大切なご家族を亡くされた皆さまへ、心よりお悔やみ申し上げます。
深い悲しみの中、「何から手をつければよいのか分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ご家族が亡くなられた直後から行うべき手続きを、優先度と期限を明確にして整理しました。すべてを一度にやろうとせず、できることから少しずつ取り組んでいただければと思います。
目次
手続き全体の流れ(期限別)
期限 | 主な手続き | 緊急度 | 予算目安 |
---|---|---|---|
今すぐ~3日 | 死亡診断書取得、葬儀社連絡 | 🔴 最優先 | 3~5万円 |
今週中(7日以内) | 死亡届提出、火葬許可証取得 | 🔴 最優先 | 5~10万円 |
2週間以内 | 年金受給停止届、健康保険返却 | 🟡 重要 | 0~5万円 |
3か月以内 | 相続放棄判断、準確定申告 | 🟡 重要 | 10~50万円 |
10か月以内 | 相続税申告 | 🟢 該当者のみ | 50~200万円 |
【緊急対応】当日~3日以内:まず何をすべきか
ご家族が亡くなられた直後は、深い悲しみの中でも対応しなければならない緊急の手続きがあります。この段階では、法的に必要な書類の取得と、葬儀の準備が最優先となります。気持ちの整理がつかない中でも、これらの手続きを進めることで、その後の流れがスムーズになります。
✅ チェックリスト
亡くなられた直後に必要な手続きを一覧で整理しました。精神的なご負担もあるかと思いますが、できることからひとつずつ進めていきましょう。
- ☐ 医師による死亡確認・死亡診断書の受け取り
- ☐ 家族・親戚・関係者への連絡
- ☐ 葬儀社への連絡と搬送手配
- ☐ 死亡診断書のコピーを5~10枚作成
医師による死亡確認・死亡診断書の受け取り
法的な手続きを進めるうえで、まず最初に必要となるのが「死亡診断書」です。亡くなった場所に応じた対応が必要です。
亡くなった場所別の対応
病院で亡くなった場合
- その場で医師が死亡を確認
- 速やかに死亡診断書が発行されます
自宅で亡くなった場合
- まずかかりつけ医に連絡し、往診を依頼
- 医師が来て死亡を確認できれば、死亡診断書が発行されます
- かかりつけ医が不在の場合は、119番に連絡
事故や突然死の場合
- 110番で警察に通報
- 警察による検視の後、死体検案書が発行されます
重要ポイント
死亡診断書は以降すべての手続きで必要になります。必ず5~10枚コピーを取っておいてください
発行費用:1通300~1,000円程度
家族・親戚・関係者への連絡
訃報を伝える相手には優先順位があります。混乱を防ぐためにも、伝える内容をあらかじめ整理しておきましょう。
連絡の優先順序
- 配偶者・子ども(直系家族)
- 故人の両親・きょうだい
- 配偶者の家族
- 親しい友人・知人
- 勤務先・関係団体
訃報で伝える内容
- 故人の名前と続柄
- 亡くなった日時
- 通夜・葬儀の予定(未定なら「後日連絡」でOK)
- 喪主の氏名と連絡先
葬儀社への連絡と搬送手配
葬儀の手配は時間との勝負になることもあります。スムーズに進めるために、事前に伝えるべき情報を確認しておきましょう。
葬儀社に伝える情報
- 故人の氏名・年齢
- 亡くなった日時・場所
- 搬送先(自宅・安置所)
- 宗教・宗派
- 葬儀の希望(家族葬・一般葬など)
費用目安
- 搬送費:1~3万円
- 安置費:1日5,000~15,000円
【法的手続き】7日以内の必須手続き
死亡確認が済んだ後は、法律で定められた期限内に行わなければならない重要な手続きがあります。特に死亡届の提出は火葬の手配に直結するため、できるだけ早めに準備することが大切です。この段階の手続きを怠ると、火葬ができなくなったり、後の手続きに大きな支障が出る可能性があります。
✅ チェックリスト
死亡診断書を受け取った後、役所への届け出や火葬に関する手続きを期限内に行う必要があります。忘れずに対応しましょう。
- ☐ 死亡届の提出と火葬許可証の取得
- ☐ 健康保険証・介護保険証・マイナンバーカードの返却
- ☐ 葬祭費・埋葬料の申請
死亡届の提出と火葬許可証の取得
死亡届の提出は法律で義務づけられており、火葬や埋葬にも必要な手続きです。早めに準備しておくことが重要です。
