨を分けても大丈夫?
A. 分骨は法的に問題ありません。分骨証明書を発行してもらえば、一部を手元供養、残りを永代供養といった組み合わせも可能です。
Q2. 手続きにどのくらい時間がかかる?
A. 改葬の場合は1〜3ヶ月、永代供養は数週間程度が目安です。書類の準備期間も含めて余裕を持って計画しましょう。
Q3. 家族の反対があった場合は?
A. まずは家族会議を開き、それぞれの想いを聞くことから始めましょう。複数の選択肢を提示し、妥協点を見つけることが大切です。
Q4. 費用が払えない場合は?
A. 自治体によっては低所得者向けの支援制度があります。また、分割払いが可能な霊園も増えています。
Q5. 後から変更はできる?
A. 散骨や合祀墓は基本的に変更不可。永代供養や納骨堂は条件によって可能な場合があります。
心の整理と家族の合意形成
選択肢はたくさんあっても、「どれが正解か」は人それぞれ異なります。大切なのは、家族の気持ちを尊重しながら進めることです。
事前の話し合いがトラブル回避につながる
家族の同意を得てから手続きを始める
複数案を提案し、選択の余地を残す
故人の遺志があれば優先的に尊重する
「ありがとう」の気持ちを形にする
手紙を添える、小さなお花を手向けるなど、心の区切りをつける方法も意識すると、気持ちが軽くなります。
まとめ|お骨の行き先は、”想い”に合わせて選ぼう
「墓じまい後のお骨をどうするか?」という問いに、唯一の正解はありません。供養・費用・手続き・家族の想いのバランスをとりながら、最適な選択をすることが何より大切です。