提出先
故人の死亡地・本籍地・届出人の住所地のいずれかの市区町村役場
必要書類
- 死亡届(死亡診断書と一体)
- 届出人の印鑑
- 届出人の本人確認書類
重要な注意点
- 期限は「死亡の事実を知った日から7日以内」
- 土日祝日も受付可能(時間外窓口利用)
- 火葬許可証は火葬当日に必要
健康保険証・介護保険証・マイナンバーカードの返却
故人の公的証明書類は、死亡後に返却や無効化の手続きが必要です。併せて給付申請も忘れずに行いましょう。
手続き場所
- 国民健康保険:市区町村役場
- 社会保険:勤務先経由
- 介護保険証:市区町村役場
葬祭費・埋葬料の申請も同時に
- 国民健康保険:葬祭費5万円程度
- 社会保険:埋葬料5万円
- 申請期限:2年以内
【行政手続き】10~14日以内の重要手続き
死亡届提出後も、限られた期間内に進めなければならない公的手続きがあります。特に年金の受給停止と世帯主の変更は期限が短く、放置していると不正受給と見なされる恐れや、住民票上の問題が生じる可能性があります。葬儀が終わって少し落ち着いた時期に、速やかに対応することが求められます。
✅ チェックリスト
葬儀後にひと段落したタイミングで、年金や住民票関連の手続きも進める必要があります。放置すると不利益につながることもあるため要注意です。
- ☐ 年金受給停止届の提出
- ☐ 世帯主変更届の提出
- ☐ 未支給年金の請求
年金受給停止届の提出
故人が年金を受給していた場合、停止届を提出しないと不正受給とみなされる恐れがあります。速やかな対応が必要です。
提出期限
- 厚生年金:死亡日から10日以内
- 国民年金:死亡日から14日以内
手続き場所:年金事務所・年金相談センター
必要書類
- 年金受給権者死亡届
- 年金証書
- 死亡診断書のコピー
未支給年金の請求
亡くなった月分までの年金を家族が受け取れます(請求期限:5年以内)
世帯主変更届
故人が世帯主だった場合、住民票や各種行政手続きの正確性を保つために新たな世帯主を届け出る必要があります。
対象:故人が世帯主で、残された世帯員が2人以上の場合
手続き場所:市区町村役場
期限:14日以内
【生活立て直し】2週間~1か月以内の手続き
葬儀や行政手続きが一段落したら、故人名義の各種契約の確認と整理に取りかかりましょう。公共サービスやサブスクリプションは自動継続されていることも多く、放置していると無駄な請求が発生するリスクがあります。また、故人が受給していた各種給付金の整理も重要です。この時期に丁寧に整理することで、後の生活再建がスムーズになります。
✅ チェックリスト
行政手続きが一段落したら、故人の契約していたサービスの整理を進めましょう。放置すると費用の発生やトラブルにつながることがあります。
- ☐ 公共料金の名義変更・解約
- ☐ 通信関連の解約手続き
- ☐ 定期契約・サブスクリプションの確認
- ☐ 雇用保険・高額療養費の手続き
各種契約の名義変更・解約
故人が契約していた公共料金やサブスクリプションサービスの継続・解約を確認し、必要に応じて対応しましょう。
公共料金(電気・ガス・水道)
- 継続なら名義変更
- 不要なら解約
- 口座振替の変更も忘れずに
通信関連(携帯電話・インターネット)
- 解約手続き
- 端末の返却確認
- 未払い料金の精算
定期契約・サブスクリプション
- 新聞・雑誌の配達停止
- 動画配信サービス
- 音楽ストリーミング
- クラウドストレージ
確認方法
クレジットカードや銀行口座の明細から契約中のサービスをリストアップ
雇用保険・高額療養費の手続き
故人が雇用保険の受給者だった場合や医療費が高額だった場合は、払い戻しや返還手続きが可能です。確認して申請しましょう。
雇用保険受給者の場合
- ハローワークに連絡
- 雇用保険受給資格者証を返還
高額療養費の還付
- 申請期限:2年以内
- 加入していた健康保険組合に申請
【財産・相続関連】1~3か月以内の手続き
財産に関わる手続きは、期限が決められているものも多く、うっかりすると大きな損失を被る可能性がある重要項目です。特に相続放棄の判断は3か月以内という厳格な期限があり、この期限を過ぎると自動的に相続を承認したものとみなされます。相続に関する意思決定や名義変更、各種請求などを計画的に進めていく必要があります。
✅ チェックリスト
相続関連の手続きには、期限が定められているものが多くあります。特に「相続放棄」は3か月以内という期限があるため早めの判断が必要です。
- ☐ 相続の意思決定(3か月以内)
- ☐ 遺言書の確認
- ☐ 銀行口座の手続き
- ☐ 不動産・車両の名義変更
- ☐ 生命保険金の請求
- ☐ 住宅ローンの団体信用生命保険確認
相続の意思決定(重要:3か月以内)
相続には「承認」するか「放棄」するかの選択肢があります。内容を正しく理解し、期限内に判断しましょう。
選択肢
- 単純承認:すべての財産を相続
- 限定承認:プラス財産の範囲内で借金も相続
- 相続放棄:すべての財産・借金を放棄
相続放棄の場合
- 家庭裁判所に申述
- 費用:収入印紙800円+郵送料
- 期限を過ぎると単純承認とみなされます
遺言書の確認
遺言書が残されている場合は、相続の内容や手続きに大きく関わります。発見時の扱いにも注意が必要です。
探す場所
- 自宅(金庫・仏壇・書斎)
- 貸金庫
- 公証役場(公正証書遺言の場合)
- 法務局(自筆証書遺言保管制度利用の場合)
見つかった場合
- 自筆証書遺言:家庭裁判所で検認手続き(勝手に開封禁止)
- 公正証書遺言:検認不要、そのまま執行可能
銀行口座の手続き
金融機関は故人の死亡を把握すると口座を凍結します。相続人による正式な手続きで解除・解約を進めましょう。
口座凍結について
金融機関が死亡を知ると口座を凍結します
解除に必要な書類
- 戸籍謄本(故人と相続人の関係証明)
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 本人確認書類
手続きの流れ
- 各金融機関に連絡
- 必要書類を確認
- 書類準備・提出
- 口座解約または名義変更
不動産・車両の名義変更
不動産や車両などの資産も相続の対象です。登記・登録変更の期限や手続き場所を確認し、早めに対応しましょう。
不動産(相続登記)
- 手続き場所:法務局
- 2024年4月から義務化(3年以内)
- 費用:登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)
自動車
- 手続き場所:運輸支局
- 期限:15日以内
- 費用:500~3,000円程度
生命保険金の請求
故人が加入していた生命保険があれば、受取人による請求が可能です。保険会社への連絡と書類準備が必要です。
必要書類
- 保険証券
- 死亡診断書
- 受取人の本人確認書類
- 受取人の印鑑証明書
請求期限:3年以内(できるだけ早めに)
住宅ローンの団体信用生命保険
団信に加入していた場合、保険金により住宅ローンの残債が免除されることがあります。融資元に確認してみましょう。
手続き
- 融資銀行に連絡
- 団信加入状況を確認
- 必要書類を提出
- 保険金でローン完済
【税務関係】4~10か月以内の手続き
✅ チェックリスト
故人に確定申告の義務があった場合や、相続税の対象となる場合には、税務署への申告が必要になります。期限にも注意しましょう。
- ☐ 準確定申告(4か月以内)
- ☐ 相続税の申告・納付(10か月以内)
準確定申告(4か月以内)
故人が自営業や複数収入源を持っていた場合など、一定の条件に該当すれば、準確定申告が必要です。
対象者
- 年収2,000万円超の給与所得者
- 事業所得者
- 2か所以上から給与を受けていた方
- 年金以外に20万円超の所得があった方
必要書類
- 源泉徴収票
- 支払調書
- 医療費控除の領収書など
提出先:故人の住所地の税務署
相続税の申告・納付(10か月以内)
遺産総額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告と納税が必要です。控除制度の活用も視野に入れておきましょう。
基礎控除額
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数
例:相続人が配偶者と子2人の場合
3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
遺産総額が基礎控除額を超える場合のみ申告が必要
主な控除制度
- 配偶者控除:1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額
- 小規模宅地等の特例:居住用宅地330㎡まで80%評価減
【その他】遺品整理・デジタル遺品の整理
✅ チェックリスト
遺品整理は精神的な負担も大きい作業です。無理のない範囲で、少しずつ進めていきましょう。
- ☐ 貴重品・重要書類の確保
- ☐ 思い出品の選別
- ☐ 不用品の処分
- ☐ デジタル遺品の整理
物理的な遺品整理
形見分けや片付けを行う際は、貴重品や重要書類を先に確保するのが基本です。業者を利用する選択肢もあります。
進め方
- 貴重品・重要書類の確保
- 思い出品の選別
- 不用品の処分
業者依頼の目安
- 一軒家:20~80万円
- マンション:10~40万円
- 作業時間:1~3日
デジタル遺品の整理
故人のスマホやクラウド、SNSアカウントなど、デジタル上の資産も忘れずに確認・整理する必要があります。
確認すべきデジタル資産
- スマートフォン・パソコン内のデータ
- クラウドストレージ(Google Drive、iCloudなど)
- SNSアカウント(Facebook、Twitter、Instagram)
- 電子マネー・仮想通貨
- 定期購読サービス
対処法
- パスワードが分からない場合は各サービスに問い合わせ
- SNSは追悼アカウント設定や削除申請が可能
- 故人のスマホ・PCから契約中のサービスを確認
専門家への相談目安
状況に応じて、司法書士や税理士など専門家の力を借りるとスムーズに進む場合があります。費用や対応範囲も事前に確認しておきましょう。
相談内容 | 専門家 | 費用目安 |
---|---|---|
相続全般 | 司法書士 | 10~30万円 |
相続税申告 | 税理士 | 遺産額の0.5~1% |
相続トラブル | 弁護士 | 相談料1時間1万円 |
不動産評価 | 不動産鑑定士 | 20~30万円 |
専門家選びのポイント
初回相談無料の事務所も多くあります。複数の専門家に相談して、信頼できる方を選びましょう。
全体の予算目安
必要最低限の費用
項目 | 費用目安 |
---|---|
死亡診断書・コピー代 | 3,000~10,000円 |
各種証明書発行費 | 5,000~20,000円 |
交通費・通信費 | 10,000~30,000円 |
合計 | 約2~6万円 |
専門家依頼を含む場合
項目 | 費用目安 |
---|---|
基本的な手続き | 2~6万円 |
司法書士・行政書士 | 10~30万円 |
税理士(相続税申告) | 50~200万円 |
遺品整理業者 | 10~80万円 |
合計 | 約70~320万円 |
よくある質問(Q&A)
Q1. 夜間や休日に亡くなった場合はどうすればいいですか?
A1. 市区町村の時間外窓口で死亡届を提出できます。多くの自治体で24時間対応しています。事前に電話で確認することをお勧めします。
Q2. 手続きを忘れてしまった場合はどうなりますか?
A2. 期限を過ぎても手続きは可能ですが、延滞税や過料が発生する場合があります。気づいた時点で速やかに手続きを行ってください。
Q3. 相続放棄をしたいのですが、どうすればいいですか?
A3. 家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出します。死亡を知った日から3か月以内という期限があるため、お早めに手続きを行ってください。
Q4. 故人の借金が多い場合はどうすればいいですか?
A4. 限定承認または相続放棄を検討してください。専門家(司法書士・弁護士)への相談を強くお勧めします。
Q5. 手続きが多すぎて何から始めればいいかわかりません
A5. まずは緊急度の高い手続き(死亡診断書の取得、死亡届の提出)から始めてください。一人で抱え込まず、家族や専門家と協力することが大切です。
まとめ
家族が亡くなった後の手続きは多岐にわたりますが、期限や優先度を把握して一つずつ進めていけば必ず完了できます。
大切なのは以下の3つです:
- 無理をしないこと – 体調や気持ちを最優先に
- 一人で抱え込まないこと – 家族や専門家と協力する
- 期限を把握すること – 緊急度の高いものから順番に
この記事を参考に、落ち着いて手続きを進めていただければと思います。